もう一つのお話し「プライムミニスター(宰相)」
俺は鼻歌を歌い帰路についた。俺の横に居たリーガルが話しかけて来た。
「お前、最後にあのジジイに何て言ったんだ?」
「知りたい?」
俺はニヤニヤしながらリーガルに聞いた。
「教えろ。」
そういうので話す。
「背中に沢山の不吉な魂が憑いてますよ。って言っただけ。どうせあの類はやましい事だらけで思い当たる事が数えきれない位あるだろうからね。」
「・・・・・。魂とか見えるのか?」
「いや、見た事無いよ。その気になれば見れると思うけど。」
「・・・・・。お前、本当に最悪だな!!性格悪いにしても程があるだろうが!!だからかよ・・・俺たちが部屋を出る時、急に自分の後ろをバタバタ手を振り回し始めたのはよぉ・・・」
「性格悪いって酷いなぁ。別に殴り込みに行った訳でもないのにさ。誰も怪我してないし平和的じゃないか?それに痛快だろ?」
「まぁ・・・そうだな。」
「「ははははは・・・!!」」
二人で笑い、リーガルはスッキリと晴々した顔をしていた。
「良い顔になったな。」
「うるせぇよ。」
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診療所に戻ると診察は始まっていたようで・・・受けに来た人達は俺を待っていたようだ。
「イツキさんおかえりなさい・・・また、お願いして良いですか?」
カレンさんが上目つかいでお願いしてきた。
「あぁ、良いですよ。ただ、配る量は少しセーブして下さい。食糧は無限にある訳ではないんで。」
「分かりました。」
「リーガル、悪りぃ。また、見張りお願い。」
俺はカレンさんとリーガルにお願いしてから奥の部屋に入る。そしていつも通りに食糧を配布。
その日は久々の配布だったんでいつもより多くの人が診療所に来た。
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リーガルが睨みを利かせているんでそれなりに混雑はしたが大きな混乱も無く無事に終わる。最後の診察を終え、診療所に来院した人が帰ったのを確認したので待合室に4人集まった。
「お疲れさん。」
俺が労をねぎらう言葉を言うとリーガルが不満を言う。
「俺は何もやってねぇ。」
「そんな事無いですよ。リーガルさんがいるから混雑しても混乱はしないですから。」
カレンさんが笑って優しく言うと・・・
「お・・・おう!」
リーガルはカレンさんに言われ満更でもない顔をしている。
その後もその日にあった事などを取り留めもなく4人で歓談していると・・・
『ドンドン!』
診療所のドアを叩く音が聞こえた。その音に反応し、カレンさんが内側から外に居る誰かを見た。
『カチャカチャ・・・カチン!』
鍵を開け扉を開くと男性が2人入って来た。
「お邪魔するよ。おぉ!居た居た!やっぱりここだと思った。な!言った通りだろ!?」
「そうですね。叔父さん。」
現れたのはトーマスさんとジェームスさん。
「お世話になりました。」
俺から礼を言うとトーマスさんは・・・
「イツキ君、君の身元引受人はオッカム君から私にしておいたから。まぁ・・・拘束されていた時、あれだけの人を集める人間を無下に出来ないしな。それに危険な人物でも無さそうだから暫くの滞在は目をつぶるよ。ずっとここに居る訳でもないだろう?」
「はい。永住は考えてませんね。」
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・・・・・・
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トーマスさんは俺との会話も一通りするとリーガルの方に振り向き・・・
「えーっと・・・君がリーガル君だね。いやぁ良い体つきだ。うちの甥のジェームスが世話になった。これからもよろしく頼むよ。」
そう言ってトーマスさんはリーガルと握手を交わす。トーマスさんの雰囲気を感じ取ったのか顔は真面目になっている。 そしてジェームスに・・・
「ジェームス、自分に無い物を持っている者と繋がりを持っていた方が良いぞ。その者が信用に足る者なら特にな。所詮一人で出来る事などたかが知れているし、困った時に相談出来る者が居るのと居ないのでは精神的に大きく違う。だからこそ自分の仲間や友達は大事にしないといけない。だよな、オッカム?」
「俺に振るな。ところで今日は何の用事だったんだ?」
トーマスさんの幼馴染のオッカムは急に話を振られた事に苦笑いをしつつ要件を聞く。
「ん~・・・城に居る祈祷師の宰相がイツキ君に会ってみたいそうなんだ。他国の祈祷の技を見てみたいんだそうだ。」
「はぁ?」
オッカムが眉間にシワを寄せて訝しげにしているとトーマスさんは話しを続けた。そして俺に顔を向けて・・・
「幼い子供をどうやったのか分からないが治癒させたらしいと言ったら興味を持ったようでね。それに牢屋に入っていた時に解放を求めて多くの人が集まった事も聞き及んでいる。やっぱりそういった動きは目につくしな。」
俺は特段会う事に問題無いっと伝えたがなるように仕組んだ訳なんだが。
「今すぐって訳では無いですよね?」
問題は無いが今日の明日で・・・という訳では無いだろうから聞いてみる。するとトーマスさんは・・・
「もちろん、3日後でどうかな?こちらの方で時間を調整しておくよ。そんなに時間はかからないと思うから。」
「わかりました。」
「3日後にジェームスに迎えに来させるから。さて・・・」
トーマスさんは要件を言うとオッカムと歓談を再開。俺はジェームスに挨拶を3日後に予定しその段取りを聞いた。




