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目の不自由な令嬢は仮面の聖女となる  作者: ハナショウブ
2人でお出かけ
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見下される衝撃

「あなた、もしかしてアルの婚約者?」

突然知らない女性と2人にさせられて内心どうしたらいいのか焦っていると、女性が声をかけてきた。

アルベルトの知り合いだということはわかったが、どんな知り合いなのか名前も聞いていない。

だが、相手はリリアのことを知っているようだった。

「はい。アルベルト=ウォルスター様の婚約者で、リリア=フラクトルといいます」

「フラクトルと言えば伯爵家ね。家柄的には問題なさそう。私はミリア=ルナソルよ。ルナソル伯爵家の長女で、一緒にいたのが婚約者のカイル=キックス」

突き放すような冷たい印象を与える声だったが、名乗ってくれたので、これで相手の素性はわかった。

「最近アルが婚約したことは噂で聞いていたけど、あなた、アルとどこで知り合ったの?」

「先日お城で開かれた夜会です」

「ふぅん。そこでアプローチでもして見事に落としたわけ」

「え?」

なんとなく会話の雲行きが怪しくなってきた気がする。

「それとも弱みでも見つけて婚約を迫ったのかしら」

「困っていたところを助けていただいただけです」

「それで婚約したなんて変じゃない?彼は女性に見向きもしない黒騎士として有名なのよ。夜会で会っただけで婚約だなんて、何か手を使ったとしか思えないわ。そう言えばあなた目が見えないそうね。同情してもらったのかしら」

どこから情報を得ているのかわからないが、目の前の女性は明らかにリリアを嫌悪しているのが伝わってくる。

だが、夜会後のことは何も知らないようだ。

助けてもらったお礼としてケーキを渡したが、それ以外リリアは何もしていない。それにアルベルトはリリアの目が悪いことに対して同情などしていない。

色々と偶然が重なってアルベルトと再会し、今は仮の婚約をしている。決して邪な感情で彼の側にいるわけではない。

そのことをどう伝えたらミリアに伝わるか困惑しながら考えていると、アルベルトと話をしていた男性が戻ってきたようだった。

「ミリア待たせた。昼食の店の予約時間が迫っているから移動しよう」

「そうね。ここで時間を無駄にできないわ」

その言葉がリリアを見下していることはわかった。しかし、ここで言い返せばややこしいことになりそうで、ぐっと堪えることを選んだ。

「アルベルトとの時間を邪魔して悪かった。俺たちは立ち去るから2人は楽しい時間を」

男性はミリアの嫌悪を感じる言葉に気づいていないようで、何事もなかったように彼女を促して広場を去っていった。その足音が聞こえなくなるまでじっとしていると、アルベルトが戻って来た。

「リリア嬢、急に離れて悪かった」

彼が再びベンチに腰掛ける。

「今の2人は俺の幼馴染で、男性がカイル=キックス侯爵令息で、女性がミリア=ルナソル伯爵令嬢だったんだ」

紹介されないうちに離れてしまったため心細かったが、名前はミリアから聞いていた。3人は幼馴染で幼い頃はよく一緒に遊んでいたという。随分と親しそうな雰囲気は感じていた。

「次の店に行こうか」

「はい」

「・・・リリア嬢?」

手を取られ立ち上がろうとしたが、それよりも先にアルベルトの顔が近づいてきた。

「どうかしたのか?顔色がよくない」

そう言われてリリアは頬に手を当てた。先ほどのミリアとの会話が衝撃的だったのかもしれない。目が不自由なことで人から距離を取られたり、見下される経験がないわけではない。それでも今ショックを受けていることは間違いなかった。

顔に出てしまったことでアルベルトを心配させてしまった。

「大丈夫です。次のお店に行きましょう」

ベンチから立ち上がると手を持ち上げた。連れて行ってほしいという合図だったが、アルベルトは何も言わずにリリアの手を取ってくれた。

そのまま2人で歩き出す。気遣いながらも彼は何も言ってこない。その優しさに感謝することで、リリアは先ほどのミリアとの会話でショックを受けた理由に気が付いた。

優しく扱ってくれるアルベルトの幼馴染みなら、彼女たちもきっとリリアに対して親切にしてくれる。そう勝手に思い込んでいた。それを裏切られるような態度に衝撃を受け、心が沈んでしまっていたのだ。

「アルベルト様はお優しいですね」

「ん?何の話だ」

素直な感情を口にすると、隣の彼は首を傾げたようだった。それ以上何かを言うこともなく、リリアは微笑んだまま歩みを進めていった。


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