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前進全霊

進まないと、進まないと。


止まれない、止まってはいけない。常に薪をくべないと、火を絶やさないようにしないといけない。

止まれば、止まってしまえば、その瞬間に自分という存在は終わってしまうだろう。

指先から凍り付いていき、最終的には全身が哀れな氷像になる。今でさえ、火種を抱えているというのに、既にガタガタと震えて今にも死んでしまうのではないかという想像が頭をかすめる。


一寸先は闇だ。視界の先には何も見えない、ただひたすらの暗闇、導も何もない道ともいえない道を進み続ける。

嵐のように風が吹き荒れてくる。暴力的なまでに突き抜ける風が、容赦なく体を削る。比喩ではなく、文字通り体が表面から削れていくのだ。

削れていく体をかき集めていくように、失わないように、崩れないように、必死に腕を伸ばして灰をつかみ体にこすりつけて形を保っていた。

それでもすべてを拾いきれるわけはなく、次第に体が細っていく。吹き付ける風は弱まることはなく、むしろ強くなっていくような気すらする。道はまだ続いている。


骨すら削れて、細っていく体を無理やりに動かして、引きずって、うつむきながら、それでも前に進んでいく。折れてしまった足を無理やりにくっつけて、もう既に削れた体をかき集めることも億劫になって、消えそうな火種だけは絶やさないように大事にして、芋虫が進むような速さでひたすらに、前へ、前へ。


あぁ、寒い、寒い、怖い、辛い。もう止まってしまいたい。


止まれない。動かないと、小枝のような体でも、今すぐ消えそうな火種でも、進まないと、進めないと。


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