もう一つのお話し「ミーティング」
「あらぁ〜あなたがイツキくんね〜。話しはだいたい伺っているわ〜。私は〜ヴェルダンディって言うの〜。現在を司る女神、よろしくね〜。」
見た目が小柄でロリータの服を着て・・・笑顔が可愛く、喋り口調が舌足らずで『ふわっ』っとした雰囲気。だけど・・・目が笑ってない。そして俺が察するに・・・
(とても強い・・・。いや・・・恐ろしく強い・・・。)
「よろしくお願いします。」
俺は久しく感じたことの無い冷や汗を感じつつ挨拶をする。
「魔族領の活火山地帯は〜どの種族も住めないわよ〜。魔族は〜昔ぃ、加護してたんだけど〜加護の力で〜近隣の獣人族滅ぼそうとしてたのよ〜。だから〜天罰を与えたのよ〜。」
「・・・・・。」
声のトーンも変わる事なく淡々と話す笑顔のヴェルダンディ様に恐怖を覚える。もしもの時はミカエル様が守ってくれるという保険があるから良いもののそれが無かったら・・・。
「私は構わないけど〜魔族に許可を取ってね〜。誰も住めないし〜使えないけど魔族領だから〜。話しはそれからよ〜。」
「わかりました、ありがとう御座います。」
「ところで〜私達の加護している女の子に〜出会ったわよね〜?どうだった~?」
恐らくはあの『恐ろしい娘』の事を指しているんだろう。けれど、確証がないので問うてみた。
「女性は沢山おりますので特徴なんか言って頂けると分かるかと思います。」
その私の問いにヴェルダンディ様の表情がピクッと動いたが・・・少し間を置いて答えてくれた。
「右のほっぺに傷跡のある子よ~。決定的な接点は~まだ無いけど~、会った時は虐めないでね~。」
ヴェルダンディ様は『虐めないでね~』と言ったの時、一瞬真顔になり再び笑顔になる。俺に釘を刺している、もしくは脅しているんだろう。そして俺の後ろにいるミカエル様が口を開いた。
「この男には始めからそのつもりは無い。御方様からもアズラエルの憑いているその娘と敵対するような指示も出てはいない。ヴェルダンディはイツキと敵対したいのか?」
「まさか~無用に争いは~避けたいだけですよ~。」
笑顔のヴェルダンディ様と真顔のミカエル様が対峙し、このままだと収拾がつきそうに無い雰囲気になっている。なので私から話しを切り替えて収集を図る。
「ヴェルダンディ様、とりあえず魔族領に赴き使用許可を得てから再び訪れますので、その時はよろしくお願い致します。」
「は~い、頑張ってね~。」
俺は早くこの場を離れたかったのでミカエル様を帰る旨を伝え帰宅の途についた。
『フクロウ屋』に戻り、自分の部屋で一息ついた所で、今回のヴェルダンディ様の話しで疑問に思った事をミカエル様にきいてみた。
「とりあえずヴェルダンディ様の言われた通り、近日中に魔族領に行こうかと思います。『私達が加護している女の子』って言ってましたがヴェルダンディ様の他に誰かがいるんですよね?」
「うむ、間違いなくウルズとスクルドだろう。元々その女神は3姉妹だからそう考えるのが自然。そしてその3姉妹の女神はこの世界の中心を管理している存在、今現在のこの世界の最高神の立場に近い。だからといって私が負けるはずが無いが。」
「それと、俺がその女の子に接近した事を知っていたようでした。遠目で見ただけで接触した訳では無いのですが・・・。」
「ヴェルダンディは自分でも言った通りこの世界の現在を司る女神だ。だから現在、この世界で起こっている事の全てを把握しているんだろう。だからと言ってほとんど干渉はしないはずだが。」
「俺のしている事は全部筒抜けって事なんですね・・・。ありがとうございます。ミカエル様、頼りにしてます。」
俺はその後魔族領を調べる為、ギルドに向かった。魔族と言う者がフェルミエ王国ではほとんど見掛けないし、見掛けたとしても商人と同行、もしくは旅をしている魔族であって接触した事も皆無であった。ギルドに行けばそれなりの情報もあるだろう。その情報が全て真実であるかは分からないが。そして自分なりに調べ上げある程度の把握は出来た。やはり前世の知識と大きく隔たりがあるようで・・・魔族の王、いわゆる魔王はいるのだが魔力が魔族の中で最強だから魔王っという事でも無いようだ。人間の中での王様が最強である訳では無いのだから当然と言えば当然か。
『魔族は長命ではあるが出生率が低く年々減少傾向にある。』
『魔力が得意な種族だが一概に全ての魔族が得意と言う訳ではない。』
『魔力に長けているゆえ祈祷などが盛んだが医療のレベルが低い。』
『魔族領は山岳地帯にあり霧が深く常に薄暗い。』・・・・・etc
ざっくりと把握出来たので魔王に面会する為の作戦を練る。とは言ってもアポイントメントを取る訳でも無いし、取ろうとしても相手にされないだろう。だから一人で当たって砕けろな作戦と呼べない様な作戦しかないのだが・・・とりあえずはお土産位は持参するつもりだ。
「とりあえずは・・・明日出発するか・・・。」




