2人の浄化師
ケインに強く抱きしめられると同時に、リリアは無意識に浄化の力を放っていた。魔気に対して体が勝手に反応したのだ。
2人の周辺だけが光に包まれる。
光より先は魔気の闇一色になってしまう。
「何が起こったの?」
「はっきりとはわかりませんけど、ミリア様から魔気が出てきたのは確かです」
「あの、いかれた令嬢。まだ変な物隠し持っていたようね」
吐き捨てるように言うケインはミリアがいた方向を睨みつけている。
「おそらく、魔気石を持っていたんだと思います」
魔気石は魔気を封じ込めた魔石だ。魔力を閉じ込めれば魔法石になり、浄化の力を封じ込めれば聖石になる。そして魔気を封じると魔気石に変わる。
魔気石が発動すると、周囲に広がっていき生き物に影響を及ぼす。大量に摂取してしまうと魔物化したり、命を落とすことさえある危険な存在だ。
そんなものをなぜミリアが持っていたのかわからないが、アルベルトに拒絶されたことで持っていた魔気石を解放してしまったのだろう。
「このままだと黒騎士たちが危険ね」
リリアたちは浄化の力で魔気が近づけないようにしているが、アルベルト達は何の対策もしていない状態で魔気に飲み込まれてしまった。このまま放置すれば彼らの命が危ない。
「一気に浄化する?2人ならできると思うけど」
広がっている魔気を消し去るには浄化するしかない。ケインと2人で力を開放すればそれもできるだろうが、リリアは首を横に振った。
「魔気が噴き出してきている元を絶たないと収まらないと思います。外に漏れた魔気よりも今はミリア様から溢れてくる魔気を静めましょう」
ミリアがいるであろう場所は魔気の濃度が濃いのを感じる。解放された魔気にミリアの負の感情が上乗せされてさらに深い闇が生まれているような気がする。
今もそこから魔気が溢れ出ているのだろう。そこを絶つことで、噴き出してくる魔気を止めてから周囲に漏れた魔気を浄化するほうが効率がよかった。
「でも、あの女のところまで行くのは大変じゃないかしら」
魔気が濃ければ濃いほど浄化の力を強く使わなければいけなくなる。
「わかっています。だからケイン様に協力してほしいと思っているんです」
見上げればケインは首を傾げてリリアを見降ろしていた。だが、ゆっくりとその顔に不敵な笑みが浮かぶ。
「いいわよ。派手にやるなら手伝ってあげる」
何を頼むのか聞く前からケインはやる気十分だ。
「ケイン様にはミリア様の魔気を集中して浄化してください。彼女の負の感情を断つのは難しいでしょうけど、魔気石を浄化してしまえばいい。それ以外はすべて私が引き受けます」
「思いっきり力が使えそうね」
ケインは浄化師の中でも上位の浄化の持ち主だ。彼の全力を見た者はまずいない。今までよりも力を解放できることに瞳が輝いているようだ。
やる気を見せるケインにリリアは苦笑しながらも一点に視線を集中させた。
「一気に畳みかけます」
「了解」
抱き合う態勢から離れると、まっすぐに両手を前に突き出して意識を集中させる。狙いを定めると一気に力を解放した。




