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入学試験「武門ロシュフォール家の者なら」

舞台に上がったら次の騎士様も上がって来た。今から戦う騎士様も仲良くさせて頂いた騎士様。スラっとした格好いい細身のレイピアを使う騎士様だった。仲良くさせて頂いた騎士様と剣を交えるのが苦痛・・・心を閉じて・・・戦う・・・始める前に一言も声を掛けて欲しくなかった。騎士様方は決して悪気が無いのを知っているからそれは言えない。

一言声を掛けられるとその度に閉じた心を開かれてしまう。心が摩耗していくのが分かる。泣きたい・・・でも泣かない・・・泣いたら失礼になってしまう・・・これが終わったら思いっきり泣こう。


レイピアを使う騎士様は笑顔で話しかけた。

「ほんとに強いね!でも俺も強いから注意してね!」


「はい、よろしくお願いします。」

(お願い、話しかけないで・・・)


そして、『始め!』の掛け声がかかった。距離を取り間合いを取る。レイピアは軽い細身の剣だから刺突がメインの武器。距離を少しづつ詰め、わざとレイピアの間合いギリギリの所を守る。

少しの沈黙の後、騎士様が一気に間合いを詰め刺突してきた。『ヒュ!!』っと音を立てて剣の先が肩に迫る!攻撃を剣で受け、いなして自分の体がレイピアで傷つかないよう剣で抑え飛び出して騎士様と体を密着させた。

騎士様は間合いを取るべく離れようと後ろに下がったが、それに合わせて密着状態にして前に駆けた。すぐに舞台の端に追い込み舞台から落とすべくドンと押した。


「うわっ!!」


場外に落とした騎士様に私も後から下りて・・・


「ごめんなさい。」


一言謝ってから舞台に戻った。


ヘリオドール国王と五大侯爵家の当主様方とお父さまはずっと私の方を見ていた。すぐに終わるとは思っていなかったと思う。ただ、あっという間に選抜の騎士様方を降参させたので凝視していた。騎士様の中には侯爵家の護衛の騎士様もいらっしゃる。今回の試合でその護衛の騎士様もいるのだろう。その後も辛い試合を続けた・・・・。


・・・・


・・・・・・


・・・・・・・・


「セレンお嬢様、申し訳ありません。次は私です・・・」


「・・・・・・」

「ランドさん・・・遠慮なくお願いします。」

(泣きそうだ・・・きつい・・・無表情を通してきた顔が歪む・・・)


ロシュフォール侯爵家のお抱えの騎士様が舞台に上がった

小さい頃からお世話になっていた騎士様だった。小さい頃、抱っこしてもらったり遊んでもらったり・・・記憶が蘇る・・・

そして・・・『始め!』の声が掛かった。

バスタードソードを使う騎士で、真面目で常に体を鍛え、剣の技術をストイックに磨いていた事をいつも見ていた。

ランドさんは一言・・・


「行きます。」


そう言うと両手でバスタードソード持ち左からの袈裟斬りを放つ!その鋭い剣筋は斬撃を飛ばし、バックステップで躱したが飛ぶ斬撃が私を捉える。すぐにランドさんは大きく踏み込み、右からの斜めに鋭く切上げる。鋭く重い切上げを剣で受けつつバックステップで衝撃を受け流した。態勢を立て直し前をみたら両手で持っていたバスタードソードを片手で持ち刺突の構えをしていた。片手に持った事で間合いが大きくなり私はランドさんの射程に入っていた。


「セレンお嬢様申し訳ありません。」


「くっ!」


大きい間合いからの喉元を狙った鋭い刺突を、体を後ろに反らせバク転しながら バスタードソードを持った手を蹴り上げた。


「!?」


バスタードソードは真上に弾かれランドさんは無手になったが、私の両足が舞台に付いた瞬間に飛び出し私の手にある剣を薙ぎ斬りで振りぬいた。

ランドさんはしっかりとした鎧で守られているので切れはしないかったが剣から鎧を通して伝わる衝撃を受けその場に崩れ落ちた。

初めて人を傷つけた。それも本当に幼かった頃からお世話になった人を・・・

私を愛してくれている人を・・・傷つけた・・・

私の精神はボロボロだった・・・

首を何度も左右にふり・・・一筋涙が流れた・・・


「いや・・・いや・・・いや・・いや・・いや・・」


叫び声を上げようとした時・・・


「セレン!!!!!!!!!!!!」


お父さまが叫んだ、今まで聞いたことの無いくらい大きな声で!!

私はお父さまを見た。お父さまは話しを続けた。


「セレン!!!!ここで投げ出す事は許さん!!!!泣くなら全部終わってから泣け!!!!」

「武門ロシュフォール家の者なら逃げるな!!!


「はい・・・お父さま・・・」


私は涙を拭い剣を見た。


「ランド!!!いつまでそこで寝てるんだ!!このまま醜態を晒すのは許さん!!!立て!!ランド!!」


「はい、ご主人様。」


お父さまは私の心中を察したからこその叱責だった。辛いのはお父さまもお母さまも一緒のはず。

ランドさんはヨロヨロっと立ち上がり・・・


「参りました。」


っと言い舞台を下りて人混みの中に消え、その後を救護の魔法使いが数人追いかけて行った。


「セレン嬢、試合は出来るか?」


モルガナイト皇太子は継続出来るか確認してきた。


「はい、お願いします。」


目を瞑り深呼吸してコンセントレーションを高めた。

すり減った心をもう一度立たせて・・・



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