もう一つのお話し「ディスクロージャー(暴露)」
「リーガル、ちょっと離れる。」
「俺は風呂入ったら寝る。今日は疲れた。」
「明日魔族領に帰るからな。体調は整えておいた方がいいぞ。」
「あぁ。」
リーガルに部屋から出て行く事を伝え部屋を出た。そしてバランタインさんとリースさんの部屋の扉を叩く。
『トン、トン。』
「バランタインさんちょっといいか?」
ノックをしてから扉に向かいバランタインさんを呼ぶと扉が開く。
「お話しの件ですよね?」
「うん、そう。フェッテさんとシャンティさんに部屋で話すよ。」
バランタインさんが扉を開けて出てこようとする時、その奥に居たリースさんが俺を見ていた。
「ちょっと離れます。」
バランタインさんがリースさんに言うと部屋から出て俺と二人でフェッテさんとシャンティさんの部屋に向かう。
『トン、トン、トン。』
「はーい。」
扉の部屋を叩くとおそらくシャンティさんの声が聞えた。
『ガチャ!』
「どうぞ。」
中からシャンティさんが扉を開けてくれて俺とバランタインさんが中に促された。
部屋の中にある椅子に座るよう促され俺とバランタインさんはそれに座る。三人には大事な話しをする旨を伝えていた為、俺の方に体を向ける。
「お話しと言うのは?」
フェッテさんが問う。その問いに俺は深く溜息を吐き暫く押し黙る。短い沈黙の後俺は意を決し口を開く。
「リースさんの事なんだ・・・。3人はリースさんの事をどう思う?」
俺の問いに3人の眉間に皺が寄る。そして初めにバランタインさんが俺からの質問の趣旨を問う。
「イツキさん、質問の趣旨が分からないです。どういった意味ですか?」
「そのまんまだよ。3人にとってリースさんはどういった存在かを質問したんだよ。バランタインさんは?」
俺はバランタインに答えるように促すと暫くの沈黙の後答える。長考したであろう事が伺える。そして言葉を選びながら・・・。
「私は・・・リースリング様にお仕えする騎士です・・・亡き陛下に託されました・・・」
「なるほど、シャンティさんとフェッテさんは?」
俺は二人に質問を投げかけてみる。
「私はリースリング様にお仕えする為にいます。」
シャンティさんが答えるとフェッテさんが後に続く。
「一体どうしたんですか?イツキさんおかしいですよ!」
「・・・・・。うん・・・そうだよな。」
俺はその答えが返ってくる事が予想出来た。そしてとても悲しい。それはリースさんの想いと3人の想いに隔たりがあり、それによりリースさんが思い悩んで居ただろう事が容易に分かってしまう。そして俺は続けて話す。
「でもな・・・リースさんはもう王女では無いんだよ。最初からバランタインさん、シャンティさん、フェッテさんとは立ち位置、立場が違うリースさんは思い悩んで居たんだ。国も無く王女では無くなって全てを失ったのに守ってもらっている事に。そしてリースさんは言ったんだ。『マリアナ神国の時から一緒に居てくれた大切な人達を失いたくない』っと。」
「「「・・・・・・。」」」
3人は黙ったまま俺の話しを聞いている。目を伏せてその顔はとても悲しげだ・・・。
「フェッテさんとシャンティさんはリースさんが魔法の訓練を受けているのは知ってるよね?」
「はい・・・でもそれはイツキさんが教えているんですよね?」
フェッテさんが俺の問いに答える。
「半分は正解。俺の先生に教わってるんだ。俺も相談はされるけどアドバイスしてそれに沿って先生に指導してもらっているんだ。先生は本当にすごいんだ。だよね、バランタインさん?」
「えぇ。」
「リースさんが先生に相談した時にやってはいけない事をしてしまったんだ。それは3人を思っての事だったんだろうけど・・・」
俺は今までの経緯を思い出しとても苦い顔をしていただろう。その雰囲気が伝わったのかバランタインさんが苦しそうに聞いてきた。
「リースリング様は・・・何を・・・したん・・ですか?」
「リースさんは・・・自分の魂を2つに割いた。」
「割くとどうなるんですか?」
シャンティさんが聞いてくる。俺は今、誤魔化しても3人の為には・・・リースさんの為にもならないので正直に話した。
「今は肉体と言う器に入っているから良いけどそれが無くなったらリースさんの魂は消滅してしまう。2つに割いた魂は不安定な状態になるらしいんだ。リースさんはそれを知った上で3人を守りたいという想いで、失いたくないという想いでその施術を受けたんだ・・・・。」
「「「・・・・・。」」」
俺の言葉に3人は言葉を失った。事の重大さを理解したんだろう。そしてリースさんの想いを理解したんだろう。
「今、ここに居るリースさんの体は作られた物でそれに割いた片方の魂が入ったいる。そしてもう片方が本来の体に入っている。今、リースさんは2人いるんだ。」
3人に状況を説明しながらも部屋の外に誰かが居る気配を感じる。間違いなくリースさんだろう。入るに入れないのも心境的に分かる。俺は立ち上がり部屋のドアを少しだけ開ける。
『ガチャ!』
「あっ・・・・。」
ドアの前に立って居るリースさんと目が合う。
「状況は伝えたよ。とりあえず入って。」
リースさんに部屋に入るよう促し従ってくれた。ビクビクとした表情で 右手の握り胸に当てて部屋に入った。そして消えりそうな声で・・・
「ごめんなさい・・・」
「リースリング様・・・」
『バチン!』
リースさんは3人に謝った。沈痛な面持ちで目には涙を溜めてバランタインさんがリースさんの前に歩み寄り頬を叩いた。
「なぜ言ってくれなかったのですか・・・」
「ごめんなさい・・・」
リースさんは泣きながらもう一度謝るとバランタインさんはリースさんを抱きしめ泣き出した。俺はミカエル様にお願いしてリースさんの主体の居る御方様の空間に皆を移動させた。




