旅路「敵襲」
次の日の朝、洗濯物を取り込みに行った。超音波振動で水分を飛ばしたのでしっかり乾いてる。
しかもほんのり石鹸の良い香り。
「おそらくマリサ姉ちゃん、ナイスです!!石鹸ありがとう!!」
そしてマチルダさんの厚手の衣類も乾いていたので回収して、スカーレットのメンバーのいる馬車に向かった。
「マチルダさん、おはようございます。あの、これ・・・」
そう言って頼まれた乾いた衣類を渡す。
「サイレンちゃんありがとう・・・すごい・・・本当に乾いている・・・」
私とマチルダさんの会話を聞いていた、他のメンバーが聞いてきた。
「マチルダ、どうしたの?」
「・・・いや・・・お風呂の後、サイレンちゃん洗濯しようとしてたからお願いしたの。夜でも乾くって言ってたから・・・」
スカーレットのリーダー、ライラさんがマチルダさんに聞いて私がした事を話していた。
「・・・でたらめね。」
横で見ていたフレイさんが私の顔を見ながらそう言った。マチルダさんは服の匂いを嗅いでいる。焚火で乾かしたんだろうと思っているんだろう。ただ、そうすると煙の臭いが付くからすぐに分かる。
服からは石鹸の良い匂いしかしない。焚火で乾かして無いから。
ステラさんは横でじっと見ていたが・・・我慢出来なかったんだろう・・・
「サイレンちゃん、うちのパーティーに入りなさい!これは決定事項よ!逃がさないわよ!」
「えぇぇぇぇぇ!!!あ、あの、無理ですから!」
今回に関してはマチルダさんもステラさんを嗜める事はなかった。
(前回みたいに嗜めてよ!!)
とりあえずスカーレットのメンバーから離れてお風呂と洗濯に使った水樽、角材、釣り糸を撤収。こっそり空間収納魔法を使い片付ける。傍から見たら消えた様に見えるんだろう。
手際良くジンジャーさんの商隊の人が作ったスープを飲んで固いパンを食べた。最初は固いと思っていたが慣れると普通に感じる。あごを鍛える効果がありそうだ。馬車の荷台に横になりながらゴロゴロしている。何日なったか覚えてない。一人で航海してた時、日数を数えないと気が楽になるっと聞いた事がある。アルビオン王国にいつ着くかは着いた時に確認しよう・・・
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・・・・・・
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昼が過ぎ暫くたって・・・馬の足音を聞きながら・・・ウトウト・・・コックリコックリし・・・眠りそうになった時・・・
遠くに不穏な気配を感じた。私は急に目が醒め探知探索の魔法の半径を一気に1km先まで広げる。
動く馬車から飛び降り、走って先頭の馬車に飛び乗って御者の席に移動して斜め前を凝視する。数にして23~27人
先頭の馬車の冒険者のパーティー、ブローさんは突然飛び乗って来て斜め前を凝視している私を驚いて見ている。
だんだん先頭の馬車との距離が近くなる。そして私の探知探索魔法で見える悪意が一際大きくなった。
(やばい、何か来る!!)
先頭の御者を狙っていた。馬車を足止めして襲い掛かるんだろう。
矢が1本放たれて私がいる場所に向かってきた!!
(来た!!)
空間収納魔法で空間から私の作った剣『天国』を出し鞘を抜いて叫んだ!
「天国、盾形態!!」
柄の元に珠が3つ連なった飾りのついた1本のブロードソードが瞬間的に盾に形を変え弓矢をはじき返した。『ガンッ!!』
先頭の馬車内は緊張に包まれる!
私はさらに叫んだ。
「敵襲です!!気を付けて下さい!!」
「天国、弓形態!」
空間収納魔法で矢を1本ずつ出せる。矢を摘み弓に当て引き絞り・・・そして『バチンッ!』弓の弦が空気を切り矢が放たれた。『ヒュン!!』っと共に遠くで声が聞える・・・
「いてぇ!!!」
「ちきしょう!!!!奇襲失敗だ!!!」
遠くから野盗は一斉に出てきて襲いかかって来る!馬に乗っている者が6人、走る者は多数。
私は御者の席でそのまま弓で野盗の太ももを的確に射抜く!
