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銭ゲバ傭兵・ハイファン

 ◆


 君の肩関節が外され、続いて肘の関節も外された。


 これは君が故意に行っている肉体操作だ。


 関節のくびきから逃れた右腕に、君は強い捻りを加える。


 次瞬、突きが放たれた。


 腕の捻りの急激な戻りの為に回転し、颶風すら伴う凄まじい突きであった。


 ──秘剣・竜巻捻り殺し


 眼前に迫る剣の切っ先に、獣将ガルガレオンは反応できない。


 ガルガレオンは死を覚悟し、そして実際に頭を吹き飛ばされて死んだ。


 無惨なガルガレオンの死骸を前に、君は手を合わせた。これは君の故郷に伝わる追悼の所作である。


 そしておもむろに振り向き、勇者セイラムを見て言った。


「四天王、獣将ガルガレオンを斃した。これで先の冥将スカルナリオと含めて156億9千万ガルドになる。スカルナリオの時は周囲に敵の軍勢が居たから支払い作業が出来なかった。だが今は敵の気配はない。遠くに大きい気配を感じるが、これは魔王のものだろう。魔王は俺たちを待ち構えているようだから即座の戦闘開始とはなるまい。だからここで支払いを済ませておきたい。いいかな、勇者殿」


 そう、君は傭兵ギルドの剣士なのだ。傭兵ギルドとは世界規模で展開するならず者グループの事を言う。金でなんだってするヤクザな連中だ。


 一応最後の一線……例えば魔族に与するとかそういうことはないのだが、それでも魔王軍の侵攻によって窮地に瀕した国などに平気で大金を要求したりする。


 金を支払えないとみるや、平気で救援の依頼を破棄したり、とかく協調性にかける連中であった。


 平時ならともかく、現在は魔族との生存競争の真っ最中であり、そんな状況下で金金金金と足元を見まくる傭兵ギルドは反社会的とすら言えるだろう。


 ◆


 だが、こんなヤクザな傭兵ギルドがなぜ掣肘されないのか。こんな連中は大抵国が圧力をかけて手足をもぎ取ったりして扱いやすく加工するのが常だ。


 なぜ掣肘されないか……それは多面的な理由による。


 彼らは各国の暗部と深く関わり、政治的なバランスを保つ役割を担っている。このギルドには国の表舞台では決して触れられないような暗黒面の仕事が流れてくる。彼らはそれらを黙って、効率良くこなす。


 このため傭兵ギルドに対する直接的な介入は、政治的な均衡を崩す恐れがあるため、各国は極めて慎重な姿勢を取らざるを得ないのだ。


 君はその傭兵ギルドの中でも極一般的な性格を持つ剣士だ。金と結果を最優先に考え、道徳的な価値観や倫理観を二の次にする。ギルド構成員の多くがこのような性格をしている。


 だがその拝金主義とも取れるスタイルは、勇者セイラムは勿論、その仲間である聖女エイミアと女賢者ハリに強い不満を引き起こしていた。


「金、金、金、金!! 剣士として恥ずかしくないのですか!」


 聖女は憤慨した。彼女にとってこの戦いは正義と信仰の実践の場であり、金銭のためだけに戦うことは許せない行為だった。


 女賢者もまた首を横に振って言った。


「お金は大切だよ。でもね、それよりもっと大切なものがある。護らねばならないもの、人達がいる。君にだっているはずだろう? もっと大局を見ていくべきではないのかな」

二人称で進める。

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