ラグジュアリーブランドのジュエリー商品
嘘……。
どうしてこれが……こんな所に…!?
私は目の前にある金色に輝くピンバッジを凝視した。
14Kでできた丸い台座に浮き彫られた飾り文字のH。薔薇の花が舞い散り、蔦が絡んだそのデザインは見れば見るほど細かな装飾が分かり、飽きがこない。弁護士バッジ程の大きさだが、文字周りの装飾も手が凝っており美しく、控えめながらも存在感のあるサファイアが埋め込められ、薔薇の花びらが青く見えるように工夫されて反射した光が彼の動きに合わせてチラチラと踊る。
私は…これに見覚えがあった。
愛する乙ゲーの大手ジュエリーブランドコラボ商品。
キャラクターが使用していたり、身に付けている物が細かく再現され、どれも最高峰の素材と出来映え。
加えて、どれも30個ずつ限定で発売された超レア物だ。
勿論の事、多くの人が欲しがったが、ラグジュアリーブランド品であることで値段は想像を遥かに上回った為に諦める人も多かった。
私も一時期欲しかったけど、会社勤めとオタ活を両立させるのに必死なくらいだったからこの値段の出費には手が出せなかったな…
そんな回想に浸っている時間はない。
そうだった。何故これがこんな所にあるのか、それが問題なんだ。
いや、値段的にはこの公爵家なら全然買えるだろうが…。
私は天井の乱れなくカットされ、眩い光を辺りに撒き散らす、大きな水晶がいくつもついたシャンデリアを見ながら目を細める。
しかし、コラボ商品ならではだが、デザイン費などの影響で通常作る場合の値段よりも上がっていたはずだ。
特にファンでないなら他の普通のデザインの物を買った方が良いのではなかろうか。
なんだかおかしい。
ズキッ––––
なんだろう、何かを忘れているような気がする。
私は軽くこめかみを抑えた。