入学試験「舞台」
二人目の騎士様が舞台に上ってきた。先ほどの騎士様より少し年を取っている感じか・・・
「実力は本物なんだね。遠慮なしで行くよ。気が乗らないけどそうも言ってられないから。」
穏やかそうな感じではあるが真面目な感じの方みたいで・・・
『始め!』の掛け声で後ろに騎士様は下がり間合いを取り出方をうかがっていた。
私からスタスタ歩み寄り騎士様の間合いに入った。入ってもスタスタ歩くものだから騎士様は焦り、状況に耐えられなくなり剣を振り上げ私の頭に剣をふりおろした。
私は腰を落とし剣が頭に当たるよりも早く懐に入り足を取りレスリングのタックルのように押し倒した。そのままマウントポジションになり私の剣の先を騎士様の喉元に添えた。
「!?」
「参った。君は強いな、何も出来なかったよ。」
っと言い、私が上からどいた後騎士様も立ち上がった。
「ありがとうございました。」
騎士様は片腕を上げて・・・
「頑張りなよ。」
と言い舞台から下りた。下りた横から3人目の騎士様が上がった。その方は教会騎士様で剣先を下にして何も言わず目を閉じ祈っていた。信仰している神様への報告と謝罪なのだろうか。
『始め!』の掛け声で目を見開き一瞬で間合いを詰め『ヤァ!!!』の声と共に私の喉元に鋭い刺突にかかる。右に躱すと騎士様は左肩からの袈裟斬りをした。
「ガキン!!」
その攻撃を剣で受けた。後ろに飛び重い衝撃を流した。やはり体重差から来る衝撃は埋められない。
先程の騎士様との試合で警戒しているようだ。分かってはいたけど。だから呼吸を見て相手の動くタイミングに体を合わせた。
騎士様の呼吸が一瞬止まり指がピクッっと動く。攻撃の動作の為、体の重心ぶれた瞬間に飛び出し手を掴んで引っ張り足を横に蹴る。
「はっ!!・・・!?あっ!!」
騎士様を転倒させてから首筋に剣を当てる。教会騎士様は負けを悟ったようであったが納得出来ない様子だった。立ち上がり質問してきた。
「参りました。でもなぜ私の攻撃のタイミングが分かったんだい?」
質問されたので素直に話した。
「攻撃をする瞬間に呼吸が止まったので、それに合わせました。ありがとうございました。」
そう言うと納得したようで笑っていた。
「なるほどね。この後も見させてもらうよ。」
そう言うと舞台から下りた。
次に上がって来たの騎士様は背の高い大きいフル装備の騎士様。非常時に先頭に立つ重騎士様でこの方からも良くお菓子を頂いた。優しくして頂いた方と剣を交えるのがとても辛い。無表情を装ってはいるが、顔に出るらしい。
「嬢ちゃん、こちらの事は気にしなくていいぞ。そんな顔されるとこっちもやりづらいからな。はっはっはっ!!さて、やるか!悪いが本気でやるから何かあっても補償出来んからな!はははっ!!」
笑いながらそう言うと真顔になって向き合った。騎士様の武器はランスと言う槍、先が細く突く事を主にした武器だが横に振る事で叩き割る事も出来る武器。槍であるだけに剣より射程距離が長く剣は不利だがそれなりに戦い方がある。
『始め!』の掛け声と共のランス特有の攻撃、刺突をしてきた。後ろに下がり躱したが重騎士様はさらに踏み込み、ランスを振りかぶり横から振るってきた。
私はさらに後ろに下がり槍の射程の外に出る。『ブォッ!!』っと言う音が聞こえ空振りしたが、重騎士様は流れるように頭の上に槍を構え縦に振り下ろした。『ドゴンッ!!!』
振り下ろそうとした瞬間に斜め前に走り、縦に叩きつける槍の一撃を躱す。舞台を割る凄い音が聞えた。
槍を持ち上げようと力を加えた重心を後ろに掛けた時、重騎士様の目の前で飛び跳ね、頭上でフルフェイスのヘルムを掴みそのまま後ろに倒した。
背中から倒れた重騎士様のフルフェイスのヘルムの目と目の間の空いた部分に剣の先を当てた。
「降参だ。嬢ちゃん強いね。本気でやったんだがな。はははっ!」
「すいません。沢山の方とお相手しないといけないので・・・」
「あぁ、分かってるって、それ以上言うな!はっはっはっ!!」
重騎士様はランスを肩に担いで下りて行った。次の騎士様との試合をと見たが、舞台が壊れたので直すそうで少し時間を取った。
目を瞑って次の試合を待っていると・・・。
「セレンちゃん大丈夫なの!?途中でやめても良いのよ!」
お母さまが泣きそうな顔で立って声を掛けてきた。
私は後ろを振り向きお母さまに抱きついた。お母さまは私を包んでくれた。体温が伝わる。それだけで幸せを感じる。本当は逃げ出したい・・・
「お母さま、私は大丈夫です。お母さまやお父さま、お兄さま達、お姉さま達が見ていて頂けるだけで勇気が湧きます。」
精一杯の笑顔で言った。ちゃんと笑顔だったかは分からない。
そして、試合の再開の掛け声が聞えて来た。
「お母さま、行って参ります。」
そう言って舞台に上がった。
戦う姿を想像しながら書くのって楽しいですね。こう来たらこう返すっみたいな。




