もう一つのお話し「ファイヤーブレス」
リーダーらしき男は剣を振り上げ・・・
「女の騎士なんざ死んだって誰も困らねぇよ!!」
っと言ってバランタインと言う名の女性騎士の首筋に剣を振う!
『 ゴッ!!』
俺は考えるよりも早く体が動いていた。そして女性騎士の横にしゃがみ木刀の剣先で凶刃を受けてた。
「孤児院のガキなんざ死んだって誰も困らない・・・」
なぜが俺は焦点の合わない目で空を見つめ、あの孤児院の火事の時に言われたフレーズをぶつぶつ言っていた。
リーダーらしき男は剣を弾かれて驚いていたが・・・睨みつけて怒鳴って来た
「なんだてめえは!殺されてえのか!?」
「馬車の中の人はどうするの?」
俺の問いにリーダーらしき男は激怒しながら答えた。
「はん!!マリアナの小娘はブリタニカ公国の王様に引き渡して、他は慰みものにして飽きたら奴隷商に売っ払って終わりよ!!っで、お前はここで死ぬんだよ!」
「俺はこの人達とは無関係だし正義を言うつもりもないし戦争にも興味も無いが・・・ただ・・・お前らが気に入らない。」
「死ねや!!」
「ガン!!ドッ!!ゴン!!」
リーダーらしき男は斬りかかって来たが木刀で受けて弾き飛ばし体勢が崩れた瞬間に腹部に蹴りを入れた。見た目が優男でも中身は御方様に大幅に強化されているので同じ人間相手なら負ける事はまず無い。
リーダーらしき男は馬車の手前に飛ばされ、痛みに苦悶の表情を浮かべた。
「小娘、頭を下げろ!!」
そう言うと察したかのように身を低くして体を隠した。
そして、木刀を腰に収め腰を落とした。居合の構えを取り・・・一閃!!
横一線の斬撃が飛び馬車を大きく揺らし周りの男達を薙ぎ払った。
「きゃあーーー!!」
「ぐあっ!!」
「うわっ!!」
馬車の中から女性の悲鳴がし、馬車の周りを囲んでた男達は弾き飛んだ。
馬車の悲鳴が止んだらリースリングと言う娘が外を覗いた時に俺は叫んだ。
「小娘!!中の奴と一緒に外に出て俺の後ろに来い!!」
そう言うと弾かれたように小娘と女性2人が馬車から出て俺とバランタインという女性騎士の所に走って来た。おそらくは絶望的な状況下で俺自身が唯一の希望なんだろう。
小娘は女性騎士に所に駆けて来て話しをした。
「バランタイン、ごめんなさい。私のせいで・・・」
「滅相も御座いません、私が不甲斐ないせいでリースリング様を危険に晒して・・・」
互いが互いを想いやっている・・・悪くない。
そうしているうちに男達は態勢を整えていた。そしてリーダーらしき男が怒りで顔を真っ赤にして叫んだ!!
「なんなんだ!てめぇはよー!!!」
「もう構うこたぁねぇ、小娘ごと魔法で燃やしてしまえ!!」
男の中で3人ほど魔法を使えるらしく杖を持ち同時に火の玉を作っていた。合わせて8、9個位大きな火の玉を形成し俺の方にぶつけて来た。
「ファイヤーボール!!」
「死ねや!!燃えて消し炭になれ!終わりだーー!!」
大きな火の玉は迫って来た。後ろの小娘は女性騎士に覆いかぶさり、女性2人はうずくまって固く目を閉じている。俺は後ろの女性達をチラッと見てため息を吐いた。
「やれやれ・・・」
(ふぅーーー)
(すーーーー・・・)
そして・・・少しずつ息を吸い込んだ。
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
後ろの女性達は目を開けて周りを見たが前面を隠すほどの大きなファイヤーボールが消えた事に驚いていた。リーダーらしき男も叫んだ。
「なにが起こったんだ!!なんで消えたんだ!!!」
ここにいる全ての人間は現在の状況が理解できないようだ。
それはしょうがないと思う。なぜなら俺がファイヤーボールの魔力を吸い込んだから。魔力が無いなら消えるのは必定なのだ。そして俺は吸い込んだ魔力に自分の魔力を上乗せして返す。
「ファイヤーボール、返すよ。」
吸い込んだ息を吐きだすように魔力を吐き出した、それも『ファイヤーブレス』という形で。
『ボォーーーーーー!!!』
巨大な炎が馬車と男達を包んだ。巨大なドラゴンが使うだろう炎を彷彿させる炎
「!?」
男達は悲鳴を上げる暇無く炭になり・・・灰になり・・・霧散した。
まぁ・・・男達も覚悟は出来ていただろう。自分が殺そうとした時、逆に殺されるかもしれないという覚悟が。
後ろを振り返ると女性達は顔を引きつらせて固まっている。その中でバランタインという女性騎士が口を開いた。小娘は震えていた・・・
「私の代わりにリースリング様を守ってくれ!!」
私が敵では無いと思ったんだろうか?流石は騎士だけあって勇気があるのだろう、もしかしたら捨て身なのかもしれない。
「断る。」
流れで結果として助けたが守る義理は無い。怪我はしているだろうがバランタインという女性騎士が守れば良い。
「私は怪我で動けない。守れる者がいない。だから頼む!」
「・・・」
俺は女性騎士の肌の見える部分、手と首を掴み魔力を込める・・・
女性騎士の顔が穏やかになった。痛みが消えたからか眉間からしわが消えた。
「体が動く・・・なぜ?・・・治ってる・・・お前が治したのか?」
「治ったね?じゃあこれで。」
女性騎士の身体に治癒魔法を掛けて治したので俺を頼る理由が無くなったのでその場を去ろうとした。
女性達に背を向け後にしようとした時小娘が叫んだ。
「待ちなさい!!」
俺は振り向き威圧して言った。
「・・・・なに?」
リースリングと言う小娘は震えていたが折れそうな心を必死になって奮い立たせてこちらを見ていた。泣きたいのを我慢しているのだろう。先ほどの『ファイヤーブレス』を見た後だから尚更怖いだろう。足も震えていた。そして小娘は叫ぶ。叫ぶことで勢いを付けて話すのだろう、でないと言い切れない。
「私たちの馬車はあなたが燃やしました!!したがって私たちの移動手段がありません!!燃やしたのだから責任を取りなさい!!これは義務です!!」
馬車を引く馬がいないから馬車があっても移動手段になりえないのは知ってるのだろうか?知ってか知らずは分からないが小娘は気丈にも言い切った。言い切った後、その場に座り込みこちらを見ていた。部下であろう女性達を守る為に言ったのだろう。俺は無表情で小娘の前に歩いて行き・・・手を上げた。隣で女性騎士が・・・
「すまない、やめてくれ!!」
っと叫んでいる。俺は軽く小娘の頭の上に手を乗せ・・・撫でながら声を掛けた。思わず笑ってしまった。
「怖いのに良く頑張ったな!!もう安心していいぞ!!」
なんか・・・この気丈な小娘が気に入った、嫌いじゃない。おそらくはこの場に放置したら他の誰かに殺されてしまうだろう。だから助けてみようと思った。気まぐれなんだろうけど。
そして女性達は声を上げて泣き出してしまった。死の危険から逃れたと思ったのだろう。
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