別れ「呪い」
私は家に帰ってから直ぐにメイド服に着替えて給仕のエシレさんの所に行った。
「今日もよろしくお願いします!」
「あぁ、今日も来たんだね、セレンちゃん。あんたも大変だねぇ、城の騎士の相手もしてるんだってね?こっちは気にしなくて良いんだよ?」
「いやぁ自分の為の勉強ですから!少しでも時間があったら屋敷の仕事に時間を割きたいんです。」
「セレンちゃんは真面目だねぇ。んじゃあ茹でたジャガイモの皮むきをお願いするよ。茹で立てで熱いから気をつけてね。」
「それが終わったらマッシャーで潰して刻んだハムと合わせて塩コショーで味付け。この作業を熱いうちにするんだよ。」
「終わったら言って頂戴。味見るから。」
「はい!」
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
『カチャカチャ・・・』
夕食後、使った食器を洗った。ただ背の高さが足りないので踏み台に乗って。
「セレンお嬢様、後は私がやりますから。」
マリサ姉ちゃんが代わって食器を洗う。
「じゃあ、私は拭いて食器棚にしまうね。」
「最後までやらせて下さい。」
「お嬢様がそう言うのでしたら・・・」
「・・・・・・」
「セレンお嬢様、もう少しで居なくなってしまうんですよね。」
「後一週間位かな。」
「「・・・・・・」」
マリサ姉ちゃんと話しはするが会話が続かない。しばらくの沈黙の後マリサ姉ちゃんが胸の内を語った。
「孤児だった私がこの国の孤児院で支援を受けて、学校を出て18歳で初めてこの屋敷に来た時、お嬢様は4歳だったんですよ。お嬢様の担当になって横暴で我儘な子供だったらどうしようとか、失敗したらどうしようとか心配だったんです。」
「そして初めて会った時、『よろしくおねがいします。』と言ったんですよ。とても礼儀正しくてお人形さんのようで可愛くて優しそうで・・・だから大丈夫だと思いました。」
「その後も私達メイドや使用人に信じられない位気を使って頂いて・・・本当は私達が気を使わないといけないのに・・・そんな優しいお嬢様がなんでこんな目に遭うのか私は我慢出来ません。」
マリサ姉ちゃんの目が赤くなっていた。瞳に涙を浮かべていた。
「・・・・・・」
「私、意外と悲観してないんですよね!国外に出るのってなかなかないし!家族と離れ離れになるのは寂しくなるけど死ぬ訳じゃないから!だからマリサ姉ちゃん、私は大丈夫だよ!」
「・・・・・・」
私は笑顔で話した。私も目に涙が浮かぶ。
「マリサ姉ちゃんにお願いがあるんだけど良いかな?」
「はい、お嬢様。何なりと。」
「私が帰って来た時にすぐに寝られるようにしておいてほしいな!それとその時にチョコレートパフェが食べたいの!」
「そして・・・マリサ姉ちゃんの子供の顔が見たいの~・・・ダメかな?」
マリサ姉ちゃんは今24歳のはず。このままだと結婚適齢期を過ぎてしまう。マリサ姉ちゃんには幸せになって欲しい。そんな事を思っていた。
そんな事を思っていたらマリサ姉ちゃんは赤い目をしてジトっと見た。
「お嬢様・・・ませ過ぎですよ。私に相手居ないの知っているじゃないですか?」
「フフン~♪私に隠し事はダメダメですよ。騎士長のランドさんと良い感じなの知ってますよ!」
「!?」
「お・・・お嬢様・・・いつから知っていたんですか?」
「秘密~♪」
「もうお嬢様ったら!誰にも言わないで下さいね!・・・でも、子供はお嬢様みたいな優しい女の子が欲しいです。」
「あ、止めておいた方が良いよ!波乱万丈な人生になるから!」
「そうですね、止めておきます!」
「「あははは・・・!!」」
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その夜、三姉妹の女神様に呼ばれてピクニックしていたユグドラシルの樹の根本の泉の側に来た。来たというより戦女神スクルド様の連れられてだが。そこには女神ウルズ様と女神ヴェルダンディ様が待っていた。
「「「・・・・・・」」」
真剣な顔の長女の女神ウルズ様が最初に話した。
「セレンさん、あなたに渡したいものがあります。あなたは私達、神の力の一端に触れています。もし、あなたが本当の闇に飲み込まれあなたの心が私利私欲にまみれた時、私達はあなたを止めるべく殺さなければなりません。」
「なので〜セレンちゃんに〜魔法をかけるの〜。それでいつでも〜私達はあなたを〜見ているようにするの〜。」
次女の女神ヴェルダンディ様は相変わらず舌足らずな喋りではあるが顔がとても悲しそう・・・
続けて三女の女神スクルド様が辛そうな顔をして言った。
「昔、私達のせいで多くの人が死ぬ事になった。そして、その責任を取るべく力を使った。」
「セレン、これだけは覚えておいてほしい。お姉様も言ったがおまえは神の力の一端に触れた。そして私達には責任が生まれた。私達にその責任を取らせないでほしい。」
女神ウルズ様が話す。
「この事はアズラエル様と話して承諾は得ています。」
私は後ろを振り向いて女神アズラエル様を見た。
「セレンちゃん、あなたは大丈夫でしょ?そこの心配している三姉妹を安心させてやりなさい。もし、何かあったら私が死の世界に連れて行ってあげるから。」
「ですよねー!」
アズラエル様は死の気配を漂わせ話す。久々の半端ない威圧感。私は努めて明るく返事した。
私はウルズ様、ヴェルダンディ様、スクルド様の前に跪き・・・右手を差し出した。
「その魔法、お受けします。」
ザワっとしたのですぐに手を引っ込めた。
「「「「えっ!?」」」」
ある事を思った。そして、恐る恐る確認してみた。
「魔法を受けて・・・魔力の許容量オーバーで大爆発とかってないですよね?」
「「「ないから!!」」」
ウルズ様、ヴェルダンディ様、スクルド様は完全に話しの腰を折られ毒気を抜かれた様になった。アズラエル様は後ろでお腹を押さえ声を押し殺して笑っていた。
「クックック・・・あなたって本当に残念な子ね・・・クク・・・」
「昔、残念美人と呼ばれてました!」
「改めて、その魔法、お受けいたしますわ!」
三姉妹の女神様は微笑んでいた。そして穏やかな空気の中、差し出した右手から魔法を受け取った。ある意味、『呪い』と言っても差し支えない魔法。でも、私には心の御守りのようなものだ。




