千年迷宮って、それはヤバすぎでしょ!
ここの100階層は、迷路のようだ。
「とことん面倒な性格みたいね、いきなり時間のかかる迷路って•••」
「見てシオン、進むと本の地図に位置が、記されるみたいだ」
「本当だ!」
「ネズミが、いっぱいだからアルク倒してくれる?」
「了解」
「私は、宝箱と階段を探すわ」
宝箱といっても、ポーションや安物の武器程度だった。
「そうだ、この階全体をスキャンできれば!」
「スキャン?」
「アルク、感覚を研ぎ澄まして、この階にあるものをここを中心に円を少しずつ広げて察知できる?」
「やってみる」
アルクは、精神を統一させると、感覚を鋭く研ぎ澄まして、円を広げていった。
「殺気を探る感じで•••」
すると、持っていた本の地図にこの階に置いてあるものや階段までも記されていた。
「アルクすごい!」
「いやあ•••」
「今のスキルを「スキャン」と名付けましょう」
「スキャンか」
「私も、今のスキャンを「統合」してもいいかな?」
「統合?」
「私の持っているスキルで、相手のスキルを自分のものにできるの」
「なんだそれ、ズルすぎでしょ」
「うん、だから今まで使ったことがないんだ」
「そうだったんだ、シオンらしいね」
「もちろん、統合していいよ。どうすればいいの?」
「もう一回「スキャン」を使ってみて」
「それだけ?」
「うん」
「分かった」
アルクが、スキャンを発動すると、一気に魔力が、減少した。
「わあ、何?魔力がすごい勢いで減ったんだけど」
「統合の反動みたい。こんなに魔力使うなんて•••」
「大丈夫、ほっとけばすぐ回復するしね」
「アルク、ありがとう」
「ビックリするから、統合を使う前には教えてね」
「うん」
「これで覚えれたの?」
「たぶん•••次の階で試してみるね」
「了解」
「アルク、隅々まで調べるタイプ?」
「何か見落としてるといけないからね」
「几帳面ね•••」
「ハーベル、ちょっと見て」
「どうした?」
ミリアが、持っている本の1ページ目に地図が浮かび上がってきた。
「レオン、これは何?」
「どうも、シオンたちが踏破した階が、こちらの本にも写し出されるみたいね」
「なるほど、これでどこまで踏破したかは確認できるということか」
「待ってこれって•••」
ミリアが、息を飲んで口を押さえた。
「まさか•••」
「どうしたんだミリア」
レオンが、肩を揺らした。
「これって、サウザンドマジシャンの迷宮じゃないかしら•••」
「サウザンドマジシャン?」
ミリアの話によると、故郷のフィラルティア公国に伝わる伝説で、古代魔道士のバルダヤは、サウザンドマジシャン《千年魔道士》と呼ばれていて、1000階のダンジョンを作り出して、有能な魔法使いを閉じ込めて、死んでいく様を見て喜んでいたという。
「1000階?」
「もしかして、この本、100階じゃなくて、100階が、10階層あるってこと?」
「何てもん作るんだ!」
「そうなると、まずいかもね、あの二人なら踏破はできるかもしれないけど、水はともかく、食料が続かないかも•••」
「信じて待つしかないのか?」
「でも、1000階なんて、物理的に不可能じゃないか?」
「ええ、別の空間にダンジョンが10ヶ所あるみたいだから、問題ないそうよ」
「なんて魔道士だ•••」
「だから、転移やテルミットが使えないのか•••」
「そういうことね」
「シオン、これ100階にしては、本が分厚すぎないか?」
「よく見ると、本に章のようなものが10個ある」
「まさか、100階のダンジョンが10個あるんじゃ?」
「1000階分てこと?」
「そんな•••」
「急がないと、食料が持たなくなる」
「でも、どうしてもあの二つの「命の石」っていう言葉が気になるんだ」
「うん、命の石は探しましょう」
第一章 迷宮名「死への誘い」99階
