もう一つのお話し「ブラッド」
リースはひとしきり泣いて落ち着いたようだ。
「イツキさん、私に出来る事があったら何でも言ってね!家族なんだから助け合わないとね!」
「そうだね、お願いする事が近いうちにありそうだからその時によろしくね。」
「了解!」
リースの顔がいくぶん穏やかになったように感じがする。根本的な問題は残ってはいるがとりあえずは解決という事にしておこう。2人で待っているとリースが口を開いた。
「遅いね。」
「そんなに時間経ってないよ。もう少ししたら来るんじゃないか?」
3人を待っていると程なくしてこちらに向かって歩く複数の音が聞こえてくる。
「リース、戻って来たみたいだね。」
「うん、2人の結果楽しみだね。」
「そうだな。」
そして俺とリースが待っていた食堂にバランタイン、シャンティ、フェッテの3人が入って来る。俺はその3人に・・・
「お疲れさん。」
「戻りましたわ。空間収納の魔法って授けてもらう魔法なんですね。」
バランタインはリースと同様に空間収納の魔法を得たようだ。
「あぁ、バランタインが教えて欲しかった魔法ってそれっだったんだ。その魔法は時間と空間の歪みを魔力で繋げて使用する魔法だから人間では覚えるのは無理なんだよ。そんな歪みなんか人間には探せる訳無いからね。注意点は先刻言った通りだから。ところでシャンティとフェッテの検査の結果はどうだった?」
「う~ん・・・実はあんまり分からないんですよぉ・・・フェッテは分かった?」
「私も良く分からなかったですね。」
「先生はなんて言ってたの?」
俺は先生がちゃんと説明しただろうけど、良く分からないと言う2人に先生が何て言ったか説明してもらった。
「あのファウストと言う先生が言うには魔力を常に放出する事によりその周りの空間を自分の領域にする事が出来るっと言ってましたね。」
「私も同じ事を言われましたよ。」
フェッテが先生に言われた事を言うとシャンティも同調する。俺もその説明だけでは良く分からないので
思い当たる事を言ってみた
「それって結界の類なの?」
「先生は結界と言う言葉は言ってなかったよぉ。」
「そうなんだ・・・でも2人は同じ事を言われたって事は同じ能力っと考えて良いんだよね?」
「多分。」
「恐らくわぁ。」
流石双子って事なんだろう、同じ能力って事なんだし。まぁ・・・2人の能力は分からないとしてもその内に明らかになるだろう。だからこれ以上は追及はしなかった。リースさんも2人の話しを聞いていたが皆と同じく理解出来なかったようで釈然としない表情をしている。
「暫くは体力とかいろいろ鍛えないといけないから大変だけど頑張ってくれ。先生と今後の事を打ち合わせして来ているでしょ?」
「はい、その日の仕事が全てが終わってから来て頂けるそうです。」
「今からドキドキしますぅ。」
「まぁ・・・終わってからちゃんと回復させてくれるから翌日の営業には差し支えないと思うから。」
俺が2人と話し終わるとバランタインが言う。
「ところで向こう側のリースが急に泣き出したんですけど・・・」
「あぁ、そうなんだ・・・実はね、リースの主体と客体は記憶を共有してるんだ。だからこっちであった事が向こう側のリースにも分かるんだよ、その逆も然り。記憶が共有されないと不都合な事が生じてしまうらしいんだわ。」
「そうなんですね。だから急に泣き出したんですね。ところでどんな事をしたんですか?」
バランタインは変に誤解してしまいそうだ。そしてリースが口を開く。
「イツキさんも家族だって話ししたんだよ。それ以上は秘密!」
「別に秘密にする必要無くないか?やましい事してないんだから。」
俺はリースに言うと・・・
「だって恥ずかしいよ。」
「なにそれ・・・まぁいいけど・・・んじゃあ改めて・・・俺はあなた達とは違いマリアナの人間じゃない。そして生まれた場所やその後の環境や身分も全て違う。だけどこれからは家族だ、お互いに助け合って行こう。」
そう言うとリースが質問してくる。
「なんか・・・こう儀式みたいなものってない?なんかさ、気分的にっていうかさ。」
「・・・ん~・・・無くはないかな。」
「ほんと!やろうよ!どういうのなの?」
「お酒にみんなの血を入れて回し飲みするってやつなんだけど・・・普通に考えたら引くよね?」
そう言ってるといつの間にかシャンティとフェッテの姿が消えていた。そして足音がこちらに向かって近づく。現れたのは主体のリースだった。
「・・・・・。マジ?来るの速いよ。」
俺がそう言ってるとバランタインはニッコリ微笑んで・・・
「私は構いませんわよ?」
フェッテの手にはグラスが、シャンティの手にはお酒の瓶が握られていた。
「「客体では血が出ないから主体の方で来たよ!」」
リースは同時に話す。俺も言った手前、やる事を承諾し・・・
「じゃあお酒を注いでから針で指を刺して血を一滴で良いから入れて。」
シャンティがグラスにお酒を注ぎ入れテーブルの真ん中に置く。その周りに周りに座り、針で指先を刺す。その刺した指先をもう片方の手で絞り、出てきた血を一滴お酒の中に入れ溶け込ませた。5人が血を入れたのを確認してから最初に誰が飲むかを見ていたら・・・
「一番最初に私が飲む!」
俺の横に座っていたリースがグラスを手に取り一口飲む。
『ゴクッ!』
「ウフフッ!はい次!」
そう言うとその横に座っていたバランタインに渡す。
「では、頂きますわ。」
『ゴクン!』
喉を鳴らしそのお酒を飲み次に何も言わずフェッテにグラスを回した。フェッテも両手でそのグラスを手に取り・・・
「よろしくお願い致します。」
そう言いながら一口飲む。
『ゴクッ!』
「はい、姉さん。」
シャンティもそのお酒を手に取り笑顔で飲み込む。
「なんだか嬉しいですぅ。」
『ゴクッ!』
「はい、最後はイツキさんですよ。」
そう言って俺に最後にお酒が回って来た。各自一口だけ飲んだので酒もほとんど減ってない。俺も一口だけってのもどうかと思っていると・・・
「最後にググっと!」
バランタインが飲めと勧めてくる。俺は苦笑いを浮かべていると今度はフェッテが言う。
「文字通り私達の命のお酒ですよ。ですよね、姉さん?」
「そうですよぉ。イツキさんのかっこいい所がみたいですぅ。」
なぜかプレッシャーを掛けてくる。両方のリースも真剣な眼差しだ・・・。俺も諦めて・・・
「わかったわかった!なんなんだよ、もう!」
『ゴクッ!ゴクッ!ゴクッ!』
そう言ってグラスの彼女達の血の溶けたお酒を飲み干した。
「これでいいか!?」
俺は彼女達に言うと照れた顔をしているが満足げだ。その顔を眺め言う。
「さて・・・もうそろそろ寝ようか。姉妹達。俺は主体のリース送ってから部屋に戻るよ。」




