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別れ「料理」

「・・・とセレンちゃんが言ってましたわ。」


「・・・ふむ・・・確かに行った国に係わってしまう可能性があるな。そうなるとロシュフォール家とシメイ王家との間にしこりが出来るな。それにセレンの希望に沿わなくなってしまうよな。」

「セレンはそこまで考えて全寮制と言ったんだろ?」


「はい・・・」


夕食後、お父さまの執務室に呼ばれて部屋の中で話しをしていた。お母さまがお父さまの横に立ち、一緒に話しをした。朝にお母さまと話した内容をお父さまに話した。


「プラチナ、セレンの言う事は今現在では最善の策だろう。」「セレンはアルビオン国の全寮制学校に行け。そこが良いだろう。」


「アルビオン国ってトラピストから南西の方角の国ですね。」


「うむ、あそこなら情勢も安定してるし国の規模は小さいが身を隠すなら最適だろう。」


「はい、お父さまありがとうございます。」


一応希望は通った。お父さまとお母さまは沈痛な顔をしていた。やはり辛い事には変わりがない、それは私も一緒な訳で・・・申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


「・・・顔に傷跡が残ったな。ファルマの奴め、よくもうちの娘を。」


「仕方ないですよ、お父さま。命があっただけ良かったと思わないと。あはは・・・」


「・・・・・」

「セレン、何かしたい事はあるか?」


お父さまから急な申し出、もう少し早く言って欲しかった。しばらく考えて・・・行きたいところを言ってみた。


「もう一度お城に行ってみたいです。」


あの時も・・・試合した場所を見てみたい。騎士様と話しをしたい。おそらくはこの希望は叶わないと思いつつも言った。


「わかった。今日はもう寝なさい。」


「お父さま、お母さまおやすみなさい。」


私はお父さまの執務室を出て自分の部屋に戻る。

自分の事ながら今まで家族と離れてしまう事が身近に感じなくて、悲しい感情にならなかった。でも、それが現実味を帯びてきたら悲しく、そして寂しくなるもので・・・涙が頬を伝う。私はベットの中で泣いてしまった。


「ううぅぅぅ・・・」


部屋の外には誰かいた。泣いている声が聞こえてしまったのだろうか・・・。私の部屋のドアの前に確かに居たのだが入ることなく離れて行った。


--------


このままいつの間にか寝てしまったようだ。

気が付いたら朝になっていた。


「おはようございます。」


着替えてダイニングに行ったらクルタ兄さま、テルル姉さま、ハスト兄さま、ラウラ姉さまが右頬の傷跡を見て驚いていた。


「あはは・・・傷跡出来ちゃいました。お嫁にいけないですわ!あははは・・・」


「「「「・・・」」」」


誰一人話しかけることが出来ないだろうからこちらから話しの流れを変えないと・・・


「・・・・・・」

「マリサ姉ちゃん、お願いがあるんだけど・・・お料理を教えて欲しいんだけど・・・忙しくてダメかな?」


「セレンお嬢様、私共は大丈夫なのですが・・・そういった事は私どもがやりますが・・・」


「あ~いや~そうなんだけど~ここに居てもやる事が無くなっちゃって。」

「お母さま、お料理のお手伝いしても良いですか?」


ダイニングテーブルの椅子に座って黙って聞いていたお母さまに聞いてみた。


「マリサ、セレンちゃんをよろしくお願いね。」


「はい、畏まりました。」


タイミング良くお父さまもダイニングに現れた。椅子に座り食事を始める為マルコじいちゃんに口を開いた。


「おはよう。マルコ、朝食を。」


「はい、旦那様」


--------


お昼前にマリサ姉ちゃんと合流してから屋敷の台所に向かう前にリネン室に向かった。

そこで、普段着だと汚れるだろうからと小さいメイド服を着てからマリサ姉ちゃんの後をついて回った。

台所には給仕のエシレさんが居る。エシレさんと私、マリサ姉ちゃんと他のメイドの姉ちゃんとでランチを作った。最初は端っこで見てるだけだったが、エシレさんが私に話しかけて来た。


「セレンちゃんが料理をしたいだなんて意外だね~。ヘアピンありがとうね~大事に使わせてもらうよ!んじゃあ、セレンちゃんにはこの豆の鞘の筋取って頂戴。こうすると取れるだろ。」


「おおっ!」


エシレさんは長年ロシュフォール家で自給に携わっている女性でおばちゃんと言うにはまだ若い感じの人。年上で喋口調も性格もサバサバした感だから皆の相談事の聞き役で、屋敷で働く人たちの影の中心人物みたいな人だった。さらに屋敷の人の胃袋をガッチリ鷲掴みしてたから頭が上がらない人は多数いた。


「エシレさん終わりました!」


「終わったかい。んじゃあこっちでソースで使う玉葱切っておくれ!」


「はい!」


エシレさんは容赦なかった。でも、私にとってはそれが良かったりする。スクルド様の特訓は容赦が無かっただけに、気を使われるとかえって私も気を使ってしまう。


「セレンちゃん、あんたも大変だったねー。可愛いほっぺに傷跡こさえてさ。この屋敷に居る間はずっとここに来るのかい?来るんだったらやってもらう事用意しておくよ?」


「エシレさん、よろしくお願いします。」


「よし、決まり!」


こうしてしばらくは何も考えなくて良くなりそうだ。この屋敷を出て行くその日まで。






あんまり大げさにならないようにして書いてます。物足りないかもしれませんね。

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