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第六話 離別
私はデジレ・テレジア。悪役令嬢。
私は禁忌を犯した。
私は何もしていない。
何かしていたのは私じゃない。
どうして。
今私の婚約者ユリウス・オーディウスが私の頭を撫でている。
愛を囁いてくれている。
どうして?
彼は公私を分ける人で、人前でこんなことはしない。
私がこの世界の知識を知った時、
彼が私の公私を混同した行動に嫌悪していたから、
私はそれをやめて
彼の前では、人前では令嬢として振舞った。
それを彼はとても喜んでくれて、感謝もしてくれて、
更に優しくしてくれた。
でも
どうして今は
こんな人前で平気で私を抱きしめるの。
目の前にはかつて愛し合っていた主人公が居るのに。
主人公アンドレア・タリス・マッケンジーの顔が歪む。
アンが私を罵倒する。
そんなこと言われてもわからないよ。
ただ世界が正しくなっただけなんだから。
私たちは婚約者でこうなるのが当然だから。
私は歪みを直しただけ。
これが正しい世界なのに、
どうして私も泣いているの?