学校生活「懐かしい」
「あのー!!入学の受付どこでやっているんでしょうかーー!!」
お城から歩いて行き学校の校門の辺りで中の様子を伺っていた。
たまたま見つけた箒と塵取りを持った男の大人の獣人が居たので聞いて見た。その男性は私をジッと見つめ・・・
「・・・あっち」
と指をさした。その方角が校門の外なんで苦笑いしてしまった。
そして、私は満面の笑みでもう一度聞いた。
「っで、受付はどちらにありやがりますの?」
男の大人の獣人はさらに私の顔をジッと見つめ・・・
「ぷっ!変な顔だなぁ!」
いきなり笑って失礼な事を言ってくる。まぁ顔の傷を言っているんだろうけどはっきり言い切る所が清々しい。
私は『ハトが豆鉄砲を食らった』ようにポカーンとなってしまった。だがここは気にするところではないのを知っている。これはある種のコミュニケーションだからこそ私もついつい笑って返してしまう。
「お兄さんも毛深いっすね!!」
「おぅ、ワイルドだろぉ~~!!」
っと切り返された。そして獣人の男の人は私に話しかけた。
「いいね!こっちだ。付いて来い!」
なんかよくわからないが合格したみたいだ。私はこの大人の獣人の横を一緒に歩いた。
案内をされつつ談笑すると気を良くしたみたいだ。名前はフロントさん。犬の獣人で長毛種だそうだ。
「いつもあんな事するんですか?」
「ん~顔の傷が気になったからな。思わず言ってしまった訳よ!まぁどうでも良いよ、お腹がいっぱいにもならんしな!ははは!!」
「どうでも良いって・・・そんな事酷い事言うなら体の毛を剃って全身トゥルントゥルンにしてやりますわ!」
「やめろよ~俺のチャームポイントなんだから~。」
「「はははは・・・!」」
「ほれ、ここが受付だ!」
そう言うとフロントさんは学校の事務所の窓を叩き誰かを呼んでいた。
「あ、ジェンコさん、入学希望者だ。よろしく頼んま!」
「フロントさんありがとうございました。」
「あぁいいっていいって!んじゃあ、またな!」
そう言ってフロントさんは手を上げて居なくなった。
後ろを振り向くと女性が私に話しかけた。
「まず、書類とかあるかしら?あったら提出お願いしたいのだけれど。」
私は肩掛けのカバンから書類を出した。マルコじいちゃんが用意してくれたものだ。
「お願いします。」
そう言って提出。ジェンコさんは書類の入った封筒の端をハサミで切り、中の書類を見ながら・・・
「お嬢ちゃんどこから来たの?・・・あ、ここ名前未記入だからここ書いてね。ペンこれね。」
「トラピスト王国から勉強しに来ました。名前書くのここですね?」
そう言って名前をサイレンと書いて再度提出。
「トラピスト王国かぁ、遠かったで・・・・・ちょっと待ってね・・・。」
受付のジェンコさんは書類を持って事務所の奥に入って行った。
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「校長先生、ちょっとご相談が。」
「ジェンコさん何か?」
「今、入学希望で来た女の子なんですが・・・保護者の欄でもしかしたらと思いまして。」
そう言って事務員のジェンコは校長先生に書類を見せる。
保護者の欄には『オスミウム ド ロシュフォール』もう一つの欄には『ヘリオドール フォン シメイ』と記入されていた。事務員のジェンコは話す。
「この用紙に記入した人が本人かどうかわかりませんが・・・一度速達送って確認してみますか?」
「そうだな。一度入学させてから確認して違ったら追い出すなりすれば良いだろう。」
「じゃあとりあえず入れますね。」
そう言うと受付カウンターに戻った。
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わたしカウンターの前ですこし待っているとジェンコさんが帰って来た。
「お待たせしました。書類の中で入学試験が免除させる旨があったので入学出来ます。入学式は3日後です。全寮制で4人部屋でランダムに振り分けになりますがルームメイトとの相性もありますので要相談で部屋の変更も可能です。その他の注意書きはこの資料に載ってますのでご一読下さい。また、提出された入学希望の書類に不備、虚偽などがあった場合は退学となるかもしれませんのでご注意下さい。」
そう言うとジェンコさんは外に出て来て言った。
「今のはマニュアルで必ず言わないといけないのよ。はい、書類。サイレンさん、ようこそブルーローズ技術学校に!歓迎するわ!何か困ったことがあったら私に相談して頂戴。寮にはすぐに入れるから確認してみると良いわ。今は誰も居ないけど校内を見て行くと良いわ。その間に寮に話しを通しておくから。」
「はい、ありがとうございました。よろしくお願いします。」
そう言って校内に入る。入学式が数日後に控えていて本当に学校には誰もいない。教室があり、運動場があり、実験室があり・・・昔、一人で最後まで学校に残っていた時のあの静けさ・・・そして学校と言う名前の響き、その全てに懐かしいものを感じた。
そして、一通り見てからその寮という所に足を運んだ。




