別れ「参りました!」
「今日は一人対複数人の時の戦い方をやりまーす!」
「では、3人で同時にゆっくり私に攻撃して下さい!」
『カッ!』『ガン!』『ゴッ!』
「イタッ!」
「2つまでは防御出来ますが3つ目は私でも防御出来ません!今、私、涙目です!」
「なぜ2つしか守れないかというと腕は2本しか無いからです!」
「ではどうすると良いかと言いますと、逃げて複数人を一列にすれば良いのです!一列なら1対1での戦闘になります。そして攻撃はほぼ一撃で倒すのが理想です。」
「逃げるのが卑怯かと言うとそうでもなく一人に対して他人数で来るのが卑怯です!」
「ただ、戦争であった場合はその限りでは無く相手1人に対して
複数人で挑みましょう。そして同時に攻撃しましょう。戦争は生き残る事に意義があります。戦闘の時の連携は『ドン、ドン、ドン、ドン』ではなく一斉攻撃・・・即ち『ドーーーーン!!』です!」
「・・・なるほど・・・確かに。」
「それでは『ドン、ドン、ドン、ドン!』の攻撃と『ドーーーーン!』の攻撃を私にしてみて下さい。本気で構いません!でも軽く反撃します!」
「やってみたい方挙手お願いしまーす!」
そう言うと一斉に30人位手が上がった。
「ワー イッパイダー!」
「では、手を上げた方順番に連続で『ドン、ドン、ドン、ドン』の攻撃を行って下さい!はい、スタート!!」
そう言うと1人ずつ素早く攻撃を仕掛けてくる!私は素早く捌いて軽く致命傷になる部分に練習用の剣を当てていく。
『コツン!』『カツン!』『コン!』・・・
当てた騎士様は攻撃の流れから外れていく。そして最後の騎士様の体に剣を軽く当てて終了となった。
騎士様は意気消沈していた。
「次はタイミング合わせた『ドーーーーン!』の攻撃をしましょう。先程の手を挙げなかった方30名集まって下さーい!」
「5名1チームになって同じタイミングで攻撃して下さい!6ヶ所に散って私が近付いたら攻撃してみて下さい!はい、スタート!」
最初に5名のパーティーから攻撃を受ける!同時なので捌き切れない!右に後退したら別のパーティーからの同時攻撃!やはり捌けない!斜め上に飛んて逃げる!着地したら違うパーティーが待ち構えていた。一斉に攻撃を受け腕と肩に攻撃を受けた!
「くぅ・・・」
練習用の武器ではあるが叩かれると痛い。とにかく逃げた。攻撃を体に受け、痣が出来る。
(騎士様達には知ってて欲しい事、私は強いけど最強では無いと。騎士様達が自信を失っていたのも知っていた。私には何もしてやれなかった。だから・・・今しかない。)
練習を続ければ続けるほどどんどん痣が増えていく。でも倒れない。躱し続ける。ボロボロになっても自分で治せるから。
『ガツ!』
「あう!」
背中に攻撃を受けた・・・。
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近くで見ていた騎士がオスミウム卿に話し掛けた。
「オスミウム卿、なぜセレン様は攻撃しないのでしょうか?」
「見て分からないか?あれは攻撃出来ないんだ。」
「あれほど分かりやすい強者の倒し方はあるまい。先程、腕に覚えのある騎士30数名を無傷で捌いたらしいな?だが今はどうだ?おそらくセレンは今、全力だぞ?」
「・・・30名全く無傷で逆にセレン様が攻撃を受けています。」
「あれはセレンがわざとそうなる様にしているんだ。自分の身を傷付けてまで何を教えたいか考えるんだな。」
・・・・・・
『バチッ!』
「ううっ!」
私は脇腹に攻撃を受け崩れ落ちてしまった。
(もう無理、動けない。)
「そこまでだ!」
お父さまが言って私の行なった訓練を止めた。
「おおぉぉぉー!」
騎士様はどよめいていた。私が手も足も出せず倒れた事に。
全身が痛い。体に全身に治癒魔法を掛ける。淡い光が全身を覆い光が消えると同時に痛みも消えた。
「お父さま、ありがとうございます。」
「なぜ途中で回復させない?」
お父さまが聞いてきたので正直に答えた。
「お父さま、あのような状況では治癒魔法は無理です。」
「ふむっ・・・そうか・・・セレン、程々にしておけ。」
そう言うと離れた所で新人の騎士様の訓練を再開した。周りを見ると国王陛下やモルガナイト皇太子様、聖騎士ファルマ様、テルル姉さま、ローゼライト姫が見ていた。
まぁ気にする程では無いのだが・・・
「わたしの負けです。参りました!」
そう言うと騎士様達は・・・
「よっしゃ!!」
っとガッツポーズをしていた。
その後しばらく団体戦の理論を話して終わりになった。
私は訓練が終わったのでいつものようにテルル姉さまの医務室に走っていく。
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セレンが医務室に入った所を見計らってオスミウム卿が騎士全員を集めた。
「セレンは今日で終わりになる。今日セレンの訓練を受けた者、見た者は何を感じた?あれは強い者を倒す為の訓練だろう。戦場では常に優位に立たなければならない。それが出来なければ死んでしまう。騎士が最もやってはならないのは死ぬ事だ!死んで主を守れない事だ!名誉ある死など無い!今日の訓練は切っ掛けだ!死なない為にどう戦うか考えるんだ!以上!!」
「「「「「「「「「はい!!!」」」」」」」」」
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帰る時間なのでテルル姉さまの騎乗でシガラキに乗り込んだ。
私がここに来るのもほとんど無くなるのを思うと感慨深くなる。
「じゃあ行くわよ。」
テルル姉さまがフシミに指示を出す時に騎士様達が走って来た。しかも騎士の正装を着ていた。
きちんと幾何学模様の配置について私の方を向いた。
幾何学模様の先頭の人が・・・
「セレン様に敬礼!!」
そう言うと騎士様が一斉に敬礼した。そのサプライズに涙が溢れる。私はクルタ兄さまの背中に顔を押し付け泣いて震えてしまった。テルル姉さまが
「じゃあ、行くわよ。」
っと言いゆっくり上昇していく。
眼下では解散して幾何学模様は乱れたが騎士様達は手を振ってくれた。
「セレンちゃんまた来いよ~」
「嬢ちゃんまたな~」
「お菓子用意しておくからな~」
など聞えて来た。それに私は手を振って答えた。




