鏡の私と主人公
「ひぇ……。」
そこには金髪青眼、淡い桃色の唇と頬。
パッチリとした二重にスッと通った鼻筋。
誰もが認める、輝くような美貌を持った少女がいた。
しかし、私はホーリーに会った時よりも驚かなかった。
何故なら私は先程からのシチュエーションにより気づいてしまったのだ。
「……。」
ここは、私のどハマりしていた乙女ゲーの世界。
私はその主人公になってしまったということ。
「っ…。」
鏡の少女が薄笑いを浮かべた。
『これは……勝ち組なのではっ!?』
主人公、ということは対象キャラを攻略できるということだ。
この頃悪役令嬢に転生とか多いし、これは結構ラッキーなのでは!?
私が悪役令嬢なら秒速で殺されてるだろうし……
別にホーリーは興味ないのだが、これは推しと報われる可能性があるってこと、だよね!?
そっと鏡の下に置かれていた洗面器の水をすくい、顔を洗った。
冷水にさらされた顔が夢じゃないと叫んでいる。
そう。夢じゃない。私はここから乙ゲーの主人公、【リリィ・モスティーラ】として生きていかなければいけないんだ。
そう思うと一層顔が引き締まったような気がする。私はもう一度洗面器の水を顔にかけた。
すると。
「お嬢様。」
「……っ!?ゲッホゴッホッ」
横からの唐突な声に、私は咳き込んだ。
「だっ誰!?」