魔力ゼロって、それはないでしょ!
注意:ネタバレを含みます。
ソーサリーエレメント1,2
【MACOK】ソーサリーエレメントスピンオフ
を先にお読みください。
宜しくお願い致します。
魔法、それは、大きく炎、水、風、土、光、闇に分類される。
この世界では、魔素と魔力によって魔法が発動されると信じられている。だが実際は、少々話が違っているのだが···
この世界では、魔法を発動させるためには、主に3種類の方法がある。
詠唱、魔道具、そして魔法陣。
私の名前は、シオン。
うちの両親は、少しおかしい。
自分達は、世界を救ったとか、神様だとか言っている。
もちろん、そんなことは信じていないし、マジでヤバい親だと思っている。
それより何より、私には、魔力がない。
「魔力=ゼロ」なんだよ!
そのおかげで、かなり苦労してきた。
ちょっとした魔法も使えないから、すべて手作業で自分の力でやらないといけない。
お父さんは、体を鍛えろと言うし、お母さんは、なにやらワケの分からない勉強を教えてくる。
まあ、私のためなんだろうけど、マジで鬱陶しい。
もうすぐ、10歳になるから、魔法学院初等部へ入学しなくちゃいけない。
でも、魔力もないし、魔法も使えないから、お先真っ暗。
そういえば、私の左手の甲には、うっすら模様のようなものがある。
「この模様、綺麗だけど何なんだろう?」
お父さんの名前は、ハーベル。
お爺ちゃんとお婆ちゃんは、今でも医術師をしていて、みんなから尊敬されている。
私も、お爺ちゃんとお婆ちゃんは、大好きだよ。
よく家に遊びに行っては、私の好きなものをご馳走してくれる。
おうちには、変わった猫がいる。
ブランとノアールという名前で、ふっくらしていて気持ちいい猫と、スラッとしてカッコいい猫なんだ。
おしゃべりができるし、魔法も使える。
触り心地もメチャメチャ気持ちいいんだよ。
お母さんの名前は、リーフィア。
いつも、自分は神様だっていうけど•••
自分の、お爺ちゃんとお婆ちゃんのことは、あまり話したがらないからよく知らない。
「科学」•「物理」•「生物」•「数学」とか、よく分からない勉強を小さい頃からさせられていた。
「魔法」も使えないのに、「魔法」や「魔道具」の作り方、「スキル」についても勉強した。
いったいどういうつもりなのか•••まったくちんぷんかんぷんだよ。
でも、そのおかげで日常生活は困らなくなった気もする•••
私は、「ファイア」が使えない•••
だから、火を使うときは「ライター」を使う。
「ライター」は、魔道具で小さくて丈夫な瓶のなかに、「オイル」という火のつきやすい液体を入れて、瓶の口元に金属の留め金同士を「摩擦」させると火をつけることができる。
すべて、お母さんの受け売りだけど火には全然困らない。
水だって、「ウォーター」が使えなくても「井戸」を掘って「滑車」を使って、地下から水を組み上げれば使うことができる。
そんな風に、普段の生活に困らないようにいろいろ教えてくれた。
そういえば、お父さんもお母さんもほとんど魔法を使っているのを見たことがない。
ちなみに、魔晶石の魔力や魔道具による魔力強化などでも私の魔力は増えない。
「ゼロに何をかけてもゼロ」
なんだよ!
