戦後処理「居て下さったからこそ」
「セレン、炎の魔法は慣れてきたわ。魔法の原理が全て同じだなんて。」
「・・・魔法の考え方の出発地点から違っていたなんて。もし、この事がみんなわかったら、国は乱れるわね・・・」
「テルル姉さま、1週間で魔法に慣れちゃいましたね・・・その理解力は羨ましいです。この秘密は家族の共有で構いません。みんな守ってくれると信じてますから。ところで・・・フシミとシガラキにアプローチしてみてはどうでしょう?」
「・・・咬まれたら治してね。」
「フシミとシガラキは咬みませんから。あと、感情はありますし泣くときは泣きます。意外でしょうけど。」
私はテルル姉さまが試す前にフシミとシガラキに魔力に指示を乗せて伝えた。
(私のお姉さまから指示を出すと思うからお願い、指示が理解できたなら顔を上げて教えてね。)
「ギギギ・・・グググ・・・」
「私はちょっと席を外します。フシミとシガラキは試しても大丈夫です。」
「・・・分かったわ。」
私はテルル姉さまの所から離れて馬屋に走った。馬に付ける手綱を取りに行った。
戻って来て・・・笑える光景があった。
「痛い、痛いって!!フシミ、シガラキやめて!痛いから!!」
ワイバーンは2体に挟まれて頬ずりされているテルル姉さま。面白い光景だ。私もそんな時がありました。
「テルル姉さま・・・あはははは・・・!!」
「セレン!助けて!!痛い!!」
「テルル姉さま、指示出しましょうよ!頬ずりやめてって。」
なんかハッとしたようでフシミとシガラキに指示を出したようだ。そうしたら頬ずりを止めた。テルル姉さまはジトっと私を見たが、気が付かない振りをして聞いてみた。
「なんて指示を出したんですか?」
「『仲良くしてね』っと指示を出したわ。そうしたら挟まれて頬ずりされたわ。っで『頬ずりやめて』っとお願いしたわ。」
「フシミとシガラキはもう大丈夫ですね。」
フシミとシガラキをこれでテルル姉さまはに託せる。嬉しい事なのだろうけど少し寂しい。
フシミの体に馬の手綱を身に付けさせて・・・
「テルル姉さまちょっと空中散歩でもどうぞ!」
「そうね・・・ちょっと行ってくるわ・・・」
「お気を付けて。」
そう言ってフシミに跨った。フシミの体を触り何かの指示を出したのだろう。ゆっくり飛び上がり屋敷の外に消えて行った。
屋敷の中からお母さまがこちらを見ている。後で思っている事を話しておこう。
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しばらくしてお姉さまが帰って来た。興奮しているようだ。
「空を自分の意のままに飛べるのって楽しいわね!!セレン、ありがとう!!」
そう言うとテルル姉さまはフシミの頬を撫でていた。もうワイバーンに対しての恐怖心はないようで・・・
「今日はもう終わりにしましょう。手綱は私が片付けます。」
「ふぅ・・・そうね。今日は疲れたわ。」
そう言うとテルル姉さまは屋敷の中に入っていった。私は手綱を片付けてからフシミとシガラキの元に戻った。私は魔力を込めて指示を伝えた。
(私の使う魔法を覚えて欲しい。探知探索の魔法を覚えて下さい。出来る?)
そう伝えたら頭を縦に振っていた。
「ググググ・・・」
私は探知探索の魔法を念じフシミとシガラキに使い方を魔力を送った。予想以上にフシミとシガラキは魔法を習得したっというよりコピーした感じか。魔物だから魔力には順応性があるのかもしれない。(もし誰か乗せたいる時、危険が迫ってたら事前に回避してね。)っとフシミとシガラキにお願いし、それが済んでから屋敷に入った。
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夕食時、テルル姉さまは自分でワイバーンに乗れるようになった事を伝えた。
「お父さま、私、セレンに教わり一人でフシミとシガラキに乗れるようになりました。」
「本当なのか?」
「はい、もしセレンが居なくなったらワイバーンも屋敷から居なくなると言ってましたから。屋敷で飼っているだけでロシュフォール領に攻め込まれる危険が少なくなると言いました。なので、私が引き継ぎました。」
「明日、城に行ってよろしいですか?書庫で調べたいものがありまして。」
「それは構わんが・・・」
「セレンの代わりに私が送り迎えしてもいいですよ?練習にもなりますし。いかがなさいます?」
「・・・頼む。」
「ふふっ。空の移動知ってたら今更馬車は嫌ですものね。」
「そうだな。」
テルル姉さまは少し意地悪く笑い、お父さまは苦笑いしてた。
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夕食の後、テルル姉さまの部屋のドアを叩く。
『コン、コン、コン」
「セレンです。」
「どうぞ。」
「失礼します。」
「セレンどうしたの?」
「フシミとシガラキの件ですが・・・指示を聴かなくなる時の事なんですが・・・」
「・・・そんな時があるの?」
「その時は危険が迫っている時なので、振り落とされないようにワイバーンの体にしがみついて下さい。」
「わかったわ。」
「城の書庫は魔法関連ですか?」
「わかっているくせに。そうよ、医学の本を調べてみようと思って。」
「伝説の聖女狙いですか!?流石です!」
「やめてよ!」
「「あははは・・・!」」
「それではおやすみなさい、テルル姉さま。」
「セレン!」
テルル姉さまは私に近づき後ろから抱きしめた。
「伝説の聖女はね、今、私の腕の中に居るのよ。私がそんなのなれる訳ないじゃない。あなたは私の自慢の妹よ。」
「ありがとうございます・・・って、もぉそんな事言わないでください。涙腺弱いんですから!」
テルル姉さまの部屋を後にし、お母さまの部屋に向かった。
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『コン、コン、コン』
「セレンです、失礼します。」
「どうぞ。」
「セレンちゃん、どうしたの?」
「あの、お母さま、見てらっしゃったと思いますが、今テルル姉さまに魔法を教えてます。家族内の秘密にして欲しいとお願いしました。テルル姉さまは理解力が凄くてコツを掴んだのでもう教える事はないです。」「私がここに居る間は残せるものは残そう、教えらせるものは教えようと思っています。お母さまもなにかございましたら・・・」
「セレンちゃん、私はちゃんとあなたのお母さんが出来てるかしら・・・。セレンちゃんなんでも一人で出来ていたから手を掛けてあげてない。セレンちゃんは今も家族の事、領地の事を考えて動いているわ。お母さんはセレンちゃんの事を考えても些細な事しか出来ない。それが今になってとても悔しいのよ。」
「お母さま、違います。私はお母さまの子供で幸せです。お母さまが居て下さったからこそ安心して過ごす事が出来ます。お母さまの存在こそが今の私の支えですしお母さまが居てくれないと私が困ります。」
「セレンちゃんありがとうね。」
「お母さま、おやすみなさい。」