ブローさんが警戒させる為、大声で叫ぶ!サロマさんが警笛を吹いた!!
「前方右斜めから敵襲!!!!迎撃に当たれ!!!!」
『ピーーーーーー!!!!』
後ろからも警笛が聞えて来た!!
『ピーーーーーー!!!』
ステラさんが聞えた事を伝える為に吹いたのだろう。馬車5台を中心に一気に緊張感が高まる!!
馬車の馬は動揺して走り出そうとしているが、それを止めようと雑用係のサロマさんが手綱を握って制する!!
『ヒヒン!!ヒヒーン!!ブルルル!』
同様に他の馬車の馬も暴れないようにしている!!
護衛の冒険者パーティー『星光の剣』と『スカーレット』の人達が馬車から飛び出て迎撃に当たる。しかし、護衛の数より野盗の数の方が多い。こちら側が不利だった。
私は先頭の馬車の御者の席から弓矢を射る!!
『バチンッ!』『ヒュン!!』『バチンッ!』『ヒュン!!』『バチンッ!』『ヒュン!!』・・・
馬に乗った野盗6人中3人を射抜いて戦闘不能にし走って来る野盗を5人行動不能にした!!
そして野盗が馬車に駆け寄って来てブローさん達と交戦した。馬車の屋根に掛け登り交戦している野盗の太もも、腕を射抜く!!
すでに交戦してしまっているので弓を使うと仲間を傷つけてしまうのでマチルダさん、シズリンさん、シアリンさんは剣で応戦を余儀なくされた。ただし、乱戦になっても確実に敵のみを射抜けるのなら問題は無い訳だが。
射抜いた野盗は体勢が崩れブローさん達交戦中の人達が叩き伏せて行く。シズリンさん、シアリンさんも短剣で応戦しているが体重差とパワーで負けている。なので、私は上から矢で援護射撃をする!!野盗は上からの攻撃があるので注意力を分散されて集中できないでいる。
矢筒から矢を取り出してが無い私の連射速度は普通より倍以上早い。矢を射ったらすぐに弦に指を持っていき、空間収納された矢を摘み引き絞りながら空間から矢を引き抜く!
『バチンッ!』『ヒュン!!』『バチンッ!』『ヒュン!!』・・・
ライラさん、フレイさん、マチルダさんも奮戦している!!引き続き高い所で援護射撃をしているが馬に乗った3人が厄介で交戦している場所を剣を振り回し引っ掻き回す!!野盗の数は徐々に減ってきているが数的に優位な野盗は散開している!
私の近くで女性の悲鳴が聞こえた!
「きゃあ!!」
「オラァ、死ねや!!」
一際いかつい野盗の男がフレイさんに馬乗りになって剣を突き立てようとしている!私は馬車の上からダイブし叫んだ!
「天国、槌形態!」
「ホイっと!」
『ガコンッ!!』
間の抜けた掛け声と共に馬乗りになったいかつい男を横からバトルハンマーをフルスイング!!
その様子を見ていた馬に乗っている野盗の一人が私に突進してきた!!
私の弓での迎撃と交戦中の援護射撃、今のバトルハンマーのフルスイングで私を標的にしたんだろう。
(分かってらっしゃる。)
そして私に馬が迫ってきた時、手の平から一瞬だけ大きい火球を作った。馬が驚き転倒する。そして野盗の男は私とフレイさんの前に投げ出された。私は馬に飛び付き馬体を軽くポンポンと叩き落ち着かせた・・・魔力を含ませたおまじないの言葉を言って・・・
「ドウ、ドウ、ドウ・・・」
武門ロシュフォール家は騎乗も嗜むのでその辺りはお父さまにも教えられた。しかもスクルド様にも特訓を受けてる。馬の扱いも騎乗も完璧。
馬から投げ出された野盗の男はフレイさんにタコ殴りされている。落馬して怪我しているから簡単なお仕事だ。
「フレイさん!!うまーーー!!!」
そう言うと察したようで馬に乗り手綱を握り・・・
「はっ!!!」
掛け声と共に馬の腹をかかとで軽く蹴り、戦場にかけて行く!!
(フレイさん、かっこいいですわ!まるで宝塚の男役ですわ!)