「早速、スキャンしてみる」
「うん」
「ああ、頭が澄み渡る感じですごいね。アルク」
「あ、本に印が現れた!」
「これならそれほど時間はかからないかもね。交代でいきましょう」
「了解」
「階段の場所が、分かれば楽勝ね!」
「どうも、10階ごとにセーフポイントがあるみたいね」
「ああ、安全地帯ね」
「ここなら、キャンプできそうね」
「キャンプ?」
「どっこいしょ」
シオンは、家を取り出した。
「ええ、何これ?」
「家だよ」
「それは、見れば分かるけ何で持ってるの•••」
「お父さんにもらった」
「へえーーーー」
「ちょうどいい大きさでよかった」
「ハハハ•••」
「アルクは、そっちの部屋使ってね、お風呂もあるから使っていいよ」
「洗濯も、「ウォシャブル」と「ドライヤー」の魔法できれいにできるしね」
「う、うん、そうだね•••」
「問題はご飯か•••とりあえず、1ヶ月分くらいはあるけど二人分だから半月、切り詰めても1ヶ月弱くらいしかない」
「1000階を1ヶ月でいくためには、100階を3日間くらいでクリアしていかないと間に合わないね•••」
「厳しいーーー」
「とりあえず、しっかり寝て、明日から頑張ろう!」
「う、うん」
アルクは、いろいろビックリしすぎてあきれていた。
こんな調子で登っていくと、
「もう半分くらいかな?」
「昨日、「スキャン」をバージョンアップしてみたんだ」
「バージョンアップ?」
「スキャンしたときに、印が出るでしょ?」
「うん」
「あの印を、魔力量が多いものだけ赤くなるように本の方を設定しといた」
「あ、本当だ、赤い印がある」
「そっちを優先に探せば、命の石もあるかもと思って」
「なるほど」
早速、赤い印がある方へ行ってみると、今までとは明らかに違う綺麗な宝箱が飾ってあった。
「いかにも、トラップだね」
「うん、でも、赤色だから開けておきたいな•••」
「よし、防御魔法と強化魔法かけといたから、どうぞ!」
「どうぞって•••いきます」
アルクが、緊張して開けてみると、
「なんだ、あ、真っ赤なハート型の魔晶石が、入ってるよ」
「これが、命の石だよ」
解析スキルで確認してみた。
「これで、一気に行けるね」
「いや、もうひとつあるかも知れないからね!」
「はい、はい」
結局、3日かけて何とか1階までたどり着き、ショボいボスモンスターを倒したら、転移魔法陣が現れた。
シオンは、アルクに言って「転移魔法陣」も習得しておいた。
アルクは、すべての宝箱を開けていた。
第二章 迷宮名「暴食の森林」100階
「おお、次のダンジョンは、森みたいだね」
「これはラッキーかも」
「ラッキー?」
「食べ物があるかも、果物や木の実、キノコなんかも食材になるよ」
「お腹壊さない?」
「ここで、魔法生物学が役に立つかもよ」
「うん」
「とにかく、食べれそうなものは、取って置いてね」
「了解」
「スキャンしてみると、結構大物の魔物がいそうだ」
「戦闘は、頼める?」
「もちろん、任せておいて!」
熊のような魔物や、狼なども出てきた。この世界では、魔物を倒してしまうとアイテム化してしまう。つまり、肉などは、アイテムとして出ないと入手できない。
「肉とか出ないかな•••」
「まあ、どんどん進みましょ」
次の階へ行くと、薄暗くて、薄気味悪い、お化けでもでそうだ。
「嫌な感じね•••」
「あれって、死体の犬?」
「ゾンビだ!」
「ゾンビ?」
「あれは、ネクロマンサーだわ」
たくさんの死体を引き連れている。
よく見ていると、スキルで「分解」と「蘇生」を繰り返している。
「アルク、あいつ「蘇生」ってスキルを使ってるみたいだから、もらっておくね」
「うん、いいよ」
シオンは、早速「蘇生」を覚えた。
すると、「分解」と「蘇生」を覚えたので、ネクロマンシーが、使えるようになった。
