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別れ「童話」

「気を付けて下さいね。少しずつ強くなれば良いですから。」


「はい、ありがとうございます!!」


騎士は怪我の治療を終え医務室から出て訓練に戻った。


「っで、最近ここに入り浸ってない?」


「うん、大丈夫!どこにいてもつまらなくてさぁ。それにテルル様も私が居た方が良いんじゃない?話し相手が居ると良いでしょ?」


「何が大丈夫なんだか・・・まぁ・・・話し相手が居た方が良いのは認めるけど・・・一国のお姫様がここにでニートしているのが問題。」


「その一国のお姫様に向かってニートだなんて・・・あなた、肝が据わってますわね!」


「いえいえ、ローゼライト姫程ではありませんことよ!」


「「ぷ・・はははは・・・」」


救護係で助手になったパンタさんは二人の会話を黙って聞いて顔を青くしていた。

ウエストフレテレン侯爵領の巨大火球が目の前で談笑しているテルルお姉さまが作ったものでその気になれば国を火の海に出来る人と前もってローゼライト姫から教わっていた。


--------


外の中庭ではお父さまが騎士様達と剣を振るう。クルタお兄さまは戦術についての座学を若い騎士を相手におこなっていた。私もその中に混じって騎士様達を相手に剣を振るう。ただ、以前のような悲壮感は無い。騎士様の強化目的であってお父さまのたってのお願いだったので。

騎士様達は私が居なくなる事を知っていた。だから、少しでも私と手合わせ願いたいと殺到する訳だが・・・・・・

騎士様曰く『セレン様の場合、相手からの攻撃の対処の方法とそれによっての足の運び、武器の違いによる戦術の切り替えを勉強している』そうだ。

思い返せば日によって手合わせする相手の武器に偏りがあった。そして、大勢に見られていた。槍のランス時があればレイピアの時もあった。だからこそ、私なりの対応の仕方を話した。私自身がその武器を使ってみたりもした。女の子が大人の筋骨隆々な男に教えるのは異様な光景ではあったが皆真摯に聞いてくれた。そして、戦い方における法則性を理解してもらえたと思う。その全ては戦女神スクルド様の教えなのだ。


「相手が攻撃に入るタイミングが分かると自分の対応もし易いです。攻撃のタイミングの時だけ注意すれば良いので、また逆に最も防御が出来ないタイミングに攻撃すれば良いのです。そのタイミングは・・・」


・・・・


・・・・・・


・・・・・・・・


「セレン、今日はその位にしておけ。」


「あ、はい、お父さま。」

「それでは明日は一対多の対応の仕方をしましょう。」

「お父さま、医務室に行ってまいります。」


私は練習用の剣を騎士に預けテルル姉さまの所に走った。


「あっ!いたっ!」


段差に足を取られ転んでしまった。


--------


転んだ女の子を微笑ましく見ながら騎士の1人がオスミウム卿に訊ねた。


「オスミウム卿、一つお聞きしたい事があります。」


「なんだ?」


「ロシュフォール侯爵家ではどのような教育をなさってたのですか?セレン様の事が気になりまして・・・なんと言いますか・・・とても説明が分かり易く・・・さながら歴戦の騎士の講義の様でした。」


騎士からの質問にオスミウム卿は言葉を詰まらせた。


「・・・・・・」

「私は何もしていない。剣すら触らせなかった。初めて刃物を振るったのはカトラリーの銀器のナイフだ。それでワイバーンの首を落とした。」

「おそらく私と戦ったら私は負けるだろう。本当はセレンの攻撃には魔法が絡む。『一撃必殺』もしくは『二撃確殺』になる。」


「でしたらあの剣の腕は・・・」


「私はあの剣と魔法は神が直接教えたのだろうと思う。でなければ話しが合わない。これはセレン以外のロシュフォールの家の者の共通認識だ。」

「お前は『黒き剣聖』の話しは知っているか?」


「はい、子供の頃母によく読み聞かされていましたから。」


『黒き剣聖』この世界の童話で、突然現れた誰よりも強い剣の達人が、最初は皆に尊敬されていた。だが次第に驕り高ぶり多くの人を殺し国を乗っ取ろうとする。しかし最後には神の怒りに触れ殺されたと言う童話。『力があっても謙虚に生きなさい。』「悪い事をすると天罰が降る」という事を親が子供にする教訓のようなこの世界では誰でも知っているお話の一つだった。


「その童話、本当にあった話しでは無いかと思うのだ。共通点が多い。知っての通りセレンは家族思いだ。だからこそ・・・道を間違わないよう私達が導かないといけない。」

「そして『黒き剣聖』の童話の続編は不要だ。」


「・・・・・・」


--------


「テルル姉さま!騎士様の訓練終了しました!」


「あ、セレンお疲れ様。」


「セレンちゃんお疲れ〜。」


テルル姉さまの医務室に入り終了の報告をするのだがいつもローゼライト姫が居る。居座っていると言っても差し支えない。

ローゼライト姫はいつものように手をヒラヒラさせて挨拶する。


「こんにちは、ローゼライト姫。」


「はい、こんにちは。セレンちゃんアイスティーはいかが?」

「氷は自分で出してね!」


「あ、頂きます。」


そう言うとローゼライト姫は大きめなグラスに半分位濃いめの紅茶を淹れた。それを受け取り水を出現させ凍られた。


『カララン!』


空中に浮遊していた氷がグラスの中に落ち涼しい音を奏でる。

その過程をじっと見つめている。そして氷の事は諦めたようで騎士の事を問い掛けてきた。


「いつも見てるけど便利ね。一家に一台って感じね。簡単にやってるから私も出来ると錯覚してしまうけど、普通は出来ないから。騎士達はどうなの?」


「はい!騎士様方には大変良くして頂いてます!お菓子頂いたりとかお菓子頂いたり、それとお菓子頂いたりしてます!」


「セレン・・・あんた、お菓子で誘拐されるんじゃない?」


「あ〜無い無い、セレンちゃん誘拐しようものなら返り討ちにあって人生終わっちゃうわ!」


「それもそうね。」


テルル姉さまとローゼライト姫の微妙なディスりが入る。


「失礼な!そうなったら誘拐されてあげてか弱い女の子をきっちり演じて見せますわ!」


私は冗談をボケの冗談で返した。そしたらテルル姉さまのツッコミが速攻で入った。


「誘拐されてあげるってどんな状況よ!!」


「「「あははは・・・!」」」


そんな物騒なガールズトークを黙って聞いていた救護助手のパンタさんの顔色が良くなかった。




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