もう1つの転生「ホワイト&ブラック」
「辰巳くん・・・」
「辰巳くん・・・」
誰かが俺を呼んでいる・・・
睡眠から覚めたような感覚がする。そしてゆっくりと目を開ける。
周りはどこまでも白い空間で先が見えない。
俺の目の前には老人と青年の2人が立っている。
老人は真っ白の髪でいかにも「仙人」のようだ。青年は感情の無い様な顔で執事のような服を着ている。
「辰巳 樹くんだね?先ほどの行動は見事だったよ。最後は残念な結果ではあったが・・・儂の見立ては間違っていなかったみたいだ。」
俺は左手を口に当て考える。
老人と青年は何者なのか?老人は『先ほどの行動・・・』と言う事は、あの惨劇を見ていたのであろうか?『見立て』とは以前から俺を見ていたのか?それにここはどこなのか?そして俺は確かに死んだ。あの時間違いなく火事に巻き込まれてこの身を焦がした。
溢れる疑問を聞こうと思っていたら老人は口を開いた。
「こっちの男はホムンクルスで名前は『ファウスト』。儂には名前が無い。名前を付けてくれる者がおらんでな。皆は『御方様』と言っとるな。」
ファウストと言う名前の青年は頭を下げる。
老人は話しを続ける。
「さて・・・疑問に答えていくか。先ほど火災は儂は無関係じゃ。人の営みには関与せん。君の事は以前から見ていた。そして解っているだろうが君は死んでいる。解りやすく言うと今の君は魂だけの状態じゃ。」
老人が話しをしている時、ファウストと言う青年はスマホらしき物で電話をしていた。
そして、老人に小声で電話が来た事と内容を伝え電話を渡した。
老人はため息をつくと俺に一言謝り電話をした。
「アズラエルか?あの異世界の細菌で死んだイレギュラーの娘の事だろう?異世界の情報で何かか進展は?」
老人の電話は俺と話していた口調では話さない。
この老人は一体何者なのだろう?ただ、俺はこの老人には太刀打ち出来ない。それははっきり理解出来る。老人の話してた『アズラエル』と言う単語はたしか大天使の一人のはず。だから老人は神様なんだろう。それも上位の大天使、しかし名前が無いと言ってた。
「この件に関してはお前に一任する。アズラエルはその娘を保護してやってくれ。頼んだよ。」
神様であろう老人は電話を切り、俺に話しを戻した。
「おまたせ、儂からお願いがあるんじゃが、辰巳君に受けてもらえんかの?そんなに難しいものでは無い。調べて欲しいものがあるんじゃが。辰巳くんにとっては退屈しない事かもしれんよ。」
っと言い『ニヤッ』っと笑う
ずるい神様だ。生前、俺が酷く退屈していた事を知っての発言なんだろう。
そして先ほどの電話の内容とこれまでの経緯を勘案してある程度の予想が出来た。
「内容によります。」
俺はそれだけ伝えた。まぁ・・・口に出して言う事はないだろうが。心が読めるようだし。
おそらく異世界絡みの調査なんだろう。
神様らしき老人は内容を言わず・・・
「その通りじゃ。聡明な子じゃな・・・だったらこの姿で居る事もないか・・・」
そう言うと、老人の姿から若い青年の姿になった。
「すまない、この姿を主に使っている。」
「老人の姿の方が話しを聞いてくれそうだと思ってな。」
本当にずるい神様だ。嫌いではないけど。
俺は苦笑いするしかなかった。
青年の大天使様は言った。
「辰巳君には転生をしてもらうよ。そして私の力の半分を預ける。」
「異世界からの侵攻の調査と対応をお願いする。転生先で行動は自由。」
「それと辰巳君は1つ勘違いをしている・・・私は大天使ではない。辰巳君の言うところの天使と悪魔を作ったものだ。」
「だから私には名前が無い。作られた者が作った者に名前をつける事は無いからな。」
俺の答えは既に決まっていた。
(受けます。)
今の俺にとって『退屈しない』というのは何よりも魅力的な言葉だった。
心の中で受けた旨を伝えたら・・・青年は笑顔になり
「ありがとう、よろしく頼む。」
と言われ、周りの何もない白く広い景色が真っ暗に暗転した。
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どれ位眠っていただろう・・・気が付くと景色が一転していた。自分の身体を確認する。体が2まわり位小さい。頭の中に『名前のない青年』の声がする。
(早めに調査お願いしたく、死んだ子供に入ってもらったよ。もちろん体は健康体にしているから。)
(私の力の半分は君の守護霊という形で存在している。何かあったら問いかけてみるといい。)
(すまん、改めてよろしく頼む。)
俺は一言だけ言った。
「了解。」
要さんの方に戻りますー