もう1つの転生「バーン」
昔からそうだった・・・
自分は大体の事は出来た。
勉強も・・・スポーツも・・・
周りは俺の事を
(天才)(努力家)
などと囃し立てるがそう言った努力はしたことが無い。
常に他の人が懸命に努力するのを横目に見てた。
土建屋の父と専業の母はいわゆる毒親というやつで、そんな俺に打算的な期待をしている。
ネグレクトの両親に言わせると『手(お金)がかからない親孝行な息子』だそうだ。
心に燃えるもの、目標、一生懸命になれるものが無い俺は次第に無気力になり・・・次第に心も・・・
摩耗していった。
周りから見れば羨ましいと思うだろう。
しかし俺は・・・早く自分の命が尽きればいいのにっと思うようになった。
退屈すぎて自分の周りの景色が色褪せて見える。
学校と図書館と家の往復で日々が過ぎる。
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最近、自分を見る視線を感じる。
しかし、人の気配では無いような気もする。その感じた目線の先には何もなかったりただの空間で隠れるような遮蔽物が無かったり。まぁ・・・襲われる事もないようなので気にもしてない。
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ある日の深夜、家の近くの古い孤児院で火災があった。なんとなく気になった俺は見に行ってみた。
最近、放火が立て続いている。町ぐるみで見張りや巡回していたが、嘲笑うかの様に放火されたようだ。
古いだけに火の回りが早い。間一髪逃げ出せた若い女性の先生が叫んでいた。
「3階に子供がいます!!早く消防車を呼んで下さい!!!」
野次馬の何人かはスマホで消防車を呼んでいる。おそらくは間に合わないだろう。
なぜかこの惨劇に遭遇して自分の家に走っていた。景色が鮮明に見える。
子供を助けたい。
家に戻り、服を何枚も重ね着して、父の仕事で使う自動車の鍵、大きいハンマーと厚手の布団、仕事用の大きいワゴン車に積み込もうとした。背後から激怒した父が怒鳴り声をあげて問い詰めててくる。
「てめぇ、なにしてんだ!!」
やはり外がうるさいから起きていたようだ。
嘘言っても意味ないので正直に質問に答える。
「孤児院の子供を助ける。」
「ふざけたこといってんじゃねぇ!!おめぇは俺の金づるなんだよ!!勝手に死なれちゃ困るんだよ!!!」
「孤児院のガキなんざ死んだって誰も困らな・・・」
ガツッ!!
父を言い終わる前に殴って気絶させてしまった。父はいつも通りの毒親だったようだ。親を殴った事に後悔は無い。母は後ろで茫然としてる。
大きいワゴン車に乗り込み孤児院を目指す。
俺は15歳なのに運転している所を見て覚えてしまっている。
オートマ車だからアクセル踏むだけで前に進むのも考えものだ。
孤児院には野次馬が増えている。クラクションを鳴らし野次馬の中を進む。
消防車は到着していない。
先ほどの女性の先生が泣き叫んでいる。
「誰か子供たちを助けて!!!」
俺は女性の先生の横に車を止めて冷静に聞いた。
「子供はどの部屋にいるの?非常階段はどのあたり?」
女性の先生は目に涙を溜め、3階の1つの部屋を指差した。
「あそこの部屋・・・」
「非常階段は?子供は何人?」
矢継ぎ早に質問したら男の年配の先生が質問に答えてくれた。
「階段はあそこ!子供は8人!!」
それを確認して子供の部屋の真下の壁に大きいワゴン車をぶつけて止める。
布団をワゴン車の屋根に乗せ、大きいハンマーを手に取り、非常階段を駆け上がる。
不謹慎かもしれないが生きてる実感がする。今まで経験した事が無い感覚。
3階の非常階段の扉をハンマーでたたき破り中に入る。
各所で火が回りはじめ、煙が凄い。
おそらく自分は笑っていたであろう。俺も酷い人間だと思う。
火の回りが予想以上に速い。煙も凄い。身を低くして進むがさすがに熱い、皮膚の出ている部分は火傷しているようだ。呼吸の度に喉が焼ける。
子供がいるであろう部屋について中に入る。中に入ったら子供が泣いていた。4、5歳位の子供もいれば7、8歳位の子供もいる。小さい子供が泣いていたのを上の歳の子が勇気付けていたようだ。
俺が中に入ったら勇気付けていた子供も驚いて泣いてしまった。8人居ることを確認する。
目線を子供と同じにしてギュッと抱きしめる。
「頑張ったな!怖かったよな。後はお兄ちゃんに任せろ!」
ずっとこうしてもいられない。立ち上がり大きいワゴン車の真上だろう箇所の壁を全力でハンマーで破壊する。
ゴンッ!、ゴンッ!、ゴンッ!、ゴンッ!、ゴンッ!
壁には確実に穴が開いている。子供が通れる穴が出来たら1人ずつ脱出させる。子供の両腕を掴んで身を乗り出して大きなワゴン車の上に落とす。外で見ていた野次馬の中には俺のやっている救助を見て、子供が怪我しないようにと動く人もいるようだ。
最後の子供の時は部屋の中に炎が入ってきてて背中がとても熱い。最後の1人を部屋から脱出し終わった瞬間、古い建物が・・・
崩壊した。
炎は俺を見逃してくれなかったみたいだ。体が動かない。
(まぁ・・・このままだったら8人の命が失われたはずだが、1つ命を賭けて8つの命が救えた。なんと割の良いサービスゲームか。)
そんな事を想いながら・・・
意識を閉ざした・・・
二つの物語を交差させていければと思っています。