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第3話

翔太が立ち上がった勢いで椅子が後ろに大きな音を立てて倒れた。

店内にいた複数の客が、その音に驚いて振り向いた。その視線から逃げるように、美咲はカフェを出て行った。


「追いかけてこないんだ…」


カフェから100メートルほど離れた交差点で立ち止まる。

美咲は、足元に視線を落としたまま肩を小刻みに揺らし、しばらくその場から動けなかった。


それから3週間後。

翔太がシンガポールに出発する日、ふたりはカフェの前で待ち合わせた。


「じゃあ、行ってくる」

「うん。行ってらっしゃい。空港まで見送れなくてごめんね…」

「いや、いいよ。大丈夫。落ち着いたら、また連絡するから」

「うん。待ってる…」


翔太はこの日も何かを言おうとしては、何度もその言葉を飲み込んでいた。


「じゃあ、行くよ…」

「うん。気をつけて…」


大きなスーツケースを引いた後ろ姿が人ごみに消えて見えなくなるまで、美咲はずっと翔太の姿を目で追っていた。


翔太は一度も振り返らなかった。


そして、今日まで3年間。

翔太から一度も連絡は来ていない。

美咲が翔太の携帯に電話をかけても出ることはなく、留守電を入れても翔太からかけ直してくることはなかった。メッセージを送っても既読にもならない。


「ねぇ、翔太。私たち、ホントに終わっちゃったの…?」


翔太を取り戻したいと思う美咲の気持ちは、日に日に影が薄くなっていく。


美咲は、スマホで時刻を確認すると、残っていたコーヒーを一気に飲み干し、当時の想いをすべて振り払うようにカフェを後にした。

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