もう一つのお話し「カフェ」
「えっ!空間収納出来るんですね!」
横で見ていたバランタインさんも驚いて口を開いた。
「イツキさんの見てたら便利だな~っと思ってたから。」
リースさんが言うのも分かる。実際に便利ではある・・・だけどこれは使い方を間違うと諸刃の剣。その事をリースさん言う。バランタインさんも空間収納をいずれ使えるようになってしまうだろうから一緒に。
「先生は何か注意点とかは言った?」
「えっと・・・入れた物を忘れないようにっと自分を収納しないように・・・かな。」
「まぁ・・・そんな所だよね。理由は先生が言っただろうから割愛するけど・・・それ以外に俺から注意点があるんだ。」
「他にあるんですか?」
リースさんがジッと俺の目を見て聞いて来た。
「確かに空間収納は便利だ。重さや物量が一切関係無くなるからね。この魔法の恐ろしい事は使い方を間違えると物価を滅茶苦茶に出来る。」
「物価って物の値段ですよね?どういう事ですか?」
バランタインさんはあんまり分かってない顔をして聞いてくる。
「普通、商人が他国から商品を運ぶ時に必ず輸送コストが掛かるんだよ。その輸送コストを商品に上乗せして価格が決まるんだ。だから国外の品は高くなってしまう。それは分かるね?」
「えぇ、それは分かるんですけど・・・」
バランタインさんとリースさんはその事については分かっているようだがそれとこの魔法の関連性が分かっていない様だ。顔に疑問符がついている。
「この空間収納の魔法はいくらでも入るし重さや時間経過による劣化が無い。良い事尽くめではあるんだが・・・この魔法を使って他国から商品を仕入れ値段を付けると、商人が他国から商品を運んで付けた価格より安くなってしまう。輸送のコストが掛からないからね。そうなると本業の商人の売っている商品は誰も買わなくなってしまう。」
「でも、買う方から見たら安く買えるからいいんじゃないですか?」
「そう、買う方は良いよ、安く買えるんだし。ただ、売る側の仕事を奪う事になる。それはダメだ。自分は商人では無いから定期的に同じ商品を売る事は出来ない。空間収納をお金儲けの道具にする事は誰かに迷惑をかけてしまうという事を知っておいて欲しい。お金が絡む事はせいぜいギルドの依頼で得た物を入れる位にしておいてくれ。」
「・・・・・。分かった。」
リースさんは何とも納得出来ない表情をしていたので俺は付け足しで話す。
「自分の持つ力を行使して自分に有益な事をするだけっと言うのは気持ち的に分かる。だけれども空間収納が出来るのは俺が知ってる中で俺とリースさんだけだ。全ての商人は昔から切磋琢磨して商売をしているんだ。その努力を壊すと言うのは恨みを買うという事なんだ。」
俺が言うとバランタインさんは納得したように話す。
「そうですね・・・長年作り上げたものを壊されるのは何とも形容しがたいものがありますね・・・。私達も一度に全てを失ったんですものね・・・」
バランタインさんが遠い目で言う。俺が言った事を自分の過去に重ね合わせたみたいだった。そのバランタインさんの言葉にリースさんはハッとなり顔を上げる。そしてもう一度同じ言葉を言った。
「分かった。」
今度はちゃんと分かってくれたようだ。そして手に握られた紋章の入ったネックレス・・・亡国となったマリアナ神国の紋章の入ったネックレスを慈しむように指で撫でていた。
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
「さて・・・用事も済んだし帰るか。」
リースさんがネックレスを空間収納に仕舞ったのを見てから3人に声を掛けた。
「そうですね。帰ったらお見せする事もありますしね。」
バランタインさんがニヤニヤしながら立ち上がる。そして今まで外を眺めていたリーガルに言う。
「リーガルはどうする?俺らは帰るけどもう少し見て回るか?」
「あぁ、俺も帰る。」
宿屋『フクロウ屋』に帰っていると不意にリーガルが話しかける。
「なぁイツキ・・・」
「ん?何?」
「魔族の国がこの国みたいに活気があるようになるとなぁって思うんだけどよぉ・・・思いつかねぇんだよ。なんていうか・・・この国みたいになる切っ掛けみたいなものがよぉ。」
カフェでボーっと外を見ていたのはこの事を考えていたようで・・・リーガルも国を憂いていた。俺はその事を意外に感じていたがそれを顔に出さないで話す。
「経済ってのはな、人が動く所に集まる。人を動かさないようにしている所は寂れていくものなんだよ。」
「そうなんだろうけどよぉ・・・国の売りに出来るものが思いつかねぇ。」
「そうだな、立地的にも火山地帯の奥の厳しい所にあるしな。」
「・・・・・だよな。」
『はぁ・・・・。』
「・・・・・。」
リーガルは答えの思いつかない問題を抱え深いため息をする。俺はあの国にある他の国には無い絶対的な特色については話さなかった。言っても良いがそれは魔族の国の民が考える事だから。




