いきなりダンジョンって、楽しすぎでしょ!
これを、面白くないのが、魔法協会の会長たちであった。
「会長、最近、魔法学院で妙な学問が流行り出しているようですぞ」
「本当にけしからん、昔からの魔法の知識を教えるのが、学院の仕事だろ」
「その通りです」
下っ端が、手もみしながら言った。
「どうしたものですかね」
「ワシの知り合いにそういったことに精通している者がいる。聞いてみるか」
「私が、伺ってきましょう」
「よし、頼んだ」
「かしこまりました」
「暗殺を依頼したい」
「こんな子供を?」
「ああ、いいから急ぎで頼むぞ!礼ははずむ」
「了解しました」
「おーい、レオン」
「なんだ、リセ」
「面白い依頼が来たよ」
「なんだ、暗殺?学生?」
「いや、ターゲットの名前」
「ああ、面白いことになっているようだな、アルク」
レオンは、ニヤニヤしていた。
「ミリア、アルクとシオンの暗殺依頼が来てるぞ!」
「なんですって、依頼人殺す!」
「まあ、もう暗殺や窃盗から足を洗ったんだ」
「だって!」
「分かっている。あいつらも大変だな。フフフ」
「ハーベルたちにも知らせなきゃ」
「ああ、伝えておくよ」
「これも、いい機会だ。俺が行ってやるよ。その依頼」
トリガーが、話に入ってきた。
「それは、面白いかもな」
「レオン!」
「まあ、ここはあいつらの実力を見せてもらおう」
「もう!」
「ハーベル、そういうことになったから、よろしくな!」
「リーフィアが、怒ってるぞ!」
「まあ、うまく言っておいてくれ」
「いや、聞こえてるし!」
「まあ、ここはレオンに任せてみよう」
「そう•••」
リーフィアは、ちょっと不機嫌だった。
ある日、学院の帰りにアルクとシオンが歩いていると、
アルクが、いきなりシオンの前に出て守りの姿勢をとった。
「どうしたの?」
「殺気だ」
シオンは、「ゼファー・ヴェール!」一瞬で二人をおおうバリアを張った。
「シュッ、シュッ」
「銃?」
「かなり、遠距離からね」
「ああ、これは•••」
アルクが、一瞬いなくなったかと思うと、男を連れて帰ってきた。
「おお、やるなお前ら」
「何の冗談ですか、トリガーさん」
「いや、ソーサリーエレメントにお前らの暗殺依頼がきたんだよ」
「それで、何のつもりです?」
「本気で狙って、お前らがどう反応するかをみてたのさ」
「趣味が悪い」
「申し訳ない、でも、あの距離で察知されて攻撃を防がれるとは思わなかった」
「間違ったら、こっちが攻撃するところでしたよ」
「ああ、末恐ろしいな」
「まあ、そういうことだから、気を付けろよ。まあ、襲ってきた奴に同情するけどな」
そう言って、サッと姿を消してしまった。
「本当に、ごめんね、シオン」
「いえ、かばってくれてありがとう」
「一緒にいるときはいいけど、一人のときは注意してね」
「うん」
その夜、魔法協会、会長のもとに、四人の影があった。
「お前、殺す!」
「なんのことでしょう!」
「手を出してはいけないことに手を出してしまったようね」
「だから、なんでしょう?」
「心当たりあるだろ!」
「ああ、あれかな?これかな?」
「お前、本当にクズだな!」
ミリアが、白昼夢魔法陣を発動させた。
「こいつは、こっちで片付けておくから」
「じゃあ、任せた!」
四人は、一瞬で消え去った。
それからまもなく、会長が、悪巧みがもとで姿を消したことは、瞬く間に広がって、それ以降、シオンたちに手出しするものはいなくなった。
学年末の試験の時期がやってきた。
「シオン、アルク、1年間ありがとう」
「いいえ、マクリア先生、私も勉強になりました」
「僕も、さらに鍛練できました」
「一応、あなたたちもまだ生徒扱いだから、最終試験は受けてね」
「分かりました」
「もちろんです」
今年の3年生は、シオンとアルクのお陰で、通常の生徒よりもかなり優秀な者が多くいた。
「今年は、例年と違い優秀な者が多いため、ダンジョンの難易度を高めに設定してあります。くれぐれも気を引き締めて!」
「はい!」
五人パーティーを基本として、強敵には、レイドも許可されていた。
シオンとアルクは、特別枠で二人パーティーで挑むことになった。
始めのうちは、小物ばかりで大したことなかったため、それぞれ順調に進んでいった。
「シオン、戦闘もなかなかだね」
「アルクの魔法もキレキレだね」
声を掛け合いながら、順調に進んでいるはずだった•••
「うわーー」
奥のほうでたくさんの悲鳴が聞こえてくる。
「みんな、大丈夫?ヒーリング・ゼファー!」
広範囲に回復魔法をかけながら声をかけた。
「シオン先生、ありがとうございます」
「あれは、三又のオロチ?」
「何で、あんな魔物がこんなところに?」
アルクが、みんなに声をかけた。
「ここは、全員で力を合わせなければ勝てないぞ!訓練を思い出すんだ!」
「はい、教官!」
アルクの指示にしたがって、前衛と後衛に分かれ、戦闘体制に入った。
シオンは、後衛に指示を飛ばす。
「後衛、魔法攻撃を打てーー」
「はい!フロストバイト!」
後衛は、一斉にオロチの苦手とする、氷魔法で攻撃を仕掛けた。
動きが鈍くなったその隙に、
