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これは、現実に起こった話じゃない。あくまで妄想の中の話でこうなればいいな、こうだったらいいなって思う話。
この物語に名前を付けるとするならば、「フェイクストーリー」
三代茉優
身長 150cm、体重は秘密。
長い髪の毛で顔を隠している。
馬鹿にされるかも知れない、笑われるかも知れないけど僕は、彼女の声が大好きだ。
入学式の日から、君の声は気になっていた。将来は、声を使った仕事に就きたいって?
[大丈夫、君ならなれるよ……]
1年生の時は違うクラスだった。ウチの学校は体育と家庭科だけは2クラス同時に授業をする。1組の君と2組の僕、一緒に授業を受けられるのは体育と家庭科だけ。嬉しいけど少し残念なのは、体育と家庭科は声をあまり出さないってことだ。
[君の声、聞きたかったな……]
2年生、新しいクラスの名簿表を見て、親友の田村君と2人でガッツポーズをした。
「やったな、田村。俺たちまた一緒のクラスだぜ! 神ってる」
田村君の前ではそう言った。勿論 田村君と一緒のクラスになれたことも嬉しかったけれど、僕は真っ先に三代さん、君の名前を探したよ。
[君と同じクラスになれて本当によかった……]
田村君と三代さんと同じクラスになれるなんて僕は運がいいな。
「あ、初めましてだよね? 俺、目黒。よろしく」
三代さんが前の席に。初めてを装って話し掛けてしまった。でも初めてのようで初めてじゃないんだよ。ほら、家庭科の授業の時、何度か目が合ったよね。目が合うってことは互いがその人のことを見ていたってことだよね?
「ど、どうも、初めまして三代です」
あれ? もしかして照れてる? 照れてる姿も確かに可愛いけどさ、そんな小さな声じゃなくてもう少し声を出してよ。聞こえないじゃない。
[君の声、僕は大好きなんだからさ……]
もっと聞かせてよ君の声。
***
授業中、君の背中をずっと見てた。女の子の背中ってこんなに小さいんだな。守りたくなる背中だな……
口には出してない。ただ心の中で思っているだけ。言葉にして発しなければ、気持ちや考えていることなんて分かんないんだ。
[世の中が超能力者で溢れていなくて本当によかった……]
人類の大半が超能力者だったら、純粋に恋を楽しめない。超能力者って自分の好きな人が誰を好きなのかを知ることなんてか簡単なんだよ。
好きになった相手が誰が好きなのかが、分かるってことは、自分の好きな人が自分以外の人を好きだと分かればそと時点で自動的に失恋。告白という行為をする時点で、相手も自分のことだと知ったとき。告白=勝利確定。
公表していないだけで、この世に超能力者っていうのは一定数いるのかも知れない。三代さんが超能力者だったら、僕の気持ちってのもバレてるんだよな。