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もう一つのお話し「プリズン」

「入れ!」


「お手数おかけします。」


俺は大きめな建物に連行され、建物中に入り牢屋の前に通される。牢屋は通路を挟んで対面で6棟ありその1番奥で誰も入っていない1棟に連れて来られた。後ろ手に縛られた縄を外し牢屋の中に入るよう命令された。縛られて跡の残っている手首を擦りながら牢屋の扉をくぐり中に入る。俺が入った牢屋の対面の牢屋に1人先客が居て壁にもたれ掛かってじっと俺と憲兵らしき人とのやりとりを見ている。


『ガチャガチャ・・・ガチンッ!』

「追って沙汰があるから大人しくしているように。」


扉を閉じて施錠をし、事務的に言って牢屋のある部屋から出ていった。

(あーテントそのままだった・・・。)

などと思い出しつつこれからの事を思案していると、その対面の牢屋に居る魔族の男が話し掛けて来た。


「よぉ、こんな所で他国民と会うなんてなぁ・・・んで、何やったの?」


「いや、なにも。」


「はぁ?なにもしないでなんでここに居るんだよ?」


「さぁね。役人にでも聞いてください。」


「んでも、何もしてないんなら国外退去になるんじゃねぇの?ここの国は閉鎖的だからさぁ。お前、名前なんて言うんだ?」


「俺はイツキ。あんたは?」


「俺?俺の名前はオッカムだ。こう見えて医者なんだぜ。」


「医者?なんでこんなところに?」


「この国の祈祷やってる老害共が子供殺しやがったからよー。っで責任を医者の俺に押し付けようとしやがった。責任取るのは良いんだがこの国の子供を殺すのが許せなくてよぉ・・・。んで椅子で滅多打ちにしたらこの有様よ。この国自体がアホだから年取った祈祷師が偉いんだ。魔族って寿命が長い割りに子供が生まれにくいもんで、生まれるとすぐに祈祷師が来てお祝いすんのよ。それは良いんだけど病気になっても怪我しても全て祈祷で治せると思ってやがるんだ。お前は他に国から来たから分かるだろ?病気だったら薬が必要だし怪我なら手当てが必要なのが。この国では祈祷した水が全てに効くなんて言って金取って飲ませてるんだぜ。お祈りした水が万病に効くかっての!!アホだよアホ!!致命的にアホだ!!」


「・・・・・。」


「んで先日、祈祷師のジジイが俺が治療していた子供に処方した薬を奪い取って、水を飲ませて殺してしまったんだよ。しかもそれが俺のせい何だとよ。祈祷で治せたのに早く見せなかったからだってよ。その家はいわゆる貧困層で食べる物も苦労している家庭でよ、子供は栄養失調で衰弱してたんだ。だから少しずつ俺が出来る範囲で治療していたのによー、可哀想になぁ・・・。しかも親も祈祷師のジジイが偉いってんだから何も言えないのよ。」


「・・・・・。」


「なぁ、お前はどうやってここに来たんだ?この国に来るには火山帯を迂回しないといけないし時間掛かったんじゃないか?」


「ん~・・・世界地図は分かる?俺はフェルミエ王国から来たんだ。国から出ようかっと思ってね。」


「お前、俺の事馬鹿にしているだろ。世界地図がこの国に無いと思ってるの?フェルミエ王国の場所は分かるわ。結構遠いな。」


「そこから直線ルートで来た。」


「お前、やっぱり年上からかってるだろ?どうやって火山帯を直線で突っ切れんだよ?火山帯に入ったら死んじまうの知ってるだろ?あんまりふざけた事言ってると怒るぞ?」


(この魔族のオッカムと名乗る男は言葉使いは悪いが性格は悪くないみたいだ。ただ、境遇が良くないってだけで根は優しいのかもしれないな。)

そう思い俺はこの男ともう少し話しを続けた。この魔族領に入ってからほとんど警戒されて話しが出来なかったから情報が得られるのはありがたかった。


「火山帯の上を飛んで。」


そう言うとオッカムは怒気を強めたので俺は少しだけ体を浮かせ自分の足下を指差した。それを確認すると言葉を失って閉口している。


「お前いい加減に・・・!?」


「大体ここまでは半日も掛からなかったですよ。この国の王様に会いにきたんですけどね。どうしたものかと。」


「お前、本当に飛んで来たんだな?魔族は魔法が使えるがそんなレベルの高い魔法は見た事無いぞ・・・他になんか出来るのか?」


「まぁ・・・それなりには。」


「・・・お前、面白いな。」


オッカムは俺を見て何か希望を見出したような目をしている。そして話を続けた。


「治癒魔法は使えるか?あの魔法は治癒が目的であって体質が変わるものじゃないのは知ってるよな?一応それが前提で話すが誰にも言うなよ?魔族の国、『ワーズワース』は閉鎖的な国だ。ほとんど外国との交流も無いから外の国に憧れて出て行く魔族も居る程なんだ。ただ、出て行った仲間がどうなったかは分からないし噂では帰国を認めていないらしい。っでこの国の王様の名前はフェルマー。その子供で王子様がマクスウェル、お姫様がラプラス。そしてその国王の后がエリザって言うんだ。この后ってのが曲者で美女ではあるんだがわがままで気性が激しく手が付けられない。王様は良い人なんだが后のわがままを止められなくて全て台無しにしているんだ。しかも后の親が祈祷師ときたもんで・・・だからこの国の祈祷師が幅を利かすようになったんだ。そして問題がその子供のマクスウェルとラプラスってのが体が弱くて何度も骨を折る大怪我をしているんだ。っで祈祷師の頼むんだけど・・・治癒魔法を使って治して祈祷のお陰と言う事にしてると思う。骨が弱いのは別に理由があるはずで、いくら魔法で治しても根本が解決してないからその場しのぎでしかないんだよ。医者の俺に見せてくれって言うんだけど断られるし。医者が治したら祈祷師の立場が悪くなるからよぉ。はっきり言うとこの国は病んでいる。このままだと魔族は滅亡する。これは断言できる。なぁ・・・俺に力を貸してくれねぇか?」


「貸して欲しいと言うけどこのままだと俺は国外退去になるんじゃないか?」


オッカムは俺に助力を求めてきているが、簡単に了承する気はない。ボランティアではないのだから。そしてニヤッとしながら俺の問いに答えた。


「そこは俺に任せろ、策がある。」




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