ねぇ、アルク几帳面すぎでしょ!
第五章 迷宮名「大海大戦」100階
「ああ、なんでこんなところに海があるんでしょうか?」
「作った奴、マジイカれてるね」
一周3kmほどの小さな島に放り出された。
「これって、詰んでない?」
「確かに、飛べなきゃ詰みかも•••」
アルクは、ホウキに乗ろうとしたがやはりダメそうだ。
「やっぱり」
「我らも、海とやらでは移動の手助けになれそうにないな」
「だよね•••」
「シオン、シオン」
「何?シノブ?」
「お母さんが、魔道具でフネ?を作ったらって言ってるけど」
「なんだ、フネって?」
「ああ、なるほどね、でも、船を作るには材料の木が欲しいけど、この島にはこの木1本しか生えてないし•••」
と言って、ヤシの木を叩いた。
「あ、それなら問題ないよ」
「どういこと、モックン?」
「僕、木の精霊だよ。好きなだけ出してあげるけど」
「マジですか•••ありがたや」
シオンは、モックンに手を合わせた。
「よし、船を作って行きますか!」
「だから、フネって何だよ•••」
「まずは、よいしょっと」
シオンは、家を出した。
「モックンは、材料の木を出して欲しいの、できれば板状にしてもらえると扱いやすいんだけど?」
「ううん、できるけど•••」
「じゃあ、よろしく!」
「アルクは、食料の魚をとってくれる?」
「僕、泳げないけど?」
「うん、大丈夫。この、網を使って」
「何でも入ってるな」
「雷魔法は使えるでしょ?」
「ああ、風魔法と光魔法の合成だね」
「うん、この網は、細い金属で編んであるから、魚のいそうな場所に仕掛けて雷魔法でいけばとれるでしょ」
「なるほど」
「とれたら、今日食べる分以外は、さばいて、干しておいて」
「分かった」
「じゃあ、モックンどんどん出して」
「ここでいいのか?」
「うん、私がどんどん小さくしていくからね」
「お、おお」
モックンが、板をたくさん出すと、シオンは、手頃な大きさに小さくして家の中に運んでいった。
「なんだ、それ•••」
「家の中でゆっくり、構築していくわよ」
そういって、まず、設計図を書き上げると、木材を使って小さな船の模型を構築していった。
二人乗りのモーターボートのような形でとてもカッコ良くできた。
「これが、フネ?どうやって使うんだ?」
「じゃあ、マクロを組んでいくわよ」
まず、防水加工にするので、ボート全体に水の反転魔法を付与する
→同時にボートの中にも水が入ってこないように風魔法でバリアを付与する
→ハンドルを握るとボートの後方より風魔法で推進力を得る
→ハンドルの握り具合で推進力の強弱を、左右に動かすことで向きを変更できる。さらに、ハンドルを引くとバックもできるようにする
→あと、自動スキャナーも搭載しとくか、進んでいくと、自動的にスキャンを発動して本へ記載される。
「さあ、こんなもんかな?」
「何してるのかさっぱりだ?」
「モックン、材料ありがとう」
「アルクは、魚とれたかな?」
「シオン、大漁だよ。あとの残りは干しておいたから、明日には保存できるかな」
「ありがとう」
「これが、フネ?」
「そうだよ、ちょっと練習してみる?」
「いいの?」
アルクは、ワクワクしているようだ。
模型を水に浮かべると、元の大きさへ戻した。
「ほえー、超カッコいいね」
「操作は、基本ホウキと一緒だからって、もう運転してるか•••」
「うおーーーー、最高」
「運転のしやすさはどうかな?」
「バッチリだよ、シオン天才すぎ!」
「ありがとう•••」
照れ臭くなってきた。
「さあ、明日に向けて食事と睡眠をとるわよ」
「はーい」
次の日から、ボートでそこらじゅうを走り回って、探索した。
