episode11
「...ぶらん...??」
「!ノワール!目を覚ませたか!」
「ここは...オレはどうして...??」
目を覚ませたばかりのノワールは弱々しくブランを見つめる。そして彼へ疑問をぶつけた。
ブランはその疑問に応えることはせず、ただただノワールを抱きしめた。
その内にノワールの意識はハッキリとし、今までの記憶が鮮明に流れ込んできた。
「ブラン...ッ、オレ、オレは...!!」
ノワールは酷く取り乱し涙を流し始めた。
そんな彼の顔をブランは自分へと向けさせ安心させようと優しい声で話しかけた。
「ノワール。お前は何も悪くない。だから安心してなきやんでくれ。...お前に涙は似合わないよ。」
「でも...オレ、何度も何度もアイツに...!!それにブランも傷つけた!!」
「ノワール、落ち着くんだ...頼むから...」
そう言い放ち力強く抱きしめ彼へと口づけた。
ノワールは涙で潤んだ瞳を大きく見開きブランを見つめた。
「...やめてくれ...オレはもう汚れてしまったんだ...聖職者であるお前に触れられていい存在ではないんだ...」
「ノワール...お前に非は無いんだ。汚れたなんて言わないでくれ。お前は綺麗だ...それにお前がいなければオレは...」
ノワールを抱く腕に更に力が込められる。
ノワールはその腕の温かさに心が救われた様な気がした。
「ブラン...オレはお前の傍にいてもいいのか...?」
「良いも悪いも、オレにはお前の存在が必要なんだ。ノワール。...戻ってきてくれるな...??」
「...うん...うん...!!」
ノワールはあまりの嬉しさに涙を溢れさせながら力いっぱい頷いた。
「お兄さん!吸血鬼さん!もういいかな?!僕もうそろそろ限界が近いのだけども!!」
「...あ。悪い!今加勢する!」
「あの少年は...??」
「お前を助けるために力を貸してくれたんだ。天使と魔人のハーフらしいぞ。」
「?!」
ノワールは少年へと目をやると、あの魔人相手に一歩も引かない立ち回りをしているのに驚いた。
「ノワール。お前も一緒に戦ってくれるな?」
ブランはそう言いながらノワールの二本の愛剣を差し出した。彼は「もちろん!」と言うとブランから剣を受け取った。
「おっと。忘れてた。ノワール。」
「??」
ブランに呼ばれ彼を見上げるとノワールの身体は光に包み込まれた。
「ブラン...?コレは一体...?」
「お前にも天使の加護をかけた。完全では無いが、これで魔人に操られることは無いだろう。」
「天使の加護はそういう風にも使えるんだな...ありがとう、ブラン」
二人のやり取りが魔人の視界に入ったためか、魔人は怒りを露わにし、少年へ蹴りを入れ距離をとり、少年が怯んだ隙にブランとノワール目掛けて飛んできた。
「許さん!許さんぞ!!ノワール、貴様は私のモノだ!!」
魔人はノワールへと手を伸ばす。が、ノワールが瞬時に剣を抜き魔人の腕を切り落とす。
「グッグアァ!!」
「もうお前の好きな様にはならない!!」
「ノワール...!貴様...!!」
「ブラン!今だ!」
ブランは瞳を閉じ力を集中させる。すると辺りに白い光が広がった。
「なっ、なんだ一体...!!」
ブランが瞳を開け銃口を魔人へと向け、光を纏った弾丸を撃ち放つ。魔人は慌てて避けようとするが、ノワールの剣に動きを阻まれた。
「これで終わりだ...!!」
「クックソォ!!」
弾丸が白い光..."女神の福音"を放ちながら魔人の心臓を撃ちぬいた。そうして、魔人の身体は黒い霧となり消えていった。
「...終わった...のか?」
実感が湧かないのか、二人は呆然とし目を見合せあった。
「お疲れ様。二人とも。」
少年が笑顔を浮かべて近づいてきた。
「これであの魔人が現れることはもう無いよ。流石、女神の福音だ。」
「...わかるのか?」
「もちろん!...ありがとう。願いを叶えてくれて。」
「願い...?」
ノワールは少年のブランを交互に見やる。
「僕も君と同じだったってことだよ。」
「同じ?」
「アイツに...あの魔人に家族を殺されたということだよ。」
少年がそう言い放つと、ノワールは彼を抱きしめ、「辛かったな...」と話しかけた。すると、今まで不敵の様な態度だったのが嘘かのように少年は声を上げながら涙をながしはじめた。
「二人とも...今まで頑張ったな。」
ブランは抱き合う二人へ温かい眼差しを向けた。
「さぁ、人間界へ帰ろう。」
「...オレも向こうに行ってもいいのか...?」
「当たり前だ。お前の家はオレらの教会だ。」
「...ありがとう。ブラン。」
ブランの言葉にノワールはホッと胸を撫で下ろす。
「少年、君はどうするんだ?」
ノワールは少年に問いかけると彼は涙を拭いながら二人を見つめ「どうしようかな...」と声を漏らす。
「なら、ウチの教会でくらすか?」
ブランがそう言うと、ノワールは力よく同意した。
「そうだ。それがいいな!」
ブランとノワールがそう言うと少年は目を見開きながら「いいのかい...??」と弱々しく返事をした。二人は強く頷いて見せた。
「ありがとう...ありがとう!!」
少年は再び涙を流す。そんな少年を二人は笑みを浮かべ全員で抱き合った。
「そうだ。少年、お前の名前は」
ブランが思い出したかのように少年へと問いかけた。
「僕...?僕はミカエル。」
「ミカエルか。いい名前だな。」
そんなやり取りをする二人を見てノワールは胸が温かくなるのを感じた。
「オレらで家族になろう?それならもう寂しくも悲しくもない。」
そうノワールが言うとミカエルは驚きを浮かべ、ブランは笑みを向けた。
「そうだな。それがいい。よろしくな、二人とも。」
「よろ...しく...?」
ミカエルはイマイチ状況についていけていないが、彼にとっては良い話であることは飲み込めた。
「じゃあ家族三人で家へ帰ろうか。ノワール頼む。」
「あぁ。」
ノワールは返事をすると人間界へ通じる空間を生み出した。そして三人は空間へと姿を消したのであった。




