旅路「お父さん、お母さん」
「テルル様どうしたの?」
「ローゼライト姫、なんでもないですわ。」
「・・・セレンちゃん帰ってきたら教えてね。生意気になってたら私が叩いて叱ってあげるわ。」
「・・・・・・」
--------
「お父上、セレンは行きましたね、大丈夫でしょうか・・・」
「クルタ、セレンは私達が思っているより大人だから大丈夫だろ。」
--------
「ランド、稽古をつけてくれ!セレンが帰って来た時、恥ずかしくないようにしたい!」
「ハスト様分かりました。それでは・・・」
--------
「お母さま、セレンちゃん大丈夫だよね?私も負けない・・・お母さま、経営を教えて!」
「セレンちゃんは大丈夫、ラウラちゃん、でしたらお母さんと一緒に・・・」
--------
「それではこの荷物をアルビオンにお願いするよ。」
「あぁこの荷物ね、例のやつ。」
「くれぐれも乱暴に扱わないでくれ。」
「分かってるさ。商人ギルドは信用でやってるんだ。大事に扱うさ。」
「よろしく頼む・・・トラピスト王国から出たら箱を開けてくれ。」
私はそんな話し声を聞きながら狭い箱の中で揺られていた。真っ暗な箱の中だが窒息しないよう小さい空気穴があり、そこから細く光が差し込む。その光を見ながらこれまでの事を思い出す。
家族の事、女神様の事、戦った事・・・そして・・・考えないようにしていた事が頭をよぎる・・・。
『この世界は私の夢の中の世界じゃない。』
『私は一度死んでいる。』
私はアズラエル様に聞いてみる。
(アズラエル様、私は死んでますよね・・・。死んでこの世界に来たんですよね?以前、私の事を転生者と言ってました。そしてこの世界は夢の中の世界じゃないですよね?)
(・・・・・・そうよ。あなたは前の世界、初瀬野 要として死んでこの世界に転生して来たわ。)
(・・・・・・)
やっぱり分かってはいたが、改めて聞くと重い。
そして自分の事以上に気になる事がある。
(私が死んでその後、お父さんとお母さん、お兄ちゃんと妹はどうしています?)
(・・・・・・)
(あなたが死んだ後、暫くは塞ぎ込んでいたようだけどお兄様は結婚して今は子供がいますよ。妹様も大学なる所で勉学に励んでいるようですね。人間の幸せの判断基準は分かりませんが今現在、お父様もお母様も孫を抱いて笑っているので幸せだと思います。)
(そうですか・・・アズラエル様、ありがとうございます。それが聞けて安心しました。)
(お父さん、お母さん・・・20年間ありがとうございました。親不孝な娘でごめんなさい・・・願わくばお父さんとお母さんのこれからの人生が幸せでありますように・・・)
そう願った。
今の私に私の幸せを願う家族がいる、人達がいる。そして私はこの世界にいる。この世界で生きている限り、私は精一杯頑張って幸せになる。それが私の『決定事項』だから。
(アズラエル様、以前アズラエル様が言っていた事なんですが・・・)
(セレンちゃん、何?)
(アズラエル様の偉い人でしたっけ?その方からの依頼の事なんですが・・・1回お会いした方が良いと思いまして。私の他にいる転生者というのも気になります。正直、あまりに情報が足りません。)
(・・・・・・正直、忘れていると思っていたわ。)
(なっ!?)
(あ、ごめんごめん!でも目的が同じだし、いずれにせよ必ず会う事になるから焦らなくても大丈夫よ。それに転生者は1度あっているわ。まぁ、今は気にしなくて良いわ。)
(はい、わかりました。)
1度会っている転生者というのに心当たりがあった。
(やはりあの時か・・・)
アズラエル様との会話をし今まで聞けなかったモヤモヤが晴れた。そして、トラピスト王国を出たのだろう、依頼した馬車の行商人が私の入った箱を叩いてきた。
『ゴン、ゴン!』
『ゴン、ゴン!』
私も中から箱を叩き自分の存在を伝える。
そうしたら箱の蓋を開けようとガタガタしている。そして私は・・・こう思った。
(プーオン ザ ターフー!!)
こうして箱は開き私は外に出れた。




