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旅路「お風呂」

いくら体を動かさなくても体は汚れて行くもので・・・

屋敷に居た時とはまるで違う。毎日お風呂に入って・・・毎日綺麗な服を着ていた。今の状態を考えるとあの頃が懐かしい・・・あの頃と言っても1週間も経っていないのに帰りたくなる。これを俗にいう『ホームシック』と言うのだろう。なんだか違う気もするがそういう事にする。

とりあえず・・・一人の時に空間収納魔法で仕舞った物を確認する。衣類、小さい家具、靴、帽子、現金、石鹸、シャンプー、鏡、筆記用具、ノート、まくら、ナイフ、フォーク、スプーン、ブラシ、シーツ、毛布、保存食、紅茶の茶葉、等々。中には釣り竿とか使いそうにないものがあったりするがそこは目を瞑る。おそらくは後に送る予定だったのでマルコじいちゃんが選別してなかったからなのだろう。中に入れた人が誰か想像出来て楽しいものである。もし帰ったらお土産買っていこう。


馬車の中に空の水樽があったので購入したくお願いした。


「ジンジャーさん、空の水樽、穴が空いてない古いのがあったら譲って頂きたいのですが・・・。それと補修用の木の棒も・・・」


「良いけど・・・アルビオン王国に着いたら渡すけど、それでいいかい?」


「いえ、今欲しいのですが・・・」


「まぁ・・・何作るか分からないかけど・・・これを使うといい。代金は5000バーツだ。」


「ありがとうございます!」


私はすぐにお金を渡し水樽を受け取りのさっそく蓋を外した。そして夜を待つ。

野営が始まり私は角材と水樽を空間収納魔法に仕舞ってから降りて、馬車から少し離れた所で角材と水樽を出した。

角材を地面に垂直に『く』の字の配置で刺す。体力がいるはずだかスクルド様の特訓をしていた私はそんな事はお構いなしだ!その角材の先に釣り糸を結んで何度も渡して切れないようにした。そして、『く』の字の真ん中の折れた部分、その内側に蓋を開けた水樽を設置した。

みんなは私が何をやっているか気になっていたようだが食事を作る事に手を取られてあまり詮索されない。詮索はしないのがルールだから楽っと言えば楽だ。


ジンジャーさんの所で夕食を食べた後、角材の先に結んだ釣り糸にシーツと毛布をかけて水樽が隠れるようにした。

水樽の中に魔法で水を張り、両手で水樽を挟み電子レンジの仕組みを思い浮かべた。マグネトロン、マイクロ波、誘電加熱、水分子・・・回転、振動、摩擦・・・


水は次第に温まりおそらく40度位になったと思う。手を入れるといい湯加減というやつだ!お風呂完成!!

(完璧だ私!さすが私!私が入っていた箱を踏み台にしよう!)


新しい服とタオルを用意し、少し離れた所に火を起こし明かりにし着ている服を脱いで・・・

お湯の入った水樽に入った。

『ザザーーーー!!』

水樽からお湯が溢れる!

(これですよ、これ!!入った瞬間お湯が溢れる贅沢!しかも露天風呂!アービバビバ!!)

(これぞサバイバル!しかし比較対象が無いのでわからない。多分なのだ、多分!)


「ふぅ・・・」


深く息が出た所で後ろを見たら暗くよく見えないが女性が2人が私を見ている。

怒っているようだ。しかもワナワナしている。


「あんたねーーー!!!!」

「なにお風呂入ってるのよーーー!!!!」


「ひっ!!」


なぜか怒られた。声の主はシズリンさんとシアリンさんだった。そしてその怒鳴り声からすべての人が私の所に集まった!


「いやーーーーーーー!!!お、お嫁にいけないーーーー!!!」


・・・・


・・・・・・


・・・・・・・・


「サイレンちゃんお風呂ありがとうねーー!」


「いえ・・・」

(私悪くない・・・シクシク・・・)


「さっぱりしたわーー!!」


私が入った後、みんなも入る事になった。鍋に水を用意し使った分を補充し、握りこぶし大の岩に炎属性を寄与させて冷めた時に温める為に使うように言った。もちろん岩はほどほどに熱いようにした。私の魔力が尽きれば冷めるようにした。お湯が冷めた時と熱すぎる時に岩をお湯から出すようにも言った。

岩に火属性と言っても岩を焼いたと思ってくれているので正直に話す必要も無い。

商隊や冒険者の女性には特に好評のようだ。

やっぱり体の汚れ、べたつきは気になっていたらしい。そして、男性もお風呂に入った。


「サイレンちゃん、ありがとよーー!!」


「いえ・・・」

(なぜ、こうなった!!)

「お湯はそのままで良いです。」


そんな事を考えながら最後の人が入ったのでお風呂に戻った。シーツと毛布と撤収して減ったお風呂のお湯に水を足して増やし再加熱。石鹸を削って入れ、汚れた服を入れた。

やっぱりその様子を見られている。マチルダさんが私に話しかけて来た。


「サイレンちゃん、何しているの?」


「あ、残り湯で自分の服を洗ってました。」


「今から干しても明日の朝には乾かないわよ?」


普通、夜干しても衣類は乾かない。乾燥機でもなければ・・・『普通は』だけれども。


「超音波振動で乾かせるんで大丈夫です・・・」


「超音波振動?なにそれ?それで明日の朝までには乾くの?」


「はい・・・」


マチルダさんは自分のパーティーの馬車に戻り厚手の衣類を1枚持ってきた。


「試しにこれ洗ってもらえるかな?お金は出すわ。」


「はい、良いですよ。」


私は厚手の衣類を受け取りお湯の中に放り込み、握りこぶし大の岩に音属性を寄与。そして、それを洗濯物の入った水樽に入れた。超音波振動で洗浄出来るはず。しかも、生地が傷まない。優しく洗える・・・そして、しばらくして洗濯物を出し水樽を倒して石鹸水のお湯を捨てすすいで絞って釣り糸に掛けた。衣類に直接音属性を寄与、これも超音波振動を掛けた。超音波加湿器の原理だ!すぐに湿気を感じる。明日の朝には乾くだろう。

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