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花の葬送  作者: 朱音小夏


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episode8

今日は満月であった。丸く、紅く輝く月が街を照らしている。


「ノワール、大丈夫か?」


満月は魔物にとって制御を忘れさせる力があった。

それは吸血鬼にも言えることで、ノワールは少し興奮してしまっているのか、心なしか息が荒く、瞳がいつもより濃く光っていた。


「心配いらない...オレにはやらなきゃいけないんだ。」

「...ムリだけはするなよ?」


すると空から魔物が現れ、二人に襲いかかる。

魔物の手がノワールへと伸ばされたが、それを即座に剣で切り落とす。魔物は劈くような悲鳴を上げ血を撒き散らしながら霧のように消えていった。

その魔物の血を浴びたノワールはそのまま続いて現れた魔物達をも倒していく。いつもより数は多いがノワールはまるで踊っているかのように次々へと倒していった。

そんなノワールの剣を避けた魔物もいたが、そいつらはブランの銃の餌食へとなっていく。暫くすると魔物の姿は無くなった。しかし、月は紅いままだ。


「どういうことだ?いつもなら魔物を始末すれば月は元に戻るはず...」


ブランはそう言いながら月を見上げる。すると隣にいたノワールが胸を抑えながらうずくまった。


「ノワール?!どうした?!」


ブランがノワールへと目をやったその時、一つの影が二人の目の前に現れた。


「やはり吸血鬼も魔物と変わらないな。満月のお陰で私は強い力を得ることができ、貴様は興奮して戦えない...つまり私の勝ちだァ!!」


例の魔人がそう言いながら姿を現し、ノワールへと飛びかかろうとする。しかし、ノワールは動くことが出来ないでいた。

ブランはそんな彼を守りながら魔人へと銃を向け弾丸を放つ。

魔人は全ての弾丸を避けながら二人を割くように長い爪で襲いかかる。そして、二人がバラけたのを見て笑みを浮かべノワールへと手を伸ばした。ノワールは咄嗟に剣を構えるが魔人に弾き飛ばされてしまう。


「おしい。惜しいなノワールよ。」


魔人はそう言いながらノワールの腹部へと拳を入れる。


「グッ...!!」


ノワールは呻き声を上げると前へと倒れける。

そんな彼を受け止めたのは...ブランではなく魔人であった。


「ノワール!!」

「ついに!遂に手に入れたぞ!!」


ノワールは魔人の腕に抱かれ、そのまま気を失ってしまった。


「これでこの街に用はない!サラバだ人間よ!」

「待てっ!!」


ブランは魔人へと天使の加護を纏わせた弾丸を撃ち放つが、満月で力を増した魔人に弾丸を握り潰されてしまった。

そうして魔人はノワールを連れ闇夜へと消えていった。


「クソッ...ノワール!!」


ブランは魔人の消えた空へと向け叫ぶ。

魔人が消えたからか、街は普段の暗闇へと包まれていた。

まさか満月の夜に魔人が現れるとは思わなかった。

ノワールを奪われたブランは力無く地面へと膝をついた。


「ノワールは何処に連れられていってしまったんだ...?」


ブランは強い動揺に襲われ、更にノワールを攫われた事で酷い喪失感に苛まれた。

どれだけの時間が経ったのか。満月は沈み、朝日が昇ろうとしていた。


「どうしたの?お兄さん。」


声がした方へと顔を上げると見た事のない少年がブランの前に立っていた。


「吸血鬼のお兄さんが何処に連れられていったか教えてあげようか?」

「...!!知っているのか?!」

「知っているも何も。僕は魔界にも行くことが出来るんだ。」


少年の顔を見ると、その瞳は紅く光っていた。


「でも人間が魔界に入るのは危険だよ?どーする??」

「オレはどうなってもいい!ノワールを連れ戻せられればそれで...!!」

「そっか。なら次の満月の夜お兄さんの教会へ迎えに行くよ。そこから僕が魔界へ連れて行ってあげる。」


少年はあどけない笑を浮かべながらブランへと提案した。


「オレはそれで構わない。助かる。だが、君にメリットがあるとはおもえない。...一体何が目的なんだ??」


ブランが少年に問いかけると、少年は声を上げて笑った。


「目的?目的なんてただ一つだよ。...僕もあの魔人に恨みがあるんだ。だからアイツを殺して欲しい。でも僕には力がないからね。天使の加護...いや、"女神の福音"を持つお兄さんならいけるかなってね。」

「!!」


ブランに"女神の福音"があることはノワールも知らない事のはずだった。


「何で知っているのかって顔だね?特別に教えてあげる。実は僕、天使と魔人のハーフなんだ。」

「?!」


少年の口からとんでもない言葉が出てきて、ブランは驚きを隠せないでいた。


「だから僕は人間界にも天界にも魔界にもいけるんだよね。...異端児扱いはもちろんされるけどね。」


朝日で少年のプラチナブロンドの髪が光り輝いていた。

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