そのくせ、全属性もちでスキルも全属性「解析」「合成」「分解」「精製」「構築」「破壊」そして、無属性のスキル「設定」さらにレアスキルの「統合」までもっているらしいけど、宝の持ち腐れだよ。
お父さんには、なにやら「イメージ」が大事だとか言って、毎日欠かさず「イメージトレーニング」とやらをやらされている。
何の役に立つのか分からないけど、それだけはなぜか頑張っていた。
具体的には、頭の中で物語を作っていく、特に属性にまつわるものをイメージする。
例えば、土属性なら私の好きなお城をイメージして、頭のなかでお城の中を探索したり新しく増築したりして遊んでいた。
実は、これは大好きだ。
「シオン、早く用意しなさい!」
「分かってるよ•••」
今日から、魔法学院初等部だ。
楽しみよりも、憂鬱な気分だ。
「三人で行くんだから、早く準備してね!」
「だから、うるさいな!」
「シオン、お母さんにそんなこと言っちゃダメだろ?」
お父さんが、優しく頭を撫でた。
お父さんは、なんでもできるしメチャメチャ強いらしいけど、私にはメチャメチャ優しい。
「はい、お父さん」
「いい子だ」
「さあ、お母さんの準備もできたみたいだし行くか」
私たちは、三人で手をつないで学院まで歩いて行った。
学院の門に着くと、
「新入生の方は、こちらへお願いします」
と係の先生が大声で叫んでいた。
「さあ、シオン行っておいで」
「はい•••」
私の順番になって、クラス分けの魔力測定用の水晶に手を当てた。
「おお、素晴らしい全属性もち?でも、魔力が全くない?」
「ああ•••」
「これ壊れてるのかな?」
「いえ、壊れてませんよ。私、魔力ゼロなので•••」
「はあ•••」
先生は、申し訳なさそうにしていた。
「あの子、魔力ないんだって•••」
「かわいそうにね•••」
「まあ、そうなるよね•••」
両親の方を見ると、全く気にもしていない様子だった。
「やっぱり、ちょっとおかしい•••」
すると、隣の測定器が突如すごい音を立てて壊れた。
「ドカーン!」
「おお、ビックリした•••何の音?」
隣には、ポッチャリした男の子がポツンと立っていた。
先生は、ビックリして腰を抜かしている。
「ああ、あれがレオンの•••」
「あれは、苦労しそうね」
お母さんが呟いた。
「あれは、魔力過剰症という病気だ。魔力が多すぎて体の容量を超えてしまって常に魔力酔いの状態になってしまうんんだ。あれでは魔法もうまく使えないだろ」
お父さんが、説明してくれた。
世の中、うまく行かないもんだ。
私みたいに魔力がなくて困っている人もいれば、魔力が多すぎて困ってる人もいるんだ。
急にお父さんが、そのポッチャリさんに近付いていくと肩に手を添えて、
「君が、レオンの息子のアルク君だね」
「はい•••」
「私は、レオンの友人のハーベルと言うものだ。少しいいかい•••」
そう言って、両肩に手を添えて瞑想してた。
すると、男の子がすごく楽になったような顔で、
「おじさん、ありがとう」
と喜んでいた。
「うちの娘の、シオンだ。よろしく頼むよ」
「よろしく」
私が、恥ずかしがっていうと
「よろしくお願いします」
アルクは、丁寧に頭を下げた。
「さあ、クラス分けが決まりました。皆さんこちらへお集まり下さい」
係の先生は、忙しそうだ。
予想通り、一番下のクラスのCクラスだった。
さっきのアルク君も同じクラスのようだった。
いわゆる落ちこぼれクラスだ。
こうして、魔法学院初等部の生活が始まった。
授業はというと、魔法に関することはもちろん一般教養を含めて本当につまらない•••
お母さんの勉強を昔から叩き込まれていたので、
簡単すぎて•••
みんなこんなことも知らないの?
と思ってしまうほどだった。
ただ一人、アルク君だけは私と同じような反応をしていた。
「アルク君」
「はい、アルクでいいですよ」
「じゃあ、アルク、ちょっと聞きたいんだけど、勉強簡単すぎない?」
「そうですね」
うちの家庭環境について話した。
「僕のうちも似たようなものでした」
アルクの父親の名前は、レオン。
「ソーサリーエレメント」という組織のリーダーだった。
その組織は、謎の多い組織でアルクもよく分かっていなかった。
アルクの母親の名前は、ミリア。
やはり、「ソーサリーエレメント」の幹部でどんな仕事をしているかはよく分からなかった。
昔から、この病気のせいで魔法のコントロールがうまくできなかった。
でも、レオンが魔力を吸収する方法を知っていて、余分な魔力を吸って減らしてくれると、魔法も使うことができる。
アルクは、闇属性のためミリアに闇魔法を中心に昔から訓練されていた。
もちろん、一般教養以外にもあらゆる分野の勉強をさせられた。
レオンからは、体術や武器の使い方を叩き込まれていた。
ただ、余分な魔力を吸っても次の日には元に戻ってしまうのだった。
この身体になると思うように動けないし、魔法もうまく使えなくなる。
アルクは、シオンにその話をするとすぐに仲良くなった。
「似た者同士だね」
「そうだね」
「お父さんから聞いた話のなかに、アスラっていう鬼神の話があるんだけど•••」
「ああ、僕も聞いたことがある。確か昔の親友との合言葉にしてたって•••」
「私たちの合言葉にしましょうか?」
「うん、いいね。アスラ!」
「アスラ!」
二人は、嬉しそうに言い合った。
次回 【飛び級って、それは無理でしょ!】