もう一つのお話し「ドラックストア」
「ギルド長、どうかなさいましたか?」
俺は自分が呼ばれた理由も分からず尋ねてみた。すると困った顔で話す。
「イツキ君済まんね。全額は今このギルドで持ち合わせて無いんだ。1か所に多額の現金を置いておくのは防犯上良くないので各所の商人ギルドの分散させているんだ。持ち合わせてはいないと言ったがそれなりの額はここのギルドにもあるんだがイツキ君の資産はそれ以上なんだよ。わかってくれ。」
「すぐに必要になるんですがなんとか出来ないですか?」
「とりあえず聞いておきたいんだがすぐに必要っとは何を購入したいんだ?」
「薬と食糧しかも大量に。」
「・・・・・。なら購入した店の店主に現金をギルドに取りに来させてくれ。私の方から一筆書くからそれを店側に見せてやってくれ。額が額なら喜んで取りに来るはずだから。それで良いかな?」
「それでしたら構いません。でも、手持ちである程度持っておきたい。」
「それなら担当に言っておくから。ところでイツキ君は何をする気なんだい?」
「・・・・・。気に入らない事をする者がいるから排除するんです。」
「・・・・・。穏やかじゃないな。ただ、想像もつかんがそれは一緒に来た魔族の2人と関係のある話しかな?」
ギルド長は詮索をして来た。俺は事の成り行きを言いたくないので、また話しを切り上げる為、少し静かに威圧して話した。
「それは言わないと駄目ですか?」
威圧された事に気付いたギルド長はハンカチて顔を拭きながら・・・
「あ、いや、言いたくなかったなら謝るよ!?ただな、ビジネスのチャンスがあるかと思ってだな・・・。ははははっ・・・・。」
焦りながら謝ったが・・・大きいお金が動くと思ったからの詮索だった。ギルド長室に乾いた笑い声が響く。
「おそらくチャンスは無いと思いますよ。ここからかなり遠い所ですから。」
そう言うと諦めた顔で・・・
「そうか・・・だか、何かあったら教えてくれ。商人ギルドとして協力はさせてもらうよ。」
ギルド長からの申し出に俺は返事をした。
「もしもの時はよろしくお願いします。」
ギルド長との話しが終わり、部屋の外に出た。ギルド内のゲストスペースでオッカムとカレンさん、受け付けの中年の女性ギルド職員が話しをしている。一緒に部屋を出たギルド長が財務の担当職員を呼んで、先程の事のあらましを話し指示を出した。
「今、引き下ろしの為の手続きをするから用紙に記入してくれ。」
そう言われ用紙を渡された。俺はカウンターで必要事項を書き担当職員に渡す。担当職員はその額にほっとした顔をしていた。
「用事が済みましたら当ギルドに寄って頂きたいのですが・・・。それまでにご用意させて頂きますが。」
「分かりました、それでお願いします。それと俺からちょっとお願いがあるんですけど・・・。」
「なんでしょうか?」
「あそこに居る2人が質に出した物を流さないで預かってて欲しいんだけど大丈夫ですか?」
「大丈夫だと思います。その旨を鑑定士の担当に伝えておきます。」
「ありがとうございます。」
引き下ろしの件と質の件をギルドにお願いし礼を言ってカウンターを離れた。
「おまたせ、じゃあ買い物をしに行きましょう。」
ゲストスペースで待っているオッカムとカレンさんの所に行き声を掛けた。それから直ぐに商人ギルドを出て薬局に向かう。向かう途中でオッカムが話し掛けてきた。
「イツキって有名人なんだってな?ギルドの職員が褒めちぎってたぞ。」
「そんなでもないさ。一部が知っているだけだよ。今から行く所だって自分でもほとんど行った事無い店だしな、ただ知ってるってだけで。」
俺とオッカムとカレンさんで街の事などを雑談しつつ歩いた。そして程なくして薬問屋に到着する。俺から先に入り後から二人が入った。
「いらっしゃいま・・・。」
問屋の若い店員は魔族の二人を見て驚いたようだ。それを気にする事も無いようだが・・・俺は店の若い店員に話しをする。
「すいません、俺の連れの二人が薬を買いたいそうなので対応お願いします。」
「かしこまりました。担当に代わります。」
そう言うと店員さんは店の奥に行き、代わりに30代位の店員が現れた。
若い店員と小声で話しをした後オッカムとカレンさんに近づき・・・。
「ナニヲオモトメデスカ?」
何故か片言で話してくる。
「あ、言葉分かります。」
カレンさんが言うとホッとしたらしく後ろの少し離れた所に居た若い店員をジトっと見た。直ぐにオッカムとカレンさんと話し買い物を始めた。俺は少し離れて沢山ある店の商品を流して見ていた。
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
しばらくしてオッカムと離れて薬を物色していたカレンさんが諦めたような顔をしているので話し掛けた。
「どうしたんですか?」
するとカレンさんが・・・
「お薬の値段が高くて・・・買い物って難しいですね。」
っと苦笑いをした。
「そういえば・・・指輪の代金払ってなかったです、すいません。俺は鑑定士でもないから、あの2つの指輪の値段が分からない。だから言い値で買い取るよ。」
そう言い残し俺はカレンさんから離れた。カレンさんは右手を軽く握り口元に当て視線を落としている。何か考え事をしているようだ。そしてハッと視線を上げ・・・俺に近づき言う。
「良いんですか?」
「言い値でいいよ。」
俺がそう言うと・・・カレンさんは一言。
「ありがとうございます!」
それだけ言ってオッカムの元に行き話しを始めた。それからは二人の動きが速くなる。俺はその様子を眺めつつ・・・
『フッ・・・』
っと不意に微笑んでしまう。そして買うであろう薬やその他の備品の箱がどんどん増えていった。




