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花の葬送  作者: 朱音小夏


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5/15

episode5

今日もまた夜がくる。街は紅い月に照らされていて、魔物の呻き声が響き渡る。

ノワールは長い銀髪を踊らせ二本の剣で魔物をさばいていく。そんな彼の視界の隅に男女の子供が入ってきた。


「ガキ共!そこから動くな!!」


ノワールが大声で叫ぶとブランも子供達の存在に気がついた。

そうこうしていると子供達に魔物が近づこうとする。

ノワールは交戦していた魔物を始末し、子供達を助けに行こうとする。ブランの位置からはとてもじゃないが間に合わない。

子供達は泣きながら抱き合い、震えながら動けないでいる。

ノワールがあと一歩で魔物に手が届く所まで来た。

しかし、彼が剣を振りかざそうとしたその時、魔物は大きく鋭い爪で子供達を襲ってしまった。ノワールの視界いっぱいに血飛沫が広がる。

ノワールは怒り任せに魔物に切りかかる。魔物は劈くような悲鳴を上げ消し炭となった。

ブランもノワールの元へ駆けつけると、そこには小さな死体が二人分。よくよく見ると男の子の方はよくノワールに花を送っている少年であった。


「...ノワール...」

「なんで...こんな...」


月が普段の光を取り戻した中で血まみれのノワールは涙を流した。

------------------------

白いシーツに美しい銀色が広がる。

紅い瞳はどこか遠くを見つめている。


「...ブラン。もう何も考えたくない。激しくして、全てを忘れさせてくれ...」


ノワールの白い腕がブランへと伸び抱き寄せる。

ブランは何も言わずノワールにされるがままだった。

そして少し経つとブランがノワールに話しかける。


「ノワール。あれはお前のせいなんかじゃない。」

「...。」


ブランの言葉に瞳を揺らしながら下を向く。

最悪の光景を間近で見てしまったノワールは心を抉られトラウマを呼び起こされるかのような感覚に襲われた。


「ノワール。血が欲しければ飲むといい。好きなだけ。」


その言葉で枷が外れたかのようにノワールは勢いよく起き上がりブランの首筋にかぶりついた。稀血のブランの血は美味しいはずなのに涙で味がわからない。ノワールは震えながらブランへ抱きつき血を吸い続ける。そんな様子のノワールにブランは彼の髪をすきながら子守唄を歌いノワール精神を安定させようとした。


「ブラン...ゴメン...」

「謝ることは何も無いだろう。」


少し落ち着いた様子のノワールにブランは声をかける。


「じゃあ、これからはオレに付き合ってもらうからな。オレも人肌が恋しい気分だ。」


そう言うと二人はシーツの海へと沈んでいった。

------------------------

最悪な夜からの夜明け、ノワールの身体は悲鳴を上げていた。とくに腰が重い。

朝日の光が彼の黒髪を照らし始めていた。


「どうだノワール。朝の祈りは出来そうか?」

「誰のせいで動けないと思って...まぁ、いい。これから仕度していく。」

「外で待ってるぞ。」


どんな状況であれ、今日の祈りは外したくない。

昨夜の犠牲者であるあの二人の子供達のために。

どうか天国で幸せに暮らして欲しい。


「ブラン。待たせた。」

「うっし。行くか。」


教会のマリア像をステンドグラスから差し込む光が照らしている。二人は首から下げたロザリオを握りしめマリア像へと祈りを捧げる。静寂が広がる中であった。いきなり教会の扉が勢いよく開かれた。そして入ってきたのは街でブランへと話しかけてきた女性であった。


「嘘つき!子供達を守ると言ったのに!!」


どうやらこの女性は昨夜の犠牲者である子供達の母親であるらしい。

周囲の人々は女性をなだめるように抑え込んでいる。


「返して!あの子達を返してよォ...!!」


ブランは目を閉じ罵声を受け入れ、ノワールは下を向いたまま顔を上げれずにいた。


「お母様。昨夜の一件大変申し訳ありませんでした。私達の力不足でお子様を守る事が出来ませんでした。謝って許される事でないのは承知しております。ですが、夜は家から出ないようにと通達したはずです。保護者であるお母様にもご協力願いたかったです。」


そうブランが言うと女性は目にいっぱいの涙を溜めながら走り去って行った。周囲の人々はブランとノワールに礼をし帰っていった。


「あんな風に言って大丈夫なのか?」

「少しキツめに言わないと周囲の人間もわかってはくれないだろう。」

「それもそうだけど...」

「さ、朝飯の準備でも...」


教会から二人が出ようとした時、一人の男性が花束を抱え、教会へと入ってきた。すれ違いざまに男性は二人に頭を下げた。

その瞬間ノワールの背筋に一筋の衝撃が走った。

男性は花束をマリア像の前へと置くと手を組んでマリア像を見上げた。

そうして、男性は立ち止まった二人を他所にそそくさと帰っていった。


「今のは初めて見る顔だな。」

「..ツだ...」

「え?」


ボソッとノワールが言った内容を聞き返すと、ノワールは瞳を憎しみと憎悪で染め、ブランが驚くようなことを言う。


「アイツがオレの家族を殺した魔人だ...!」

「?!」


ブランはそれを聞き慌てて男性が去った方を見るが、その姿はもう無くなっていたのであった。


「おい、ノワール」

「アイツだ...間違いない...アイツがオレの家族を...!!」

「ノワール!!」


ノワールの憎しみが大きく、ブランの呼びかけにも応じない程だった。まだ昼間だと言うのに彼の瞳は紅く光っていた。歯を食いしばり禍々しいオーラを放つノワールをブランは自身の身体に抱き寄せどうにか落ち着かせようとする。


「この街に居ることはわかったんだ。お前は夜にならないと戦えない。今は悔しいが心をおちつかせてくれ。頼む。」


ブランがそう言うと、緊張のいとが切れたかのようにノワールはブランの腕の中に抱かれる。


「絶対...絶対にこの手であの男を殺すんだ...オレが家族の仇をとらないと...」

「あァ。でもな?そのためにも冷静さを欠いちゃいけねぇ。オレ達の前に姿を現したということは奴はまたこの街で何かをする気だ。」


ブランの言葉にノワールは力無く頷く。


「早く夜になればいいのに...」

------------------------

「見つけた...見つけたぞ...あの時の吸血鬼...あの紅い瞳を手に入れるために魔物をこの街に集めたのが幸をなしたぞ...キヒヒッ」


街の裏路地にひっそりと男、魔人はたたずむ。

ここ最近魔物が多かったのはこの魔人の企みであった。


「私のコレクションにあの紅い瞳が加われば完璧だ。」


どうやらこの魔人は紅い物をコレクションするのが趣味な様で、ノワールの純なる紅い瞳に固執している。


「紅い物ばかり集めてきたが...あの吸血鬼の美しい銀髪もとても素晴らしい...あの吸血鬼を私の人形にできたらどれ程よいか...」


魔人はノワールを思い浮かべ恍惚とした表情をする。


「紅く染まった炎の街並みもとても素晴らしかったが、その上にあの吸血鬼...とてつもなく欲しい。欲しい!欲しいぞ!!」


魔人は狂ったように同じことばを繰り返しながら、裏路地の暗闇へと消えていった。

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