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もう一つのお話し「トラップ」

(あ、やっぱり来てるな。ん~・・・この部屋の周りの監視の数が増えてるな・・・。やっぱり夜に何か仕掛ける気か?)


空間収納から出したリンゴを齧りながら探知探索の結界魔法でリースとバランタインが連れて来られている事を知る。いつもの知っている魔力だから簡単に分かってしまう。そして彼女達も俺の存在に気が付いた事だろう。結界魔法を展開した事により俺の魔力を感じたはずだから。

そのまま展開して部屋の周りにいる監視をしている者の場所と動きを把握する。その中で二人でいた監視の一人が部屋の扉の前に来た。


『トントントン!』


「はい、どうぞ。」


『ガチャッ!』

「失礼致します。開いた食器を下げに参りました。」


入って来たのは侍女の女性だった。恐らくは誰かと話してきたか命令されてきたか・・・顔を見ると緊張している様で・・・


「あ、お願いします。」


「いかがでしたか?お口に合いましたか?」


「えぇ、珍しい物も食べられて大変満足です。」


「それはようございました。今日はお疲れでしょう?」


「・・・・・。そうですね。眠いのか少し体が重いですね。」


侍女の女性は空いた食器を片付けつつ俺に話し掛けて来る。俺は至って通常ではあったがその問い掛けに違和感を覚えたが合わせてみる。侍女の女性は終始笑顔ではあるがそれを装っている様で、手で持った開いた皿に一緒に置いてあったナイフとフォークがカタカタ揺れて音を出していた。緊張で手が震えているのが容易に分かるし、これから何か悪い事が起こる事を暗示している様だ。

空いた食器をワゴンに乗せてから・・・


「それでは体を拭くお湯をお持ち致しますが。それともお風呂になさいますか?」


「それではお風呂をお願いします。」


「かしこまりました。お着替えはここにありますので準備致します。」


そう言って侍女の女性は俺の後ろにある引き出しに移動する。引き出しからローブやタオルを出して準備をしているのを見つつこれから起こるであろう悪い事を警戒し椅子から立ち上がる。頭をあまり動かさず目だけを動かし辺りを観察する。


「・・・・・。」


しばらく観察していると・・・突然何もない空間が割れそこから黒いモヤのようなものが溢れ出る!

そして侍女の女性は俺の体に抱き付き瞳を閉じて何かを喋っている!


(なるほど、そう来るか。)


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・」


侍女の女性は小さく呟くように何度も謝っている。俺が今まで潰してきた割れた空間と黒いモヤ、それが今、俺を襲おうとしている。黒いモヤに捕まったら無意識に操られ異世界の者達の手先になってしまうのだろう。そうなってしまったら御方様の期待に答えられない。

どんどん溢れ出る黒いモヤを見つつ部屋からの脱出を試みる!


「これは流石にヤバいな・・・」


そして俺はそう口にしつつ身動きが出来ないよう瞳を固く閉じ必死になって拘束している侍女の女性に言う。


「おい、このまま捕まえていろ!絶対に離すな!離したらどうなっても知らんぞ!!」


侍女の女性に俺の言葉が聞えていたか確認する程の余裕も時間もなかった。だがそんな事も構ってはられない。俺は重力操作をし天窓に向かって落下する!


「行くぞ!!」


『ガシャーン!!』


「痛てぇ!!クッソ!!、俺をなめんな、オラッ!!」


けたたましい音を立てて天窓を突き破ると同時に重力の操作を解除し天窓の外側に降り立つ。そして今まで居た部屋は黒いモヤで満たされて床も見えなくなってしまっている。



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