旅路「ガルーダ」
王国までもう少しっという所で馬車が混雑し出して前に動けなくなった。
「ん~?なんだ?ここは何もないはずなんだけどなぁ・・・?」
ジンジャーさんは渋滞した事を不思議がっていた。私も前を覗いたが前の馬車で見えない。そして馬車の上をに上って覗いたが良くわからなかった。
(ん~・・・分からないなぁ・・・)
そして探知探索の魔法を前方に集中して張ってみた。そして私はなぜ渋滞が起きない所で起きた理由を知った。
「!?」
「ジンジャーさん!!大きい何かが道を塞いでいます!!」
その大きい何かの周りを人が囲んでいるようだ。
(大きい何か・・・大きい者・・・)
そして思い出した。魔獣が運ばれていた事を。
「おそらくさっきの魔獣です!!ちょっと行ってきます!!」
「サイレンちゃんちょっと待っ・・・・」
私は渋滞した馬車の間を縫って走り、程なくしてその大きい何かは姿を現す。
その大きい何かは傷つき弱っていた馬鹿みたいに大きな鷲だった。
急いで走っていたので馬車が横転し、そのはずみで檻が破損してしまったみたいだ。
後ろからジンジャーさんと星光の剣とスカーレットのメンバーが息を切らせて走って来た。
「ジンジャーさん来ちゃったんですね!」
「あぁ!お金の匂いがしたからな!馬車は商隊の奴らに任せたから大丈夫だ!」
「俺たちはジンジャーさんや商隊の護衛だから、ちゃんと仕事はしないとな!」
「私達の馬車も商隊の人に任せてきたから大丈夫!」
(さすがの商人魂ですね、ジンジャーさん!ブローさん、ライラさん、冒険者のみんな、護衛の仕事は絶対に頭の中に入ってないよね!野次馬だよね!?まぁ、いいけど。)
その馬鹿みたいに大きな鷲が暴れている。その時居た周りの馬車に被害が出ている。
「ありゃガルーダじゃねぇか!!ひでぇなこりゃ!!」
星光の剣のブルズさんが私の後ろから言っていた。空を飛べるはずのガルーダは全身傷だらけで片方の羽には大きな傷があり飛べないでいる。
ガルーダを運んでいた商人は被害を受けた商人に囲まれて責められている。
「し・・・知らん!!あの鳥はうちの鳥じゃない!!それにあの馬車もうちのじゃない!!」
その商人は見え透いた嘘をついていた・・・しかし・・・ガルーダの所有権と馬車の所有権を放棄したので誰のものでもなくなった。それはこの場所にいる皆が聞いている。
「ジンジャーさん、ちょっと遊んできて行ってきていい?」
そう言うとジンジャーさんはニヤッとして私に言い返した。
「私はあの男の言った事は覚えているがサイレンちゃんのする事は見ていない。」
目を輝かせた。ジンジャーさんの後ろにいる星光の剣とスカーレットのメンバーは何も言わないがニヤニヤしている。
私は大きいな声で叫んだ。
「誰のものでもない馬車と鳥さん私がいっただっきまーす!!!」
そう言って小走りでガルーダの元に走った。
「クワーーー!!!」
ガルーダは無防備で近寄って来た私にくちばしで攻撃してきた。
馬車の中から見ていた商人から、遠目に見ていた護衛の冒険者達から、全ての方角から叫び声が聞こえて来た。
今まで私と旅をしてきたジンジャーさん達を除いて。
「危なーい!!」「離れなさい!!!」「きゃーーー!!!」etc.
くちばしの攻撃を避けてそのまま突っ込み、ガルーダの首に腕を巻き付けそのまま背中に乗った。
傷ついたガルーダはとても暴れている。しかし私にとっては暴れ馬に乗るのとさほど変わらない。つまりは大したことない。そしてワイバーンの時と同じ様に魔力での会話を試みた。手から私の魔力をガルーダに流す。
人に捕らえられ傷ついたガルーダはとても怒っているがそれはしょうがない。やれるだけの事はやってみる。ダメならその時考えよう。そして、ガルーダの体の中に2つ卵がある事に気が付く。
(お願い、鎮まって!このままだと死んじゃう!あなたの中の子供もダメになる!私が何とかするから!必ず助けるから!静まって!!)
私の願いを伝えた。言葉ではなく想いを魔力に乗せて。すると、猛禽類特有の怒った時の細い瞳孔が丸くなった。
落ち着きを取り戻したようだ。そして、崩れるように倒れ力尽きたようだ。そのまま腕をガルーダの首に巻き付けたまま治癒の魔法を施す。ガルーダの傷ついた全身から淡い光が出て、そして全身から出ていた淡い光が少しずつきえていく。そして一番傷ついていた左羽の部分が最後に消えた。消えた事を確認し私は大きなガルーダの背中から降りた。
ガルーダはすぐに立ち上がり一緒に転倒して死んでいたオークを丸飲みし、羽を羽ばたかせて私の周りをピョンピョンとジャンプしダンスをしている。バッサバッサと羽ばたき土埃が舞う。目に砂が入って痛いのでやめるようにお願いした。
(大きいオークを丸飲みって・・・えぐいな・・・)
そう思っていると、このガルーダの所有者だった商人が言ってきた。
「そのガルーダは私の物だからそのオークが入っていた檻に入れてもらって良いかね?」
(やっぱりそう言ってくるよね。でも、この人、厚顔無恥ね・・・)
「いえ、これらの馬車とこのガルーダとあの大男の所有権は誰のものでもないですよ?だから宣言したじゃないですか?『馬車と鳥は私が貰います』って。」
(っというかこの人は馬鹿なの?所有権が最初から自分だったって言ったらガルーダで被害受けた商人達から賠償させられるんだけど・・・)
「そんな事が通用すると思ってるのか?小娘のくせに大人に楯突くとどうなるか分かっているのか!!」
その商人は私に怒鳴ってきた。近くで見ているだけのジンジャーさんと星光の剣とスカーレットの面々。
なんだかニヤニヤしている。
(あ、助けてくれないのね。まぁ良いけど。)
「わかりました。じゃあ、お返しします。」
私はがっかりしたように下を俯きガルーダから離れた。魔力で指示を与えて・・・
(少ししたら人を傷つけないように大暴れして!!)
男は鼻息荒く文句を言った。
「ふん!!小娘が生意気なんだよ!!」
すぐに引き下がったのを見てジンジャーさんと冒険者の面々が『あれ?』っと言う顔して訝しそうにしていた。
私は俯き下を向いていたが・・・笑いを押し殺すのに必死だったので肩が小刻みに揺れていた。
「くふ・・くふふふふ・・・」
その私の様子を見てジンジャーさんと冒険者の面々はガルーダに目を向けている。目がキラキラワクワク!何かを期待しているようだ。
その時、ガルーダの大きい声が聞こえて暴れだした。
周りの馬車を私の指示通り無差別に破壊しだした。
「クエーーーーーー!!!!キゥエーーーーー!!!!」
『メキメキ・・・ベキッ・・・』
『バサッバサッ!!』
足の爪で馬車を砕く!羽ばたいて馬車を倒す。人を吹き飛ばす。
私が居た場所は騒然としていた。
男は叫ぶ。絶叫と言うに等しいだろう。
「やめろーーーーーーー!!!!」
ジンジャーさん達は驚愕して私に口々に言ってくる。
「サイレンちゃんエグイよ・・・」「ひでぇ・・・」「サイレンちゃん・・・あんた・・・怒ると怖いよ。」「鬼だ・・・」
そんな事を言われ私は・・・
「それほどでも~~♪」
満面の笑みで返した。




