許嫁に公爵の娘!?
《前回までのあらすじ》
オタク、アラサーの私は何故か目が覚めたらさも高級そうなベッドの上に横たわっていた!?
ここはどこかも解らないが、古の記憶(ガチャ爆死)が蘇り、ショックが再来。
そこへブロンズの髪をした少年が私の元にやってくる。
その少年は私の乙ゲーで使用しているHNを知っているだけでなく、私の事を許嫁と呼んできて……!?
一体どーなっちゃうのー☆
「おやおや……」
ブロンズの髪をなびかせながら彼がふふふと笑った。
「公爵の娘なんだし、淑女なんだからそんなに大きな声で騒いだらはしたないよ?」
そうですよ!どうせ私ははしたないです!なんてったって庶民なんですから!
庶民……ん?
この青年……今、爆弾発言致しませんでした?
「ん?公爵の娘……?」
「ん?リリィ。まだ寝ぼけてるのかい?それともおかしな夢を見たのかい?」
いやいや!?私はずっと庶民の出ですけど!?
大学出てからというもの、会社勤めのOLとしてここ5年はずっとパソコンカタカタやってますけど!?
パーティーとか大学の時から住んでるボロアパートの築30周年記念たこ焼きパーティーぐらいしかやったことないですけど!?
夢!?今までの苦労も中学の時の暗黒の歴史も全て夢だったんですか!?
おかしいだろ!!
混乱している私を横目に許嫁と名乗った少年は言った。
「さぁ、早く起きよう。顔でも洗えばじきに目は覚めてくるさ。」
そう言って白い手袋に包まれた彼の手が私の手をそっと引いてくる。
こんな触れ方された事ないわぁ……
さっすが貴族様……。まるでお姫様みたく扱ってきやがるぜ……。
少年はそっと私の手から顔へと視線を移して微笑んだ。
「ブランチが待っているよ。」
「ブ、ブランチ……」
ブランチだなんて……。
そんな言い方するのは、大学受験の時に一泊した高級ホテルの朝食の呼び名じゃないか。
その時は値段がちょっと……いや、オタク学生のすっからかん財布には断食の如き辛さだったから、食べてないんだけども。
「そうさ。今日は僕が猟で獲ってきた鹿肉をシェフにローストしてもらったんだ。」
鹿肉……ロースト……朝から……?
私の頭にローストビーフが巡って消えていった。
ビーフじゃないんだよな……。
溢れそうな涎を慌てて堪え、私は真顔で青年に告げた。
「よし。食べに行こうか。」