入学試験「希望」
もう少しで10歳になる・・・
学校に入学しないといけない。私は普通に入学して、普通に勉強して、普通に友達を作って、普通に遊びたい。だけど・・・出来ない。家の為、家族の為とはいえ入学前に目立ち過ぎた。この事は国王家も絡んでくるに違いない。私の力を手に入れようとする者がたくさんいるだろう・・・。
ディナー前にお父さまとお母さま、クルタ兄さまとテルル姉さまを呼んで入学の事で話しを聞いてもらった。
「・・・・・・・・・・なのでこの国の学校に入りたくありません。」
「そう言うと思っていたわ。以前話してたわよね、他国の学校でも入れるか?っと。」
一度しか話して無かったが覚えていたテルル姉さまは察していたらしく驚いてはいなかった。
お父さまとお母さま、クルタ兄さまは驚いた顔をしていて考え込んでいた。
「お前の言う事は至極もっともだ。だが・・・お前の入学の件はお前の言った通り国王家も絡んでくるだろうし他の貴族家もかかわってくるだろう。それだけお前の存在はこの国で大きいという事なのだが・・・ただ・・・他国へ留学となると周りが止めに入る・・・プラチナ、お前はどう思う?」
「この国の数ある有名学校からセレンちゃんの入学の誘いがありました。普通は無い事ですわ。普通そんな事をすれば他の貴族家にしこりを残しかねないですから。普通無い事が起こるのはセレンちゃんが例外中の例外だからでしょうね。そんな状態で学校に入ったとしたらセレンちゃんが望むような普通な学校生活は無いですわ。それでは不憫で可哀そうですわ・・・。」
お父さまとお母さまはやはり悩んでいるようだ。クルタ兄さまは・・・
「留学じゃなく、国内の学校で良いのでは?他国に行って身元がばれてしまった時が不安だ。何が起こるか判らないしそれがトラピスト王国を危険に晒すことに繋がりかねないと思う。それに、入学後は学校には普通に対応させるように指示を出せば良いだろう。」
クルタ兄さまの後にテルル姉さまが言った。
「私はセレンのやりたいようにさせたいわ。セレンは幼く小さい体で今まで誰よりも私達家族の為に頑張ってきたわ。自分のわがままを言う訳でなく・・・それに初めてセレンの希望を聞いたわ。私はこれ以上セレンを家族の為の犠牲にしたくない。今度は家族でセレンを支えてあげても良いと思うわ。」
「「「・・・・・。」」」
テルル姉さまの言う事を聞いたお父さまとお母さま、クルタ兄さまは思う事があるのだろう。それ以上話す事は無かった。
「とりあえずセレンの入学の件は私が預かる。」
お父さまがそう言って話しを締めた。
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次の日の夕方、お父さまとクルタ兄さまをお迎えに行き、待ち時間の間シガラキに寄りかかりボーっとしていたら国王様の護衛の騎士様に呼ばれた。おそらくは学校入学の件なんだろう。お父さまは仕事が早い・・・騎士様の後について城の中に入って行き一室に通された、『失礼の無いように。』っという言葉と共に・・・そしてその部屋の中には国王様がいた。
私はすぐさま跪く。
「オスミウム卿に話しは聞いたが・・・他の国に留学したいというのは本当か?」
「はい・・・」
「それはなぜだ?この国の学校で何か不満か?お前に必要な物なら用意させるぞ?何も不満はあるまい。」
「私のお母さまはこの国の多くの学校が私の入学を打診してきたと言ってました。それは例外中の例外で普通は無い事だと・・・私は普通に入学し、普通に勉強し、普通に友達を作りたいです。ただ・・・この国では私は有名になり過ぎました。それは私の意志でなった訳ではなく、意思とは関係ない所で目立ってしまいそれに振り回されています。この国で入学したとして、普通の10歳の学生として過ごせるでしょうか?私の為に学校の学友になるだろう人達に『普通に接しよ』と命令を出して普通に接したとしても命令の上であってそれはすでに普通ではありません。」
「セレンよ、分かっているだろうが、お前の力は他の国では脅威でありこの国を守る力であればこれほど頼もしいものはない。その力が他の国にわたる可能性、もしくは失ってしまう可能性がある。そうなってしまってはこの国にとって損失でしかない。」
「私はずっとこの国の民でありこの国と家族と共にいます。それに誰も私を殺す事は出来ません。」
「お願いです、国王陛下!私を留学させて下さい!」
「・・・・・・・・」
「入学の時期までしばらくある。今日は下がりなさい。」
「・・・・はい。」
国王様の護衛の騎士様に案内されフシミとシガラキの場所に戻って来た。お父さまとクルタ兄さまが待っていた。お父さまはフシミの頬の辺りをさすっていた。
「申し訳ありません、お父さま、クルタ兄さま。私用で離れていました。」
「今すぐ帰る準備を致します。」
そう言ってフシミとシガラキを起こしてお父さまとクルタ兄さまが跨ったらここまで送って頂いた騎士様に挨拶をし、自分も跨り屋敷に向かった。
お父さまは考えているような渋い顔をしていた。クルタ兄さまは私をチラチラっと見ていた。
私の事で申し訳ないと思う・・・