「今だ、前衛かかれ!」
「はい!」
アルクの号令にあわせて、一斉に切りかかった。
後衛は、防御魔法と強化魔法で前衛を補助していた。
「よし、効いてるぞ!」
「最後は、みんなで囲んで土魔法で封印だ!」
「分かりました!アースバウンド・シール!」
一斉に詠唱を始め、封印魔法を完成させた。
オロチは、ぐったりと倒れて消えていった。
そこには、大きな宝箱が現れた。
「やったー」
「俺たちが、やったんだ!」
「私たち強くありませんこと?」
「みんな、よくやった」
全員で喜びあっていた。
「俺が、あの宝箱開けてやるよ!」
一人の男子生徒が、そう言って走り出した。
その時、宝箱を中心に大きな魔方陣が展開された。
「ああ、待ってトラップよ!」
一瞬、時間が停止したかのように、ゆっくり動いているようだった。
アルクが、その男子生徒を魔方陣の外まで弾き飛ばしたのと同時に、シオンも飛びかかっていた。
「ああーーー」
「先生たちが、消えた!」
生徒たちは、一瞬で阿鼻叫喚の地獄へ落とされたようだった。
弾き飛ばされた生徒は、助かったが、ガタガタ震えて、泣きじゃくっていた。
「あ、あれ?」
「ここは、どこだ?」
シオンとアルクは、小さな四角い部屋にいた。
「シオン、怪我はない?」
「うん、大丈夫だよ」
「ここは、どこかな?」
「さあ?」
二人は、部屋を調べてみた。
「この本以外何もないわね」
「僕には、全く読めないよ?」
その本は、表に見たこともない魔方陣が描かれていて、古代文字で書かれているようだった。
「シオン、読める?」
「古代文字は、少し勉強したから、何となくなら•••」
「えっと、このダンジョンを攻略せし者、二つの「命の石」を渡さん?」
「命の石?ってなんだろう?」
「さあ、とにかく古代の魔道士のトラップでダンジョンに閉じ込められたようね」
シオンは、とりあえずテルミットを掲げた。
「やっぱりダメか•••」
その頃、生き残った生徒たちは、ダンジョンを抜け、状況を説明していた。
「なんですって?」
マクリアは、すぐにテルミットでハーベルへ連絡を入れた。
「あ、ハーベル、リーフィアさん。私がいながら申し訳ありません」
「大丈夫」
「俺から、レオンへは伝えた。すぐ来るだろう」
「よ、ハーベル」
「レオン、ミリア、久しぶり」
「どうだ?」
「ダメだ、転移も瞬間移動も使えない」
「ああ、空間魔法陣も使えないようだ」
「参ったな•••」
「まだ、シオンには転移の魔法も教えてないしな、あちらから来ることもできないだろう」
「テルミットもダメみたいね」
「連絡もとれないのか?」
「とりあえず、そのオロチのところへいくか」
「そうだな」
四人は、一瞬で消えた。
「ここか、あの宝箱みたいだな」
「もしかしたら、また転移させられるかも?」
ハーベルは、躊躇なく近づいた。
「ダメみたいだ、一回きりのトラップか•••」
「リーフィア、シオンやアルクの心は読めないのか?」
「やっているけど、ダメみたい」
宝箱を開けてみると、一冊の本が入っていた。
「なんだ?読めないぞ?」
「ああ、古代文字ね」
ミリアが、本を受け取った。
「この本と対となるものを求める者、二つの「命の石」を授からん?」
「どういう意味?」
レオンとハーベルは、何かを悟ったのか、お互いの顔をじっと見ていた。
「アルク、水はいいとして、何か食べ物持ってる?」
「ええと、今日のお弁当と非常食を三日分くらいかな?」
「私も、お弁当と、魔道具にしまってある食事が一ヶ月分くらいかな?」
「なんと、用意周到•••」
「当面の食事はいいとしても、何か食べられるものを探さないとね」
「うん」
「まあ、じたばたしても状況は変わらないから、お弁当でも食べましょ」
「そうだね」
二人は、意外と焦っていなかった。今のところは•••
お弁当を食べながら、本を読んでみると、地図が載っていた。
「どうも、地図っぽいよ」
「えっと、100階分の地図があるってことは、地下100階ってこと?」
「そうかもね•••」
「どうも、自力で地上まで到達するしかなさそうね」
「地図には、何も書いてないね」
「そうだね、自分で埋めていくのかも」
「なるほど」
シオンは、少しワクワクしているようにも見える。
「よし、早速登りの階段を見つけなきゃ」
「シオン、ここに怪しげなスイッチらしきものがあるよ」
「うん、トラップだね」
「僕もそう思う」
「このダンジョン作った古代人意地悪そうだから、そんな簡単なところにスイッチおかないと思うな」
「同感」
シオンが、本をよく見ていると、
「なんかここのあたりにシミがあるんだけど?」
「怪しいね」
「ええと、実際の部屋の位置だとこのあたりかな」
「あ、あったよあの天井に小さな穴がある」
「あれが、本当のスイッチだね」
そう言って、穴に杖を差し込んだ。
すると天井が開いて、階段が現れた。
「やっぱりね」
「ナイス、シオン」
「バシッ」
二人は、手を叩いた。
「さあ、ここからが本番だね」
「よし、気合いをいれるか!」
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