もう一つのお話し「リターン」
「きゃーーーーー!!」
「いやーーーーー!!!」
「落ちるーーーーー!!」
「助けてーーーーー!!!」
「地面には落ちないよ。輪っかをしっかり握って。輪っかが外れたらさようならです。」
(すいません。御方様、帰りも方向補正お願いします。それと近くに近づいたらお声掛けお願いします。)
(わかった)
御方様にお願いして輪っかが手から離れないように絡ませ目を閉じた・・・。
「Zzzz・・・」
「イツキさん!!イツキさん!!寝てるーーーー!!!」
「いやーーーーーーーー!!!!」
「ギャーーーーー!!!!」
(うるさいなぁ・・・)
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
御方様に起こしてもらい、周りを確認したらいつもの良く見る景色。帰ってきたようだ。はるか遠くにフェルミエ王国のお城を確認。
「もう少しでフェルミエ王国着くよ。近くで降りるから。」
「「「「・・・・・」」」」
女性達は無言だった。しかし帯の輪っかはしっかり握っていて脱落者は1人もいない。顔を青くしてグッタリしているようだが死んではいないだろう。
フェルミエ王国の近郊の森の上に来たので探知探索の結界を張って誰か居ないかとオークなどの危険生物の有無を確認しいない事を確認したらゆっくり降りた。
「到着、後は少しだけ歩きになるよ。少し休む?」
顔を青くした双子の妹、フェッテさんが最初に口を開いた。
「あの・・・違う移動手段はなかったんですか?」
俺は女性達のジト目を集めた。こうなる事を予想していたので気にならなかったし一瞬で黙らせられる答えも用意していた。
「ん?あるよ?」
そう答えたら女性達は顔を赤くして怒っていたが気にせず話す。
「旅の準備も無いままに500km歩く事になったけど、それでいい?戻って歩いても良いけど?」
そう言ったら顔を青くした。顔を青くして赤くして青くして忙しいようだ。
双子の姉のシャンティさんは・・・
「イツキさんって姿見は優しそうなんですけど中身は鬼なんですね。」
シャンティさんって可愛い顔して言う時は言うタイプみたいだ。他の女性達は大きく頷いていた。
「よく言われる。」
そう、よく言われる。ギルド内で挑んでくる人とそれを見ている人に。ただ、自分なりに気を使っているはずなので心外な話しなのだが。
収納魔法で水の入った水筒を出し飲ませ、無くなったら水魔法で水を出して飲ませ・・・ちょっとお世話しているのに鬼呼ばわりされたので気分的に微妙な感じになったが・・・
しばらく休憩して気分が落ち着いたようなので話しかける。
「んじゃ、もうそろそろ行きましょうか。」
女性達は腰を上げて私の後を付いて来た。歩きながらも終始無言であった。まぁ・・・無理もない話しではあるがそれを自分が慰めるのも違う。皆、思う所があるのだし、その答えは自分が見つけないといけない。お手伝いなら出来るかもしれないが。
「・・・・」
歩いていると横にバランタインが来て・・・
「さっきは鬼なんて言ってすまなかった。私達の為にして貰っているのは分かっている。ただ、昨日からいろいろありすぎて混乱しているんだ。」
「あぁ、気にしてはいない。鬼は本当によく言われるから。」
俺はニヤッとしたらバランタインも釣られるようにニヤッとした。
バランタインと話ししてたらリースリングも話ししてきた。
「イツキさんありがとうございます。皆の命を救っていただきありがとうございました。この御恩は・・・」
「あ~・・・いらん。」
「恩返しの前にしないといけない事があるだろう。しばらくは住む所は提供するがその後は知らん。ただ、協力してほしい事があったら協力する。」
「とりあえず釘を刺すようだけど言っておくが復讐の協力はしないし、『協力してほしい事があったら』と言ったけど俺が協力したくなる事だけだからな?それ以外の事は自分の責任でやれ。」
いつもの町を囲む城壁が見えたので足を止めて女性4人に言った。
「ちょっと聞いて欲しい。厳しい事を言うけど・・・俺が慰めても何も変わらない。」
「分かっているだろうけどマリアナ神国は無くなった。これから新しい場所で新しく生活を始めないといけない。戸惑う事があるだろうけど協力しあってくれ。」
そして、リースリングの方を見て・・・
「リースリング、お前は誰かの手でバランタインに託されて逃がされたんだろう?その者が何を願っていたかを考える事だ。まぁ・・・俺の推測でしかないから違ったらすまん。」
そう言ってからまた歩き・・・城壁の門をくぐった。
「バランタインさん、リースリングさん、後でちょっとギルドに付き合ってください。ギルドの責任者に話しを通しておきます。」
そして、いつもの宿屋『フクロウ屋』に到着。
「ただいま~」
「!?」
「お父さーん!!イツキさんまだその辺うろついていたよーー!!!」
キリーちゃんは驚いた顔でカウンターの裏の部屋に駆けて行った。
「あ、いや・・・そうじゃなくて・・・」
連れて来た女性達は驚いた顔だったがニヤニヤしていた。
「はぁ!!なんだとーー!!」
「なんだい!結局どこにも行ってないじゃない!!」
奥からカンタルさんとクロミエさんが出て来た。
「弁当作らなくて良いなら言いやがれ!」
「心配して損したじゃないかい!これで生まれたらどう責任取るんだい!」
なぜか怒られた。怒られるとついつい言ってしまう・・・
「ごめんなさい。」
後ろでは女性達が爆笑していた。