どうも、宝箱や階段は、島に設置されてるようで、島巡りのような感じで進んでいった。
「ちょっと魔物も強くなってきたね」
「気をつけて行こう」
「うん」
第五章 迷宮名「大海大戦」20階
「今日は、ここのセーフポイントで休みましょ」
「今日も、命の石なかったね」
「まあ、気長に探しましょ」
「そうだね」
「シオン、星が綺麗だよ」
「本当だ、いったいこのダンジョンどうなっているのかな?」
「確かに、なんで空まであるんだろ?」
「まあ、不思議だけどいいか•••」
「うん、綺麗だからいいか•••」
二人は、夜の海岸でしばらく静かに綺麗な星空を眺めていた。
「やっと、海の1階だね」
「広すぎるよ•••」
「ボスはっと、何じゃあれ•••」
「巨大なフネ?」
「大海大戦ってそういうことか」
「あれは、戦艦っていうの、大砲やなんかで攻撃してくるわ」
「デカすぎじゃ?」
「ボートと戦艦じゃ相手にならない」
「まともに戦ったら、負け確定だから、ここは、姑息な手段でいくか」
「姑息とは•••」
「アルク、もう、戦艦に乗り込んじゃいましょ」
「なるほど、内側から攻めるのか」
シオンたちは、猛スピードで戦艦の後部に着けると、よじ登っていった。
「これ、自動で攻撃してくるんだね」
「艦内でも、敵がいるんだ」
「何を倒したらクリアなんだろう」
「戦艦を沈めるとかかな?」
「ああ、なかなかハードね」
「ハード?」
「そうなると、艦底に穴をあけるかな、脱出は、外のボートに設定してあるからね」
「了解」
アルクが、前衛で艦内を進んでいくと、一番奥の部屋に、火薬庫のような場所があった。
「ここを、爆発すれば、さすがに沈むでしょ」
「分かった」
シオンが、作った時限爆弾をセットしてテルミットで転移をしようとした時、アルクが、なにかに気がついて走りだした。
「ああ、アルク転移して!」
「うん、分かってる」
シオンは、先に転移してしまった。
「あれ、あれ、アルクは?」
「なんで、来ないの?もう時間ないけど•••」
シオンは、心配そうに胸の前で祈るように手を組んだ。
目の前では、戦艦の爆発が始まっている。アルクは、まだ出てこない。
「嘘でしょ!アルクーーー」
そのまま、戦艦は沈んでしまった。
「あ、アルク•••」
悲しすぎて、涙が涙が•••
その近くの島に転移魔法陣が現れた。
シオンは、とりあえず島に移動したが、海辺で倒れ込んでしまった。
どのくらい時間が経ったか分からない。
「グッスン、、アルク•••」
「まだ、魔力がある•••アルク生きてる?かも」
「でも、どこに?」
「ああ、死ぬかと思った」
「アルク!バカーーー」
「バッシ」
シオンは、おもいっきりアルクの頬を叩いた。
アルクは、吹っ飛んだ。
「ああ、叩きすぎた•••」
シオンが、駆け寄ってアルクに抱きついた。
アルクは、頬を腫らしながら、
「シオン、ごめんね」
アルクは、テルミットの転移の瞬間、赤色の宝箱を見つけてしまった。
瞬間的に身体が動いてしまい、すぐに宝を取り出し、逃げようとしたが、爆発が始まってしまい一緒に沈んでしまった。
「どうやって、助かったの?」
「シャドウが、自分の影に引き込んでくれたんだ」
「シャドウが•••よかった」
「もう、ダメかと思ったよ」
「シャドウ、ありがとうね」
「アルクは、主、命に換えても守る」
「シャドウの命も大事だよ」
「シオン、これ、二つ目の命の石だったんだ」
「もう、宝箱より自分を優先して!」
「分かった、もう、二度としないよ」
アルクは、少し目に涙を浮かべながら、シオンを強く抱き締めた。
二人は、しばらく動けずにそのまま時間だけが過ぎていった。
次回 【こんな迷宮、無理ゲーでしょ!】