テルルの気持ち「若い夫婦」
「お父さま、お兄さま行って参りました。」
「御苦労、してテルル嬢の方はどうだった?」
「私には無理です。ワイバーンの騎乗方法もずっと見ていましたが分かりませんでした。なにか秘密があるのでしょうが教えてくれそうにありません。友達にっと誘いましたが断られました。」
「・・・・・」
「ファルマ、一つ聞きたいのだけれど・・・」
「はい、なんなりと。」
「セレン嬢との最後の試合、ファルマが勝ったわよね?でも、テルル様は騎士の誇りを汚さないようにセレンが勝ちを譲ったと言ってたわ。本当の所はどうなの?」
「・・・テルル嬢の言う通りです。」
「本当は私はあの時死んでいました。腕を鎧ごと斬られ、セレン様がその気ならそのまま肩から斜めの斬られてました。鎧の材質は腕の部分も肩の部分も同じだったのですが肩の方はセレン様の剣が鎧に食い込んだだけですから・・・。そしてセレン様が剣のみで戦わないのであれば私などは一瞬で終わってい・・・」
「ありがとう、ファルマ。もういいわ。」
「・・・・・」
「お父さま、オスミウム卿の言う通り、セレン嬢を死んだという事にした方が良いと思いますわ。ロシュフォール侯爵家、侯爵領の人達はセレン嬢を守ろうとしています。それは力を囲いたいという訳では無く、家族の幸せを守ろうというだけのようですし。」
「ウエストフレテレン侯爵領で大きい火球が発生したのはご存知ですか、お兄さま?」
「あぁ、この話しは聞き及んでいる。今調査しているだろう。ローゼ、それが何か関係でも?」
「あの火球はテルル様が出したんです。そして私にこう言いましたわ。『妹を傷つけるなら自分一人でも戦う』っと。戦うとはこの国となんでしょうけど。」
「「「・・・・・・」」」
「・・・しかし・・・あの力が他の国に行くのは・・・」
「お父さま!!ロシュフォール侯爵家・・・セレン嬢に手を出そうものなら火傷ではすみませんよ!!あの火球を出したテルル様の力を囲えると思っただけで良しとしないと!もし、最悪ロシュフォール侯爵家が離反して内乱になったらセレン嬢も出て来るんですよ!!」
「「「・・・・・」」」
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ローゼライト姫を城に送った後、屋敷に戻ったのは昼過ぎだった。
その後フシミとシガラキは何かを食べる為に森に向かわせた。何を食べるかは興味がない訳で無いが詮索する事はしない。
「・・・疲れた。」
遅めの昼食を食べてから母、プラチナとセレンとで庭でお茶を楽しんでいた。
「テルル姉さま、朝から酷い怪我した人が10数名屋敷に尋ねてきましたよ?『テルル様に治して欲しい』っとか言ってました。あの一件で噂になったんだと思いますけど。一応、私が対応しましたけど見るにあたってとりあえず制限付けましたから。」
「やっぱり・・・そうなったわね・・・セレンごめんなさいね・・・制限って何?」
「医者には治せない傷を負って、医者には治せないという手紙を貰ってから来てくださいっと。後はテルル姉さまが考えて下さいね~。」
「わかったわ。」
「テルルちゃん、あんまり無理しちゃダメよ。」
「申し訳ありません、お母さま。」
お茶していると執事のマルコじいちゃんが来た。
「テルルお嬢様、昨日助けられたという女の人と子供、付き添い?の若い男性も来ています。」
「あぁ・・・あの人ね。マルコ、中にお通しして。ごめんなさい、お茶菓子貰っていきますわ。」
テルルはテーブルの上のクッキーやドライフルーツをレースのハンカチに包んで屋敷に戻った。
馬車に轢かれた若い女性と男の子、若い男性をゲストルームで面会した。ドアを開けてゲストルームに入った途端、テルルの前に若い女性と若い男性は跪いた。男の子はポカーンとしていたが若い男性に小声で叱られて同じ様に跪いた。
「あの時は命を救って頂きなんとお礼を言って良いのか・・・」
命を救った若い女性が焦って話した。男の子は物珍しそうに部屋の中をキョロキョロしている。テルルの顔を見た途端・・・
「あっ!あの時の姉ちゃんだ!!」
若い男性は顔面蒼白になって小声で
「バ、バカ!」
「テルル様、息子が失礼致しました!!」
「ぷ・・・くくく・・・あはははは・・・」
その様子を見てテルルは笑ってしまった。そして男の子を見て青くなっている若い女性に聞いてみる。
「お体の具合はいかがですか?こちらの男性は旦那さん?」
「はい、私の夫です!体はお陰様でなんともないです!」
「妻を治して頂きありがとうございました!!」
「仲が良いですね・・・良い事ですわ。」
目を細め微笑んでした。男の子の所に歩み寄り、両脇を掴み抱っこをした。
「坊や、叩いちゃってごめんなさいね。痛かったでしょ?お父さんとお母さんは好きかな?」
「うん、お姉ちゃんも好きだけどお父さんとお母さんはもっと大好きだぞ!!」
「そうなの?じゃあお父さんとお母さんに心配かけちゃダメだよ?」
「うん、わかった!!」
「これを持って帰ってお家で食べてね。」
そう言うとクッキーとドライフルーツを包んだレースのハンカチを男の子に渡した。
その後も和やかに話してから若い夫婦は帰っていった。
帰り際、男の子は・・・
「お姉ちゃんまたねーー!!」
手を大きく振っていたので優しい笑顔で振り返した。
(ああいった夫婦って理想よね・・・私もなれるかしら・・・)
時の人になっていたテルルのその姿を見ていた街の人達の噂話の種になる訳なのだ・・・




