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旅路「転生者」

「あぁ・・・今日は本当に良い天気だ・・・」


焼けて少し黒くなった馬車の屋根に横になり、日光の熱を感じつつマッタリしている。

フレイさんが戻って来て繋がれていた馬を外して連れて行った。


「まだ走れるよな?私が使ってあげようか?」

などと馬車に話しかけても返事はあるはずもない。馬車を撫でながら・・・

(焼け跡が残っている馬車なんか誰も襲わないわな・・・オーバーホールすれば使えるか?)

などと考えていたらスカーレットの面々が真新しいおしゃれな馬車で帰って来た。

馬車の背面にもドアがあって大きい頑丈そうな馬車だ。外からの攻撃ではなかなか壊せそうもない安全性を重視した馬車。4頭立てで引っ張っていく馬車は若いパーティーがこれから大きくなるには必要なサイズだろう。

私は焼けた馬車の中に300万バーツを出して置いてから2頭の馬を取りに行き、ライラさんに引き渡した。マチルダさんとステラさんは少し焦げた馬車の中にあった物資を新しい馬車に移している。ライラさんに引き渡した馬をフレイさんが4頭立ての馬車に繋いで、小さい馬車を引っ張っていた2頭を合わせて4頭。馬車に4頭繋げていると結構絵になる。

ライラさんは胸にグッとこみ上げるものがあるのか涙目になっている。

フレイさんは終始ニコニコしている。馬車の中ではマチルダさんとステラさんが300万バーツある事に歓声を上げている。


「何から何まですまない。大切に使わせてもらう。」


そんな事をライラさんは言ってきた。横で見ているフレイさんも頷いている。

フレイさんはあまり喋らないタイプのようだ。


「あ~・・・大事に使わなくて良いです。そんな事より、私は先日・・・力不足、全てが不足していると言いました。」


ライラさんとフレイさんは真剣に聞いている。話しを続けた。


「力と言うのは個人の力と思っているかもしれません。ですが力の種類はいくつもあって、統率力、組織力、権力、腕力、武力などなど。個の力が弱いと思ったなら他の力を鍛えるのをお勧めします。そして私を下働きに出来る位になって下さい。お待ちしております。」


「分かった。かならずサイレンちゃんをこき使ってやるから待ってろ。」


「どこにも属しちゃダメだからね。」


ライラさん、フレイさんになにか新しい目標が出来た様だ。それを目にこもる光が物語っている。良い事だ。


「さてさて・・・私もお買い物行ってきますね!」


そしてその場を後にする。


--------


私は役所の近く店に買い物に来ていた。役所の近くは馬車が集まりやすく、それに付随した商品を売っているお店も多い。


「すいませーん、水樽を頂きたいんですがー!!」


「お嬢ちゃん、どんなのが良いんだい?」


店の中から現れたのは筋肉質の初老の男性でいかにも職人と言った風体。


「馬車に詰めるサイズで、一番大きくて、一番頑丈なの。んで蓋に蛇口が付いてるの~。」


「あぁ、あるけどお嬢ちゃん一人?重くて持てないだろうからお父さん呼んできなよ~。」


「うん、大丈夫ー!見て見て!」


そう言って私は大きい樽をヒョイっと軽く持ち上げた。


「!?」

「す・・・すごいね・・・。」


「縦置きした時に下から蛇口で水が抜けるようにしたから台も欲しいです~。」


おじさんは趣旨がわかったようだ。


「あぁ・・・水風呂にするんだろ?たまに注文あるから。わかった、ちょっと待ってな。」


やっぱり人間は考える事は一緒らしい。まぁ・・・説明が省けたのはありがたい。


「はいよ、これな。一応蓋取っておいたから。」


「おじさんありがとう!!お金はいくら?」


「4万バーツだが大きすぎてあんまり売れないしお嬢ちゃん可愛いからから3万5千バーツでいいよ。」


「はーい、ありがとうございますー!」


やっぱりお買い物は楽しいぜ!!

もう少しお店回ってみよう・・・


・・・・


・・・・・・


・・・・・・・・


私が一人ドーナツを食べて歩いていると、背後からザワっとする気配を感じた。すかさず視線を感じた方角を見つめ探知探索の魔法を展開する。だが何も引っ掛からない。引っ掛からないが変わった足音がした。


「カッ、カッ、カッ・・・・」


乾いた木の足音は遠くなりそのまま消えた。

気になったのでアズラエル様に聞いてみる。

(アズラエル様、今、私以外の転生者いましたか?)


(セレンちゃん、今、居たわよ。でも、すぐに離れていたけど。)


(以前トラピスト王国で会った人ですか?)


(そうよ。それにあなたの敵では無い事は確かよ。)


(ただ、見に来ただけでしょうか・・・気にしなくて良いですよね!)


気にはなるけど今はどうする事も出来ないのでそのまま馬車の所に帰った。

馬車に帰ったらスカーレットのマチルダさんに呼ばれた。

なんでも私の帰りを待っていたようだ。


「どうしたんです?」


覚えが無くてキョトンとして聞いたらフレイさんがガッカリした感じで・・・


「サイレンちゃん・・・あなた・・・石鹸・・・」


「あー!申し訳ありません。すっきり忘れてました。」


ヤレヤレっていった感じでマチルダさんが言う


「みんなで1個ずつベストセレクションで選んだから貰って頂戴。」


「ハイ、タカラモノニシマス。」


「サイレンちゃん感情入ってないわよ!」


横でステラさんのツッコミが入った。


「「「「「あははは・・・!」」」」」

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