賢者への道「邂逅」
日課の女神スクルド様の特訓はいつもの様にしていたが時間の半分を女神ヴェルダンデイ様の座学に時間を割いた。
「ヴェルダンディ様はほとんど人間族に干渉しないと聞きましたがどうしてですか?」
思っていた事を口にした。ヴェルダンディ様を特に崇拝している家もあるけれど、ほとんど無関心ってのはどうかと思ったから。しかも、間違った知識をそのままにしておくのもどうかと・・・
しかしヴェルダンディ様から出た答えは意外なものだった。
「セレンちゃん~私の力ってちょっと困りものなのよぉ~例えば津波を起こしたり大火事を起こしたり~・・・今現在の存在に影響を与えちゃうの。それって駄目じゃない?それにぃ~正しい知識を教えたとして~それが正しく使ってくれる可能性がある訳じゃないから~時として間違っていて良い場合があるのよぉ~。力が大きい分加減が難しいし、それなら手を出さない方が良かったり〜。」
「セレンちゃんはもともとこの世界の住人じゃなかったから特別なのよ~。だから~私の代わりに頑張ってほしいのよ~」
「それに~・・・異世界の・・・その話はまた今度ねぇ~。」
「・・・・」
「セレンちゃんの国にとっても強い人が近づいているわよ~。ちょっと注意してね~。」
女神ヴェルダンディ様も考えているようで・・・崇拝されているからちゃんと恩恵を与えたい、力を行使したいがそれがなかなか出来ないのだろう。ある意味気の毒な女神様なのかもしれない。
それよりとっても強い人が近づいていると言われた。少し気になる。帰ったら注意してみるべきだろう。
「ヴェルダンディ様、精一杯頑張ります。」
そう言ったら女神ヴェルダンディ様は目を細めて微笑んだ。私に期待しているんだろう、出来る限り期待に応えていこうと誓った。
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午後の守護霊アズラエル様の座学の時、アズラエル様も同じ事を言った。
「何か強い力を持つ者が来ているわね。ただ、悪い気配じゃないんだけど・・・」
守護霊アズラエル様は何か『歯にものが引っ掛かった』ような『煮え切らない』ような表情をしていた。
「ヴェルダンディ様も同じ事を言ってました。悪い気配じゃないのなら気にしなくても良いと思いますが・・・」
「セレンちゃん、ちょっとその人を見て来て欲しいの。もちろん私も見るけど。ちょっと気になっちゃって。」
守護霊アズラエル様が気にするほどの事なのだから余程の事なんだろう。
「わかりました。注意してみます。」
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守護霊アズラエル様の座学が終わり、庭先でワイバーンの赤みがかったフシミと緑がかったシガラキとマッタリしながら20分置きに薄く探知探索の結界を広範囲に張って見た。
ハスト兄さまとラウラ姉さまのお迎えに行かなければいけない時間なので準備をしつつ結界を張ってみたらヴェルダンディ様とアズラエル様が言ってた強い人が居た。
「!?」
(おそらくこの人だ・・・。アズラエル様が言ってたけど確かに異質な感じがする。どうする・・・おそらくは向こうも気付いたはず、人の流れの中1人止まっているから。静観して出方をみるか・・・)(悪い感じじゃないから事を構える気は無いようだ・・・城の方向に行ったか・・・。)
とりあえず急いでハスト兄さまとラウラ姉さまを迎えに行ってからお父さまとクルタ兄さまも迎えに行った。強い人が城に向かって行ったので心配ではある。
フシミに乗りシガラキと向かう。結界を張りながら城に行く道すがら確認できるだろうと。
・・・・
(いた!!)
緊張が走る!その男は異様な服を着ていた、そして私を見ていた。目と目があったが私から何かをするつもりはないし、何か仕掛けてくるようでもなかった。それでも魔法障壁が展開できるようにしていた。何事も無いようにその男の上空を通過した城の中にはいったが・・・
その後、その男の気配は消えた。
(あの男はどこから来てどこ消えたのだろう?そして着ていた服・・・前世での男性が着る服『甚平』と酷似していた。あの服はこの世界のどこかの国の服なんだろうか?)
アズラエル様も神妙な顔をしている。
謎は深まるばかり・・・
とりあえずお父さまとクルタ兄さまをお迎えにあがり、屋敷に戻ってからアズラエル様が言ってきた。
「セレンちゃん、少しの時間頂戴。その間はウルドちゃんに来てもらうわ。ウルドちゃんは6歳まであなたの事を見てもらってた女神様よ。覚えている?」
「本当に少しの間だから心配しないでね。」
守護霊アズラエル様は考え事をしつつぶつぶつ言っていた。
「やはり異世界絡みか・・・でも・・・御方様は・・・」
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