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もう一つのお話し「キャット」

天窓を突き破った時に腕や顔に無数の傷を負ってしまっていた。特に両手を拘束されていたから頭から突っ込む形になっていたので頭に深い傷を負い出血が酷く血液がダラダラと出ている。


「舐めやがって!!」


独り言のように暴言を吐きつつ自分自身に治癒魔法を掛けて全身の傷を治す。深く切った頭の傷だけはなかなか治らないが時間を掛ける事でようやく治癒を済ませる。

その横では任務に失敗した事を理解したのか侍女の女性が屋根にペタンと座り両手で自分を抱きしめガタガタと震えている。そして天窓を突き破る時、侍女の女性を背にして庇いながら突っ込んだが腕に怪我を負っていた。そこから血が流れているが特に押さえるでもなくただただ怯えている。


「おい!!」


「ひっ!」


俺が侍女の女性に強く言うとその声に反応して小さく悲鳴を上げ『ビクッ!』っと体を震わせた。そしてしゃがみ込み侍女の女性と目線を合わせる。下を向いて目を逸らしているが俺はお構いなしに俺は左手で侍女の女性の顎を鷲掴みにし無理矢理に目を合わさせた。


「言え!!誰の差し金だ!!何をしようとした!!」


それでも侍女の女性は怯え涙を流しながらも瞳を閉じて・・・


「わかりません・・・助けて下さい・・・。」


としか言わなかった。俺は怒りに任せ・・・


「知らないはず無いだろうが!!」


そう言い放つと前後にガクガク揺らす。すると俺への恐怖からか涙の量が増え・・・


「たす・・けて・・・」


っと小さく言うばかりだった。

『チッ!』

っと舌打ちし考える。

『この女、本当に知らないのか?』

俺は頭に右手を当てぜんぜん乾いていない自分の血を触る。『ぬるっ』とした手触りで右手は血塗れになったしまった。


「おい、ゆっくり目を開けろ。」


侍女の女性に命令すると言われた通りにゆっくり目を開ける。


「口を開けろ。」


また命令する。そして少し口を開けたら血塗れの右手の指を突っ込む。


「んーー!んーー!」


っと声にならない音を発し目を大きく開ける。口の中は俺の血で鉄臭くなってしまっているだろう。俺は指を引き抜き・・・


「吐くな。飲み込め。」


そう言うと侍女の女性は小さく喉を鳴らし飲み込む。そして空間収納から数珠を出し呟く。


「這い寄れ、赤猫。」


すると俺の横に火球が現れそれが猫に形作った。


『タタッ!』


赤猫は軽い足音を立て屋根に上に降り立った。そして体毛の様な炎を逆立てて・・・


『フーーフーー・・・シャーーシャーー!!』


っと侍女の女性に対し怒り威嚇している。赤猫の周りが高温になっているのだろう、空気がユラユラっと揺らめいていた。

俺は押さえていた女性の顎から左手を離し、現れた赤猫の方に腕を向け手のひらを上に向ける。赤猫はその手のひらの上に飛び乗りそれを確認したのち侍女の女性にお腹に向かって赤猫を叩きつけた!!


『バスン!』

「きゃあ!!」


赤猫から発っせられていた熱気は霧散し叩きつけられた衝撃に侍女の女性は悲鳴をあげ倒れ込む。そして小さく呻き声を出していた。その姿を見ながら口を開く。


「う・・・ううぅぅ・・・。」


「おい、起きろ。」


起き上がる事が出来ず腹の部分を押さえてゆっくりと薄目を開けた侍女の女性に話し掛ける。


「お前の体の中に炎の猫が入った。俺の血を飲み込んで、そこに居るから胃の部分が熱いはずだ。しばらくして血を消化したら全身が暖かくなる。さっきの質問をもう一度するが正直に話す事を勧める。」


侍女の女性はゆっくりと起き上がり怯えた目で見上げる。


「もし虚偽や保身の為の発言をするならばとり憑いた赤猫が暴れるから。その後はどうなるかは分かるよね?」


そこまで言うと侍女の女性は恐怖で顔を引きつらせながら頭を縦に小さく何度も振る。


「名前は?」


「・・・・・。」


怯えきっていて返答も覚束ない。しかしこの侍女にこのまま付き合っても居られないので胸倉を掴み上半身を起こし目と目を合わせもう一度名前を問う。


「名前は?」


「・・・・・アシェラ。」


「なぁアシェラ、なぜ俺を拘束した?」


「親衛隊の人に命令されて・・・。」


「命令?なんて命令された?」


「部屋でなんかあったら後ろから抱き着いて拘束しろと・・・」


「他に何か知っている事は?こうなる事は知っていたのか?」


俺が問うと下を向きフルフルっと頭を横に振る。自分の体の中に細工をされて嘘も付けるはずもないだろう。恐らくは侍女のアシェラはその親衛隊の者に強要された?もしくは捨て駒にされたと考えるのが妥当か。俺は彼女からこれ以上の情報を引き出すのが困難だと察し質問のするのを止めた。そして一つだけ釘を刺す。


「わかった。アシェラに入っている猫はこれからの保険としてそのままにする。なぁに、俺に敵対しなければ何もしない、それは解るな?察するにお前は親衛隊と言う輩に利用されたようだしな。これから俺が言う事を聞け、選択権は無い。」


そう言うとアシェラは命の危機が去ったと思ったのかパッと顔を上げる。そして俺の顔を見つめ俺の言葉を待つ。


「とりあえず部屋に戻る。そして大人しく床に倒れろ。それからはフラフラした感じを装って何も喋らないでおけば良い。簡単だろ?とりあえず立って。」


俺は立ち上がったアシェラの怪我している方の腕を掴み治癒の魔法を掛ける。怪我した箇所が淡く光るのをアシェラは凝視して見ている。大した怪我でも無かったようで光はすぐに消失した。


「この程度の事は誰でも出来る。さぁ行くぞ。」


そう言って部屋に降り立つ。アシェラはソワソワして落ち着かない様子だ。任務に失敗してしまったし今後の自分の事が心配なのだろう。本人的に言うと後が無いっと言った所か?このままでは倒れたフリも間々ならないので・・・


「悪いな。」


『トン!』


「え?あ・・・・」


俺はアシェラに近づき一言謝りつつ彼女の後頭部に軽く手刀を当て意識を刈り取る。そして倒れる体を支えゆっくり床に寝かせた。そして俺も少し離れて床に倒れ込み気絶した振りをした。



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