旅路「アルビオン王国」
最終日、朝、いつものように洗濯物を取り込んでお風呂とパテーション、物干し竿を片付けた。
そして、いつものように服を畳み男物と女物を分けて・・・
それが終わったら朝食の流れだった。
皆との最後の食事だったんで星光の剣とスカーレットのメンバーも集まって少し長めの朝食となった。
ジンジャーさんが今日のスケジュールを話した。
「今日で最後だな。今の感じなら昼前には着きそうだ。フェルミエ王国から水を積んでなかったからアルビオン王国で水を積むのだが、水の心配が要らない旅とはこれほど楽なものなんだな。やっぱり魔法ギルドの制度はおかしいのかもしれん。むしろ魔族と交流を深めても良いと思う。」
「サイレンちゃんは学校でどのギルドにはいるんだ?やっぱり魔法ギルドか?」
私はジンジャーさんの質問に答える。あんまり考えてなかったのでしばらく考えた。
「ん~・・・魔法ギルドは興味ないので、もし入るとしたら冒険者ギルドだと思います。」
そう言うと皆驚いていた。そしてジンジャーさんが私に対して思っていた事を口にした。
「本当はルール違反なのは分かっている。でも、敢えて聞きたい。トラピスト王国から箱に入って来て右頬の傷跡もそうだが・・・野盗に襲われた時の対応・・・サイレンちゃんは何者なんだ?無理に答えなくても良いよ。」
(あー・・・やっぱり気になっていたのね。)
「・・・・・・。」
(まぁ・・・アルビオン王国でお別れだし・・・別に問題はないかな。)
そう思ってヒントになるか分からないが一言だけ喋った。
「ワイバーンに乗る女の子。」
そう言った瞬間、絶句して静かになった。そして皆納得した顔になった。
「まじか・・・。」「なるほどね、納得だわ。」「たしか・・・トラピスト5大侯爵家の娘だ・・・」
「そりゃあ魔法ギルド興味ないはずだ・・・」
みんな知っているようだ。ってか有名な話しみたい。
「結構知られてるんですね。秘密ですよ?」
「秘密は当然だが・・・っというか結構じゃなく有名な話しだぞ。」
ジンジャーさんが言うと皆が頷く。
「ワイバーンを侯爵家で飼っていて、使役までしているからトラピスト王国は平和に一番近い国と言われている。それであの国の人口も爆発的に増えてるそうだ。小さい規模の商会もあそこなら商機があると言ってあそこに拠点を移しているし。」
「へぇ・・・そうなんですか~。」
(やっぱりテルル姉さまにフシミとシガラキ託して良かった!)
「さぁ皆、もう少ししたら出発するから準備をしてくれ。」
ジンジャーさんが朝食の時間を切り上げ、皆は馬車に戻り旅の準備をした。
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
アルビオン王国に近づいているのだろう。最初自分達の馬車だけだったが、他の商隊の馬車も見かけるようになった。その数はどんどん多くなり道幅も広くなった。トラピスト王国ではほとんどいない獣人やエルフなどを見かける。やっぱり四方からの道が交わる貿易の中継地点だけあって取引も盛んと言っていたからいろいろな人種も集まる。その中で魔族も居たがほんの少数。
私は珍しいので笑顔で手を振ったが一瞥されるだけで相手にされない。
(まぁ・・・そんなものか。人間と魔族は仲が悪いって言ってたな。)
他の積み荷を見ていたらいろいろな物があった。武器や盾、野菜、お酒、中には本なんてのも。後ろから速いスピード大きな馬車が私達の馬車を追い抜いていく。どこで捕らえたか分からないがオークや牙と角の生えた大男、馬鹿みたいに大きな鷲が檻の中に閉じ込められていた。この全てが傷付き弱っているみたいだ。
それをじっと見つめていたら同じ馬車に乗っていたジンジャーさんが・・・
「最近、アルビオン王国で魔獣を集めているんだってさ。理由は知らんが飼い慣らそうとしてるんじゃないか?トラピスト王国でワイバーンが飼われたから他の国でも飼う為の試験が行われているって話しだ。」
「死んでしまっては元も子も無いだろ?だから急いで運ぶんだ。」
「・・・・・・。」
「はぁ・・・。」
(無駄な事をして・・・。)
そう思ったがその原因が・・・遠因は私である事にいたたまれなくなり溜息が出た。
お城が見えてきた。とても大きいので遠いのによく分かった。
「やっと見えてきた。でも意外と遠いからな。」
ジンジャーさんは何度もここに来た事があるんだろう。
「あのお城大きいですね。遠くても良く見えます。」
感じた事を素直に語った。
「アルビオン王国の王様は6代目で初代が金貸しで身を起こし城と地位を買ったそうだ。商人としては初代は神様として敬われてるよ。この国の王族のみの専売特許として銀行業を営んでいる。そして先代までは名君だったが今の王様、6代目はわがままな暴君だそうで側近が何人も代わっているってさ。」
「・・・・・・」
「どこでも色々あるんですね・・・。」
「そうだな・・・。」
物語を考えている時が楽しい・・・




