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テルルの気持ち「治癒」

「それでは行きましょう。お父さま、クルタお兄さま。」


「じゃあ頼む。」


テルルは妹と弟の学校と父と兄の城への送り迎えをしている。城には書庫があるのでそれ目当てでもあるのだが・・・

(フシミ、シガラキお城にお願い。)

魔力に指示を込めてワイバーン2体を使って飛行した。

眼下で街の人が手を振っているので笑顔で手を振り返すのが日課になってしまった。

跨るのではなく、ワイバーンの体の片側に両足を揃えて座っているのだから・・・しかも深窓の令嬢のようないで立ちだから、街の男達はギャップ萌え全開だった。街の娘達には羨望の眼差しを向けられている。


「今日も書庫の本をお借りしたいですわ。」


「それは構わんが・・・テルル・・・お前・・・人気凄いな・・・」


「私もよくわかりませんわ。なぜこうなってしまったのか。」


--------


「それではお父さま、お兄さまいってらっしゃいませ。私は書庫に寄ったら失礼致しますわ。」


テルルは父と兄と別れた後、書庫に向かった。

向かう途中、城の中庭では・・・城の護衛の騎士が訓練をしていた。

(セレンが守った騎士の誇りのせいでセレンが・・・)

そう思い、顔が表情が渋くなる・・・


書庫に行ったら学者、魔法使いの中にローゼライト姫が居た。

(やっぱり今日も居た・・・)

そう思いつつ苦笑いしながら・・・


「おはようございます、ローゼライト姫。今日も本をお借りしたいのですが良いでしょうか?」


「テルル様、おはようございます。どれでも好きな本を貸しても良いですよ。埃を被っているのが多いですし、使っていただいた方が本も嬉しいでしょうから。今日はどのような本を探しているんですか?」


「今日も医学書ですわ。それと薬学の本も読んでみたいと思いまして。」


「本当に難しい本を読まれるんですね・・・。尊敬しますわ。」


「趣味みたいなものですから・・・ローゼライト姫も読みませんか?意外と面白いですよ?」


「・・・考えておきますわ!」

「そ・・・それより・・・テルル様が乗っている魔獣のワイバーンに乗せて頂けないかしら?私も常々乗ってみたいと思っていました。いかがかしら?」


「私は構いませんが父は国王陛下の許可が必要かと思います。私一存では決めかねますわ。それでは、本を探してもよろしいですか?」


「あ・・・はい、時間を取らせてごめんなさいね。」


「ローゼライト姫、それでは失礼致しますわ。」


テルルは医学書を選んで足早に城を後にした。

(書籍はあそこが一番なんだけれど・・・あんまり人とは会いたくないものね・・・ローゼライト姫は何を考えてるのかしら?)


屋敷に戻る時、眼下で人だかりが出来ていた。馬車が横倒しになっていて人だかりの中心には人が倒れていた。

(フシミ、あそこに降りて頂戴。)

フシミにお願いしてその人だかりの頭上に降りて・・・ワイバーンに気付いた人だかりの輪は大きくなりその輪の中に降りた。テルルは何かの事故だろうと察していた。だが、状況が見えないので人だかりの中の若い男に尋ねた。


「どうしたんですか?」


「あぁ、子供が馬車に轢かれそうなってその母親が突き飛ばして代わり轢かれたんだよ。かわいそうに・・・」


子供は倒れて動かなくなっている若い女性の横に座り泣いていた。

若い女性は跳ねられたという感じではなく馬に踏まれた感じで大怪我・・・このままだと死んでしまうだろう。腕も曲がらない方向に曲がっていた。文字通りボロボロだった。


「お母ちゃん、お母ちゃん・・・うわーーーーん!」


「・・・」

(セレン、こういう時はあなたは必ず救うよね・・・)

(やった事ないけど・・・やるしかないよね・・・やらないと私が後悔する。)


「坊や、ちょっとどきなさい。」


テルルはかすかに息をしている若い女性の横に座り、負傷箇所を確認し、読んだ医学書の記憶を辿った。

特に内臓が酷いみたいだ。テルルは女性の体に魔力を流し損傷している内臓の癒着と回復、切れた血管、リンパ節を繋げ、神経も繋いで正常になるように意識をして治癒を祈った。若い女性の体から淡い光が出ている。

周りのざわめきも耳に入らない位の集中した。繋がった事を魔力を通して確認出来たら正常か確かめ、正常に機能していたので筋肉の回復と折れた骨を繋げる。

テルルの目には若い女性しか見えていない。周りは静かで白い空間に居る錯覚を覚える。

筋肉と骨を回復させてから破れた皮膚を治した。

頭に魔力を通して異常が無いか確認する・・・とりあえず終わった。

若い女性の呼吸に力が戻ったみたいだ。後は目を覚ますのを祈って・・・そう思い深く息をする。


『ふぅぅぅぅぅ・・・・』

「坊や、こちらに来なさい。あなた、腕と膝の怪我しているわね、見せて。」


子供の腕と膝に手を当てて回復させる。子供は自分の傷の痛みが無くなった事に驚いていた。

真剣な眼差しでそして子供に質問した。


「どうしてこうなったの?」


子供はもじもじしながら・・・


「走って遊んでて道路に出たら馬車が来て・・・ぶつかりそうになった時にお母さんが・・・」


『バチン!!』


テルルは子供を叩いた。


「あなたの不注意でお母さんとお別れになる所だったのよ!!死んじゃう所だったのよ!!」


「ごめんなさい・・・ヒック!・・・ヒック!・・・」


子供は泣き出していた。若い女性が目を覚ましたようでむくっと起き上がり・・・


「いたたたた・・・」


「お母さん・・・ごめんなさいーー!!」


子供は泣きながらお母さんに抱き着いていた。


「「「「「「「「うおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」」


人だかりから歓声が上がりテルルは嬉しそうに細い目をして見ていた。

立ち上がるとテルルは酷い立ち眩みに襲われた。

(慣れない事はすべきじゃないわね。)

そう思いながらフシミとシガラキに帰るように指示を出しながら気を失った。








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