「ああ、なんか頭の上に見えるようになったよ」
「何が見えるの?」
「魂が見えるみたい•••」
「た、魂?」
「丸いのとかトゲトゲとか」
「へえー」
「ほとんどがトゲトゲだな」
「そういえば、お父さんが、いい魔物なら召喚獣にできるって言ってた気がする」
「そもそも、召喚なんか使えるの?」
「使えない•••」
「でも、ここの魔物もどこからか召喚されているんじゃない?」
「確かに」
「スキャンで、魔物が多く発生してそうな場所を探してみよ」
「シオン、あったよ」
「どこ?あ、本当だ、そこへ行ってみよう」
早速、向かうと自動的に魔物が発生する魔法陣が設置されていた。
「あれを、覚えてみるね」
「よし、「召喚」ゲット!」
「ゲット?」
「これで、召喚獣を使えるの?」
「さあ、やってみよ」
「魂の丸いのがいたら教えて、生け捕りにするから」
「オッケー」
「オッケー?」
「待って、あのモモンガみたいなのが、丸いよ!」
「オッケー•••」
アルクは、気配を消して近づいてあっさり捕まえてしまった。
「どうすればいいのかな?」
「ねえ、君?」
「う、うん?」
「ねえ、聞こえるかな?」
「ああ、お前人間のクセに話せるのか?」
「うん、仲間にならない?」
「嫌だよ!特にいいこともないだろうし•••」
「そっか、あのお兄さんが狩っちゃうってさ•••」
「ええと、仲間にならせてくださいますか?」
「へへ、嘘だよ•••」
「嘘かよ!でも、面白そうだから仲間になってやってもいいぞ!」
「私は、シオン。あなたの名前は?」
「そんなのないよ。勝手に付ければ」
「じゃあ、モモンガみたいだから、シノブ君で!」
「全然、関係ないだろ•••」
「まあね!」
そうすると、シノブは、魔方陣の中へ沈んでいった。
そして、頭の中に呪文が流れ込んできた。
「これを、覚えろってことか•••」
シオンは、持っている本の踏破したページに魔方陣と呪文を書き写した。
「できたの?」
「うん、たぶんね。名前は、シノブにした」
「へえ、カッコいい名前だね」
「さすが、アルク、分かってる!」
シオンは、早速、「エリュシオン・シノブ!」呪文を唱えると、シノブを召喚した。
「おお、できた」
「おお、じゃねえよ。用もないのに呼び出すなよ!」
「ああ、僕にも聞こえる。シノブ、よろしくね。僕は、アルク」
「おお、よろしく。シノブだ」
シノブは、アルクを気に入ったようで、肩に跳び移った。
アルクは、頭を撫でながら話しかけていた。
「イチイチ魔法陣を写すのが面倒だな•••あ、呪文は無詠唱でいいのか。設定でどうにかしたい•••」
「シオン、その本自体を魔道具として、魔法陣に近づけると、自動的に転写して呪文も自動的に書き写すようにできない?それで、本を持って無詠唱で呼び出せば召喚できるように設定できる?」
「おお、それやってみる」
「まず、普通に召喚して、設定で魔方陣を転写、さらに、呪文を転写、無詠唱で召喚っと」
「どうかな、アルク」
アルクが、本を持って、無詠唱で呼び出してみた。
「おい、俺で遊ぶな!」
「できた!」
「これで、本があれば僕にも召喚できるね。すごい!」
「お前ら、聞いてるのか•••」
「ああ、シノブ、ごめんね」
アルクは、首もとを撫でると、グルグルと気持ち良さそうな音を立てた。
「さあ、遊んでないでどんどん登らないと!」
「そうだった•••」
「シノブ、何食べていたの?」
「まあ、木の実かな」
「食べられそうなの取ってきたりできるかな」
「しょうがねえな、アルクがそこまでいうなら、いいよ!」
「へへ」
シノブが、ササっと木を登って、しばらくすると木の実をいっぱい抱えてきた。その姿が、とても可愛かった。
「ありがとう、またお願いね!」
「まあ、いいってことよ」
少し照れているところも、また可愛いかった。
次回 【召喚獣って、カワイすぎでしょ!】