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旅路「でっかい釣り針」

私達4人席に座り、メニュー表を見て店員さんに欲しい飲み物を指でトントン叩いて伝えた。

そして、隣の席の5人の会話に聞き耳を立てた

とりあえず先に頼んだであろう飲み物が来てから一呼吸おいてジンジャーさんが切り出した。


「先に言ったように今回の盗賊撃退の報酬の取り分としては当方カルネ商会と星光の剣とスカーレットとで折半したいがいかがでしょう?」


「契約では捕縛した盗賊、野盗の処遇は警護したパーティーに委ねられるはずですが?しかもサイレンさんはカルネ商会の護衛の依頼はしてないはずです。悪く言うなら勝手に撃退に参加したと言われても仕方が無いのでは?もし、3等分するなら当方、星光の剣とスカーレットとサイレンさんで行なうのが筋でないかと思います。」


サロマさんが言う事はもっともではある。それに対してジンジャーさんが言う。


「サイレンさんは当商会がトラピスト王国でお客様から依頼を受けアルビオン王国に運ぶ言わば大事なお客様の商品。もしくはトラピスト王国でお客様から当商会に託されお世話している言わば家族のような方です。」

「その大事な当商会の商品を使って盗賊を撃退したのだから報酬の権利はあると思われます。別な言い方をすれば当商会の家族の尽力により撃退でしたとすれば当商会の取り分の方が多いと思われますよ?」


ジンジャーさんは落ちついて言ってはいるが・・・傍から聞くと納得してしまいそうだ・・・でも根本的に間違っている気もしない事も無い。

ステラさんも口を開く


「その言い分は納得出来ないですね。サイレンさんは何か言ってますか?」


「サイレンさんは私に一任されました。家族の様なものですし信頼されてますから当然かと思います。商人は信用で仕事してますし。それにサイレンさんには私から報酬の何割かをお渡ししますからご安心を。」


(なんだかなぁ・・・家族なら水樽や角材のお金を取らない気がするんだけど・・・)

いざって時は結構あくどい事をさらっと言うがそれが商人である。でないと店を存続できないものだしね。


「それでは急いでアルビオン王国に向かう準備をしないといけないので早めに折半としたいのですがよろしいですか?これ以上長引いても仕方が無いですしこれ以上揉めるのでしたらここで皆さまと契約解除も視野に入れないといけなくなります。」


(あー言っちゃったよ。ジンジャーさんそれ言っちゃダメでしょう。それパワハラじゃん。)


「「「「!?」」」」

「「「「・・・・・・。」」」」


「お待たせしましたー。」


店の人が飲み物を持ってきてくれた。

私は大きめな声でお礼を言った。


「お姉さん、アップルジュースありがとう!!」


「ゆっくりしていってね!」


「はい!!」


「「「プッ!・・・」」」


「「「「「!?」」」」」


隣の席の5人は気が付いたようだった。店のお姉さんとの大げさな受け答えにシズリンさん、シアリンさん、マチルダさんは笑いを堪えていた。

私はアップルジュースを持って席を立ち、交渉している5人の席に座った。


「「「「「「・・・・・・。」」」」」」


『ゴクッ、ゴクッ・・・』


「「「「「「・・・・・・。」」」」」」


「「「ププッ!・・・クク・・・・」」」


私は沈黙の後、アップルジュースを飲んで喉を潤す。

ジンジャーさんは目が泳いでいる。他のブローさん、サロマさん、ライラさん、ステラさんは目で訴えている。もしくは何か期待しているようだ。

隣の席では笑いを堪えている・・・。

ジンジャーさんは耐えられなくなったのか席を立ち同じテーブルの5人を見ながら・・・


「やあ!サイレンちゃん私は話しは済んだから失礼するね。このお金は・・・」


「ジンジャーさん!そう言えば私の国の格言で『同じ釜の飯を食う』ってあるの!」


(撒き餌いってみよう!)

私はジンジャーさんに話しを振って引き止めた。


「どういう意味かと言うと・・・同じご飯を食べていると仲良くなって家族みたいな間柄になれるって意味なんだよ!」


「へぇ、面白い格言だねもう少し聞かせてもらっていいかな?」


(よし!寄って来た!でっかい釣り針レッツゴー!)

そう言うとジンジャーさんは席に座り直した。意外にも自分に有利な話しの流れだと思ったのか・・・そして有利な証言を引き出したいのだろう。報酬をより多くゲットしたいんだろう。そして交渉していた4人は狼狽している。


「ジンジャーさんの商隊の人達と私は家族みたいだって事だよ!」


「そうですね、サイレンさんとは既に家族と言っても差し支えないですね!」


「私、野営の時、貴重なお水をお風呂用で一杯出したしね!普通、家族だからお金なんて取らないよね!」


「そうですよね。家族ならお金なんて取らないですね、普通は。家族じゃない方ならお金とってもおかしくないのでしょうけど。」


「でもね、悲しい事があるの。」


(来てるよ!来てるよ!)


「どうしたんだい、サイレンちゃん。お父さんに話してみなさい。」


(お父さんだって・・・ぷぷー)


「お父さんにお風呂用の水樽と角材欲しいって言ったらお金取られたの!!」


演技で涙目になって思った。

(フィッシュオン!!!でっかい釣り針にでっかい大物かかったーーー!!)


私とジンジャーさん除く七人が一斉に立ち上がり叫んだ。


「「「「「「「なんだってーーーーー!!!!」」」」」」」

「ひどい!」「鬼だ!」「信じられない!」「引くわーー!!」etc.


「・・・・・。」


ジンジャーさんは顔を赤くしていた。


「ジンジャーさん、交渉のくだりはまるっと聞いていました。私はトラピスト王国のお客様からの商品。商品が輸送中に盗まれた、破壊されたなどは許されないですよね。襲撃にあった時、ジンジャーさんは商品である私が戦うのを止めなければならなかった。そしてその商品が撃退したから報酬の権利が発生するのはおかしいですよね。話しが合わないですし筋が通らない。これは信用の問題に発展する案件ですよ。」


「・・・・・」

ジンジャーさんは何も言えないで顔を青くしている。ブローさん、サロマさん、ライラさん、ステラさんは一時狼狽していたが、風向きが自分の所に吹いて来たと思ったのだろう『うんうん』と頷いていた。


「ライラさん、所で幾らになったんですか?」


「サイレンちゃん、あいつらを治したよね?だから高額で取引されて250万バーツ、色付けて合計300万バーツよ。」


「いやっほーい!!」「大金あざっす!!」etc.


隣の席で聞いていたシズリンさん、シアリンさん、マチルダさんがはしゃいでいる!


「・・・・・」

「まぁ・・・商人のジンジャーさんの気持ちも分からなくも無いです。商人はお金が全てですし・・・でないと店の経営は出来ないですから・・・心中お察しします。」


妄想を書くのって楽しいんですね!

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