もう一つのお話し「プレパレーション(覚悟)」
「リースさん、どうしたんですか?凄く機嫌が良いみたいですね。」
「あ、キリーちゃんやっぱり分かっちゃう?」
「ずっとニコニコしてたら分かりますよ。何があったんですか?」
「秘密ぅー!」
「酷いなぁ、教えてよぉ!」
「ニシシシシッ!いやぁ今日の朝食は一段と美味しいなぁ!ね!お姉ちゃんもそう思うでしょ?」
「・・・・。そうね。」
いつもよりテンションの高いリースさんのバランタインさんも困惑している様子だ。リースさんとバランタインさんは身元を隠す為に姉妹と言う設定、人前だけなのだが。
リースさんのした事をバランタインさんは知らないようで・・・ただ、この事に関してはバランタインさん、フェッテさんとシャンティさんは知っておいた方が良いと思う。リースさんに一言ことわってから言うつもりだ。まぁ・・・自分も考える事は山積みではあるんだが・・・
「バランタインさん、リースさん、今日の予定は何かあるの?俺は市場に行って買い物を済ませるよ。」
俺は2人に予定を聞くとリースさんがすぐに返答を返す。いつもならバランタインさんが応対するのだけど。
「今日は何も無いよ!ねぇ、一緒に行っていい?」
「特に構わないけど・・・」
「やった!ご馳走様ー!」
リースさんは食べ終わりすぐに自分の部屋に戻って行った。
「ここ最近ずっと塞ぎ込んでいて心配していたんです・・・イツキさん、何かあったんですか?」
バランタインさんが聞いてきたが俺はそれに答えられない。この事を言っていいかリースさんに承認を得ていない。
「・・・・。その事については改めて話すよ。」
俺の答えにバランタインさんは釈然としない顔をしているが俺は話しを戻して問い掛ける。
「バランタインさんはどうする?」
「そうですね・・・私もお供しますわ。」
「了解。先に部屋に戻るよ。ご馳走様。」
そう言って俺は席を立ち部屋に戻った。その途中でリースさんの居る部屋をノックした。
『トン、トン、トン』
「はーい!」
「リースさん、部屋入って良いかな?」
「どうぞー!」
『ガチャ!』
ドアノブを回し、部屋に入った。
「イツキさん、どうしたの?いつ頃買い物に行くの?」
「あー、食べてもう少ししたら行くよ。あのさ・・・リースさん、主体と客体の事はバランタインさんやフェッテさん、シャンティさんには話してないよね?」
「・・・・。」
俺が問い掛けるとリースさんは黙り込み表情は暗くなる。でも俺は話しを続ける。
「リースさんがした事はあの3人の為。ただ3人が事後だったとはいえ、その事を知らされなかったと言うととても悲しむと思う。信用し信頼し合っている関係だからこそリースさんが何を考えて何を思っているか知ってもらっておくべきだと思うよ。」
「・・・・。わかった。」
「なかなか言い難いだろうから俺が段取りしておくよ。じゃあ。」
そう言って話しを終わらせ部屋から出た。そして食堂に戻ったらリーガルはバランタインさんに弄られていたようだ。
「あ、イツキさん、流石ね。リーガルさんに聞いたわよ。幼女を救ったり食糧分けたりしてたんだってね。市場に買い物に行くのはその為なんでしょ?」
「うん、そうだよ。」
「でも、いくら何でもそれじゃあイツキさんの資産でもすぐに底をつくわよ?」
「わかってる。だから次の手は考えているよ。」
「なら良いんだけど。」
「バランタインさん、買い物は浴衣だと目立つから着替えてね。」
「えぇー。だめなの?」
「お願い。」
「・・・・わかったわ。」
「着替えたら買い物に行くからさ。玄関外で待ってる。」
俺はその後自分の部屋に戻り買う物をザックリとリストアップし紙に書く。
「ふむぅ・・・大体こんなものか・・・」
紙に書いた文字を眺めているとリーガルが戻って来た。
「リーガルはどうする?このままここに残る?」
「いや、俺も付き合うぜ。ところでよぉ、あのバランタインって女の人も行くんだろ?」
「行くけど、どうかしたの?」
俺がそう言うとリーガルは困った顔をしている。そして・・・
「あの女の人は苦手だ!出来れば関わり合いたくねぇんだ!」
「あー・・・無理だな。根は良い人だから気にすんな。」
「気にすんなって言ったってよぉ!」
「ほら、もう少ししたら行くぞ。宿屋の玄関で待ち合わせしているから先に行って待ってるから。準備が出来たら来るように。」
「先に行くなよ!」
リーガルに声を掛けて部屋から出る。
『はぁ・・・。』
(女の人が苦手とかって・・・子供かよ・・・。)
そんな事を思うと溜息が出る。良く言えば『硬派』悪く言えば『初心』なんだろう。そして外に出る前の食堂に入る。いつも通りフェッテさんとシャンティさん、キリーちゃん、ビエトラさんが朝食の片付けをテキパキとこなしている。その中で比較的自分の近い所で片付けをしていたフェッテさんに声を掛ける。
「フェッテさんちょっといいかな?」
「もうイツキさんったらぁ、私シャンティですよぉ~。」
「あぁ、ごめんごめん。」
「ウフフッ!何か御用ですかぁ?」
「今日の夜、二人に話したい事があるんだ。部屋に伺いたいけど良いかい?」
「良いですよ~、じゃあ妹に伝えておきますねぇ。」
「うん、お願い。」
そして俺は食堂を出て外に出た。




